外国人との結婚・離婚と在留資格

1 日本社会の国際化

 日本が国際化社会といわれるようになって、すでに久しい。
 現在日本国内に在留する外国人の数は、150万人を超え、日本の人口の1パーセント以上に及んでいる。
 さらに、彼らの母国は約160ヶ国にわたり、世界中から集まってきているといっても過言ではない。
 このように、多数かつ多国籍の外国人とともに、同僚として働き、隣人として生活するという経験を多くの国民がもつという事態は、日本の歴史上初めてのことでもあろう。

2 外国人との結婚

 このように外国人との接触が増えると、国際結婚も当然増えてくる。恋は、国籍など問わないから……
 しかし、外国人と結婚し、日本で在留しようとすると、日本人同士の結婚とは違うさまざまな厄介な問題が出てくる。

<不法在留者との結婚→特別在留許可の申立>

 外国人が日本で住むには、国から一定の在留資格の認定を受けなければならない。
 日本政府が認める在留資格は全部で28種類あるが、単純な労働をするための在留資格は認められていない。
 しかしながら、日本と他の国の経済格差から、アジアをはじめとする多くの国々から、出稼ぎに来て、在留資格をもたないまま働いている不法滞在者が数多くいる。
 その総数は約30万人といわれている。彼らは、不法滞在がばれると、強制的に日本から退去され、最低1年は日本に入国できない。
 彼らが結婚して、その届けを出すと、不法滞在が発覚し、強制執行の対象となる。
 そのため、かっては届けが出せず、子供ができても出生届が出せないままであったり、結婚した夫婦が、離ればなれで暮らすという悲惨な状況があった。
 しかし、ここ数年の動きのなかで、入国管理局の対応は柔軟になり、不法滞在者であっても、日本人または永住権をもつ外国人と結婚した人に対しては、本人たちが日本での在留を希望するときは、その必要性等を審査の上、違反調査手続きの機会を利用して、法務大臣の裁量によって特別に日本人等の配偶者としての在留資格を許可するという取扱いをすることが一般的となっている。
 10年近く前は、この許可を取ることは非常に難しく、一か八かの決死の思いで申立てをしたものだが、最近はよほどの問題がない限り許可されている。しかも、入管でこの申立てのための一定の書式すら用意されている。また、最終許可が出るまでのあいだ、法の原則によれば、不法滞在者の調査は原則的に身柄を収容して行うものとなっており、例外的に保釈と同様の仮放免が認められ、この際の保証金が最高300万円であるが、近年は、この仮放免が非常に低額(5万円、10万円という例も聞く)で簡単に出されている。
 また、かっては特別在留許可の付与と引き替えであるかのように、全件入管法違反で起訴され、刑事裁判を受けていたが、これも最近は起訴されなかったり、罰金ですむものも増えつつある。

<別居中、離婚後の在留>

 結婚がいつも幸せに推移するとは限らない。不幸にして、別居離婚にいたることも多々ある。
 かっては、日本人等と結婚した外国人が離婚すると、日本人等の配偶者としての在留資格がなくなった。結婚生活が多年にわたり、日本に生活基盤がある場合でも、子供を日本で育てていても、日本に在留することができず、すべてを捨てて帰らなければならなかった。
 近年、ようやく一部改善の動きがあり、日本人である子供を育てている者については、定住者としての在留資格を認めるようになってきた。
 また、離婚にいたるまでに、夫婦の別居という事態にあることもある。中には、夫が愛人をつくり、裁判では有責配偶者として離婚請求が排斥される場合でも、在留期間の更新手続きに協力せず、事実上外国人妻を放り出してしまうという暴挙も見られた。入管は、いまも、別居して配偶者としての活動をしていない者には配偶者の在留資格を認めないという姿勢をかたくなに崩さないが、例外的に、離婚に関する調停・裁判等の係争状態が継続しているときは、短期滞在の更新等により、適法な在留を認める動きに変わってきているようである。

 *  *  *

 このほか、子供の国籍に関する新判例等の問題があるが、またの機会に譲ることとしたい。
 以上に述べた入管の対応の変化は、多くの人たちの絶え間のない戦いによって、勝ち取ってきたものであることを認識し、今後引き続き不当な処遇に対しては、その不当性を問題にしていくことを大切にしていきたい。

(弁護士 石田法子)




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