理容師・美容師免許

知事認可から国家資格へ
高卒・養成学校2年が原則に

理容師・美容師法の改正 (H10.4.1施行)

 仕事にまつわる資格は多種多様。
この中でも今回は、日頃私たちがよくお世話になり身近なものでありながら、その実情はあまり知られていない「理容師」「美容師」の制度について取り上げてみましょう。
 この4月1日より、この理容師・美容師さんの資格制度が大きく変わりました。

理容師・美容師は国家資格に


 理容師・美容師の仕事には、免許を受けた者でなければ携わることができません。
 これまで、理容師・美容師試験は各都道府県知事が行い、合格者は、やはり各都道府県知事から免許を受けていました。
 この4月1日より、制度が一新し、この資格試験も、合格者への免許証の交付も、厚生大臣が行うことになり、国家資格と改められました。理容師・美容師の名簿は、厚生省に備えつけられることとなります。
 これにともない、受験資格やその制度も大きく変わりました。

高卒+養成学校2年が受験資格に


 従来、理容師や美容師をめざす者は、各種の理容師・美容師養成施設(理容美容専門学校・専修学校・聾学校の美容科・職業訓練校など。厚生大臣の指定制)において、昼間課程で1年、夜間課程なら1年4ヶ月、通信課程なら2年間の学科及び実習を学んだ後、理容師・美容師試験の学科試験をまず受けることになっていました。受験のための学歴資格は中学校卒業以上です。そしてこの学科試験に合格したら、今度は実際の理容室・美容室の現場で1年以上の研修期間(実地習練)を経験した上で、さらに実地試験(=実技)を受け、これに合格して初めて免許が取れたのです。
 今回の改正で、まず、学歴は基本的に高校卒業以上が要求されることとなりました。しかも養成施設で勉強する期間も、昼間・夜間課程で2年、通信課程では3年と、それぞれ延長されました。
 教科課目や内容も見直され、これまで短期間に1200時間の必修課目が盛り込まれていたものを整理し、必修課目1400時間と選択課目600時間の合計2000時間を2年で勉強することとなりました(下表参照)。このほか、養成施設の設備や人員の基準もより充実したものとする措置がとられています。

理容師養成施設での教科課目と標準授業時間数
(昼間及び夜間過程)
<従来の基準><現在の標準時間数>
衛生法規      40時間以上
生理解剖学     80時間以上
消毒法   理論  35時間以上
      実習  15時間以上
伝染病学      50時間以上
(細菌学を含む)
公衆衛生学     80時間以上
皮膚科学      90時間以上
物理及び化学   120時間以上
(香粧品化学・理容に関して)
社会        40時間以上
理容理論及び実習 650時間以上



関係法規・制度     30時間
衛生管理        90時間
理容保健       120時間
理容の物理・化学    90時間
理容文化論       90時間
理容技術理論     120時間
理容運営管理      60時間
理容実習       800時間
小  計      1400時間
選 択 必 修 課 目 600時間

 この改正によって、よりレベルの高い技術を身につけると同時に、ゆとりをもったカリキュラムとすることで、エステティックやコンピュータといった時代にあった知識を学んだり、より専門的な知識を会得する機会を与えようというものです。
 この養成施設さえ卒業すれば、すぐに理容師・美容師試験(筆記と実技)を受けることができます。現場での1年の研修期間は廃止されました。

新試験のスタートは平成12年4月より


 実際に新制度による試験が行われるのは、新しいカリキュラムとなった養成施設から最初の卒業生が出る、2年後の平成12年4月1日より実施されることとなります。
 また、国家資格となり、試験も免許の交付も厚生大臣が行うとはいうものの、実際の試験は従来どおり、厚生大臣が指定する指定試験機関((財)理容師美容師試験研修センター)が行います。また実際の登録事務も、厚生大臣が指定する指定登録機関(同じく、(財)理容師美容師試験研修センター)が行うこととなります。

当分の間中卒者にも受験資格を


 今回の改正は技術が高度化したことに対応するためとはいうものの、やはり現実には、中学卒業や高校中退後、理容師・美容師をめざす人たちを閉め出すことになってしまいます。
 そこでこういった人々にも門戸を確保するために、「当分の間」、中学卒業者でも理容師・美容師試験を受験できることとしました。ただし中卒者は、各養成施設において、厚生大臣の定める特別な講習課程をプラスして学ぶこととなります。

精神病・てんかんへの免許制限を緩和


 なお、従来、「精神病又はてんかんにかかっている者には、(理容師・美容師免許は)与えない」と定められていましたが、この規定が緩和され、「与えないことがある」との相対的な制限に改められました。

*  *  *

 ちなみに、理容師・美容師には専門の知識や技能が必要であると同時に、職業にみあった衛生上のきびしい規制もあります。
 タオルなどは客一人ごとにとりかえ、はさみやくし・かみそりといった器具も客一人ごとに消毒することが義務づけられているほか、理容室・美容室を開設するにあたっては各都道府県知事(市長・区長も含む)に届け出なければなりません。そして保健所が事前に、構造・設備面で一定の基準を満たしていることを検査した上ではじめてオープンできるのです。
 このように、理容師さん、美容師さんの資格が高度なものとなり、こんなに厳格な規制の下におかれているとは……どんな仕事でも、仕事ってキビシイですね。ああ実感!

〔豆知識〕
☆理容師と美容師の違いは?




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