−相続税の基礎知識−

(1)相続税の対象となるのは?

 相続した財産(現金・不動産・預貯金・有価証券など)は、そのすべてが課税対象となるわけではありません。
 遺産総額の中から、債務と葬儀費用が差し引かれ、さらにこれから非課税財産を除いたものが税務上の相続財産です。
 非課税財産とは、たとえば
(1)墓・仏壇・祭具等費用
(2)国・地方公共団体・特定の公益法人等への寄付
(3)生命保険金のうち、500万円×法定相続人数
(4)死亡退職金(死亡後3年以内に支払われた退職金)のうち、500万円×法定相続人数
がこれに当たります。

法定相続人とその相続分
相続人の組合せ配偶者その他の者
配偶者と子
配偶者と両親
配偶者と兄弟姉妹
配偶者のみ
2分の1
3分の2
4分の3
全 部
2分の1
3分の1
4分の1
――

(2)課税最低額は?

 それでは、どんな場合に相続税がかかるのでしょうか。
 亡くなった人の課税遺産額が「基礎控除」以下なら相続税はかからないのです。基礎控除額の計算は次のとおりです。
 定額控除の5000万円に1000万円×法定相続人数を加えたものが、基礎控除額となります。たとえば、妻と子2人が相続人の場合は、5000万円+1000万円×3人=8000万円までは、無条件に無税で申告の必要もありません。

(3)相続税の仕組み

 相続税の計算の仕組みは概ね下図のとおりです。
 要するに、法定相続人が法定相続割合のとおりに仮に相続したものとして、相続税の総額をまず算出します。そしてその総額を実際に取得した財産の割合に応じて、各人に按分するのです。

相続税の税率とその計算
各法定相続分の金額税率とその計算
800万円以下の金額
800万円〜1600万円
1600万円〜3000万円
3000万円〜5000万円
5000万円〜1億円
1億円〜2億円
2億円〜4億円
4億円〜20億円
20億円を超える金額
10%
15%−40万円
20%−120万円
25%−270万円
30%−520万円
40%−1520万円
50%−3520万円
60%−7520万円
70%−2億7520万円

(4)税額控除

 各人への課税に際しては、さらに各種の税額控除を受けることができます。
 まず、配偶者の取得分については、「配偶者の税額軽減制度」といって、大幅に税額が軽減されることになっています。
 すなわち、配偶者が取得した遺産が、法定相続分または1億6000万円のいずれか多いほうを限度に配偶者には相続税がかかりません。
 これは、配偶者の老後の生活保障、遺産形成に当たっての貢献などを配慮したものです。
 このほか、未成年者控除(20歳に達するまでの年数各1年につき6万円)、障害者控除(70歳に達するまでの年数各1年につき6万円)、贈与税額控除、相次相続控除、在外財産控除などの税額控除があります。

(5)相続税額の二割加算

 また、逆に、納める税金が増える人もあります。
 配偶者と1親等の血族(親または子)以外の人が相続財産を取得したときは、通常の2割加算をすることになっています。
 たとえば、孫・兄弟姉妹・まったくの第3者などがこれに当たります。
これは、一世代飛び越えて孫に遺贈した場合に相続税を1回免れることができたり、血の繋がりの薄い人が偶然に財産をもらうこともあるからです。

(6)小規模宅地の評価の特例

 土地は、路線価や固定資産税評価額の一定倍率により評価されますが、近年、地価が下落したとはいえ、相続財産の中に占める土地の割合はまだまだ大きいものがあります。
 いつでも換金できる遊休土地ならともかく、自宅の敷地や事業用の土地については、そのまま評価されて相続税の対象になると、時には、住む家や事業用の土地を失うことで遺族の生活や事業承継に支障をきたすことにもなります。
 そこで、自宅の敷地を配偶者が取得したり、事業用の土地を引き続き事業に使用した場合には合計200平方メートルまでは評価を80%減額するなど、一定の条件に該当すれば50〜80%の範囲で土地の評価を減額できることになっています。

(7)申告と納付

 申告と納付は10ヶ月以内です。
 また、預貯金が少なく現金で納付することが困難な場合には、一定の条件を満たせば相続税の分割払いができます。「延納制度」といいます。
 あるいは延納制度を利用しても納付が難しい場合には、一定の条件のもとに相続財産を現物で納付することができます。これを「物納制度」といいます。
 いずれの場合も、認められる条件や対象となる財産など種々のケースがありますので専門家とよく相談する必要があります。

(公認会計士 鳩泰一)




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