暴力団をカサにきたおどしにはもう負けません!

暴力団対策法の改正強化

平成9年10月1日より施行

市民生活への不当な介入 暴力団対策法で取締り


 平成4年3月、暴力団対策法はスタートしました。
 従来、暴力団が犯す犯罪といえば、刑法や覚せい剤取締法・銃砲刀剣類所持等取締法等々、さまざまな法律で取り締まられ、罰金や禁錮刑の対象となっています。しかし、突然市民生活の中に入り込んできて、刑法にふれるような暴力ではないものの、その乱暴な、あるいは威嚇的な言動で脅しをかけて、因縁をつけて金品を要求し、または用心棒料などを取立てたり、示談交渉に介入したり、地上げや債権取立を行ったり……こうしたいわゆる「民事介入暴力」といわれるものは、従来の法律だけでは十分に取り締まることができず、警察を呼んでも「民事不介入」との原則で、何ら解決しない実態がありました。
 「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」は、これらの民事介入暴力を取り締まるために生まれた法律です。

暴力的要求行為は即、中止命令!


 この法律では、暴力団や暴力団の連合体を指定し、これらの指定暴力団員に対して、次のような主な措置がとられています。
  1.  ゆすりや地上げ・示談への介入などの暴力的要求行為を禁止し、もしこれが行われれば直ちに中止命令が出され、従わなければ1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される。
  2.  指定暴力団同士の対立抗争が生じ、組事務所がそれに利用されることで付近住民に危険が及ぶ恐れがあれば、組事務所を使用禁止にできる(最大6ヶ月)。
  3.  指定暴力団からの脱退を妨害したり、加入を勧誘・強要することは禁止される。さらに指詰めの強要・補助等も禁止、少年への入れ墨も禁止する。
  4.  各都道府県に暴力追放運動推進センターをおき、全国的には(財)全国防犯協会連合会が暴力団追放の相談・支援・広報活動を行う。
(くわしくは「そよ風57号68号」参照)
 平成9年7月末現在、23団体が指定暴力団に指定され、この指定暴力団に所属する組員は約4万500人にのぼり、全国の暴力団組員の約88%にあたるとみられています。また、法施行以来、平成8年末までに出された命令は4840件にのぼっています。

債権取立を全面禁止  親分にも再発防止命令


 今回の改正は、これまでの暴力団対策をさらに一層推し進めるためにとられたものです。
 まず、指定暴力団員に対して禁止していた暴力的要求行為は、従来、下表の14の項目でしたが、これに新たに、6号の2として1つ付け加えられました(9条1〜14号)。債権の取立への介入について、従来は、利息制限法を超えた高利の債権取立のみが規制の対象でしたが(法9条6号)、これに加えて、利息の有無・内容にかかわらず、人から報酬を受けて、乱暴・粗野な言動や迷惑な方法で債権を取り立てること自体が禁止されました(9条6号の2)。

中止命令の対象となる(準)暴力的要求行為の一覧 
(法9条より)
 1号 人の弱みにつけこみ口止め料を要求
 2号 不当な寄付金・賛助金を要求〔584件〕
 3号 下請け等への参入をむりやり要求〔60件〕
 4号 縄張内の営業者に容認料(みかじめ料)を要求〔379件〕
 5号 縄張内で用心棒料等を要求〔886件〕
 6号 利息制限法を超えた高利の債権を取立〔44件〕
 6号の2(新設) 暴力的な不当な方法で債権を取立
 7号 借金の踏み倒し等を強要〔471件〕
 8号 金銭の貸付けをむりやり要求〔70件〕
 9号 証券会社に損失補填を要求
 10号 保有する株式の買取りを強要
 11号 土地・建物の地上げ行為
 12号 建物等を占拠し競売手続き等を妨害
 13号 金品をもらって示談交渉に介入
 14号 因縁をつけてのゆすり・たかり行為〔216件〕
 ※〔 〕内は法施行〜平成8年末に出された中止命令の件数
  記入していないものについては合計58件の中止命令がある。

 さらに、こうした暴力的要求行為を繰り返しそうな場合、再発防止命令を出すことができますが(11条2項)、個々の組員を規制しても、入れかわり立ちかわり同様の行為を繰り返すため、今回の改正では、指定暴力団の代表者や上位の組員に対して、直接に再発防止命令を出すことができるようにしました(12条の2)。この命令は、1年を超えない範囲内で期間を定めて必要な措置を命じることができ、これに違反した者には1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます(47条1号の2)。

指定組員以外が行う 準暴力的要求行為も禁止


 また、指定暴力団員以外が、暴力的要求行為と同じことを行った場合にも、準暴力的要求行為として取締りの対象としました(12条の3〜6)。
 対象となるのは、これまで指定暴力団員と一定の関係にある者が、その組の威力を示して不当な要求行為を行った場合です。たとえば、これまでに、組員に暴力的要求行為を依頼したり、あるいはその現場に立ち会って助けたりして、再発防止命令を受けて3年以内の者や、指定暴力団員から金品をもらってこうした行為をする者などがこれにあたります(12条の4)。このほか、組の威力を示すことを常習としている者で、過去に共犯として加担し刑に服して(執行猶予も含む)5年以内の者や、指定暴力団員の使用人である者も含まれます(12条の5)。
 こうした準暴力的要求行為に対しても、ただちに中止命令が出され、繰り返す恐れがあるときは1年の範囲内で再発防止命令を出すことができ(12条の6)、したがわなければ1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます(47条1号の4)。

組の内部抗争時にも組事務所の使用禁止


 また、これまでは指定暴力団同士の抗争の際に、組事務所が使われたときだけ、その使用禁止措置がとれましたが、今改正で、組同士の抗争が行われたとき(組員の自宅襲撃も含む)、さらに組内部での抗争の際にも、組事務所の使用禁止措置がとられることとなりました(最大6ヶ月の禁止が可能)。
 当初、この改正法は昨年11月より施行予定でしたが、神戸市内のホテルで、内部抗争による襲撃に巻き込まれた一般市民が射殺される事件が発生し、予定を1ヶ月早め、平成9年10月1日施行となったものです。
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「暴力団を恐れない」「暴力団を利用しない」「暴力団に金を出さない」──暴力団の追放には、市民や事業者の一体となった断固とした取組が必要です。




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