<この記事は、平成9年の廃棄物処理法の改正点をとりあげた平成10年(1998年)12月号「そよ風」の内容です。>

−廃棄物処理法の改正−
パンク寸前!産業廃棄物問題の解決に向けて
めざせスリム化!取り戻せ住民の信頼!そして、許すな不法投棄!
H9.6.18公布→H10.12.1本格スタート

さまざまなゴミ(廃棄物)は、大ざっぱにいえば、ふつうゴミ(人びとの日常の生活ゴミや事業所から出る処理の容易なゴミ。「一般廃棄物」といって、その処理は市町村の仕事とされている。通常市町村が自ら処理するが、業者に処理を委任することもある)と、産業ゴミ(事業活動に伴って生ずる汚泥・廃油・金属くず・廃プラスチック・ゴムくずなど処理の厄介なゴミ。「産業廃棄物」といって、その処理の責任はそのゴミを出した事業者にあり、事業者が自ら処理するか、処理業者に委託して行う)とに大別されます。
近年、この「産業廃棄物」の急激な増加がわが国の大きな社会問題になっています。その量は、平成5年度で約4億トンと一般廃棄物の約8倍に達しています。このため、産業廃棄物の最終処分場が足りなくなり、その処理施設の設置においては、環境汚染への不安の中で地域紛争が多発し、他方、罰則をものともしない山中や原野への不法投棄の問題に直面しています。
そこでこのたび、主として、産業廃棄物の処理をめぐるさまざまの問題をふまえて、廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)が改正されました。
第一には、産業廃棄物の量をもっと減らすための対策です。
このため、産業廃棄物を多量に排出する事業者には処理計画において減量・スリム化の視点を徹底指導する(法12条6項、12条の2第7項)、廃棄物のリサイクルを進めるための事業の開始や施設の設置について許認可手続きの規制を緩和する(法9条の8)こととしました。
第二に、これは一般廃棄物・産業廃棄物のいずれにも共通する改善ですが、廃棄物処理施設(最終処分場・焼却施設)の設置手続きや維持管理において、住民からの信頼性や安全性の向上に意を用いることとした改正点が注目されます。
廃棄物処理施設にかかる環境意識の高まりのなかで、今回の改正は、施設の許可申請において、次のような制度の見直しを行いました。
すなわち、
- 施設の設置者に、生活環境影響調査の実施を義務づけたこと(8条3項、15条3項)
- 申請書等は告示・縦覧して公開すること(8条4項、15条4項)
- 知事の許可には周辺地域の生活環境の保全について適正な配慮がなされていることが要件とされること(8条の2、15条の2)
- 関係市町村の利害関係者の意見提出、専門的知識を有する者からの意見聴取が行われること(8条5項、8条の2、15条5項、15条の2)
などです。
また、最終処分場・焼却施設等の廃棄物処理施設では、施設維持管理に関する事項を記録し、これを生活環境の保全上利害関係を有する者の求めに応じ閲覧させることとし、施設の運営についての信頼性が確保され、適切な維持管理が行われるように留意しています。
第三の改正の柱は不法投棄への対策です。
その一つは、いわゆるマニフェストシステムを産業廃棄物の全部におよぼして、不法投棄の防止を徹底することにつとめたことです。
マニフェストシステム(廃棄物管理票制度)とは、排出事業者が廃棄物の処理の委託の際に処理業者に管理票(マニフェスト)を交付し、処理終了後に処理業者がその旨を帳票に記入して排出事業者に送付することにより、最終処分までの廃棄物の流れを管理する仕組みです。
このシステムは、不法投棄などの不適正処理を防止するため、平成3年の法改正(「そよ風」59号参照)で取り入れられ、人の健康や生活環境への影響が大きい特別管理産業廃棄物(腐蝕性のある酸・アルカリ、感染性・有害物質など)の処理を委託する場合についてのみ使用が義務づけられていました。しかし、特別管理産業廃棄物以外の産業廃棄物について不法投棄があとを絶たず、排出事業者の責任意識の徹底をはかり、適正な処理を確保するために、今回の改正において管理票(マニフェスト)の適用範囲をすべての産業廃棄物に拡大しました(12条の3)。
これとともに、マニフェスト情報の電子情報化を進めることとし、排出事業者は情報処理センターにアクセスしてリアルタイムで収集運搬業者の運搬終了情報や処分業者の処分終了情報を把握できる方向を目指しています(12条の5、13条の2)。
もう一つは、産業廃棄物の不法投棄に対する罰則の大幅な強化です。従来、不法投棄に対する罰則は、6日以下の懲役または50万円以下の罰金で、罰条にくらべると不法投棄にともなう不当な利得が大きく、罰則の抑止効果が疑問視されていました。このため、罰則を3年(平成12年10月より、5年)以下の懲役または1000万円(法人には1億円まで加重できる)以下の罰金にするなど、反社会的行為に対する制裁が大幅に引上げられました(第5章関係、平成9年12月より施行中)。


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