
平成9年9月1日より
窓口での自己負担大幅アップ!アップ!
サラリーマン・老人は2〜3倍に
健康保険法等の改正――急がれる保険医療制度の抜本的改革

高齢化の進展・医療の高度化に伴って、医療費は毎年1兆円のペースで増加しており、医療保険財政は破綻寸前の状況にあります。今回の改正は、とりあえずこの先2年だけを乗り切るつなぎの政策として患者への負担増が求められたもので、この2年の間に、緊急の課題となっている保険医療の抜本的な改革案をとりまとめ早期に実施することが予定されています。
この改正法は、健康保険法・船員保険法・国民健康保険法・老人保健法の一部を改正するもので、平成9年9月1日から施行されます。
保険財政の危機を、とりあえず、患者の窓口での負担増でしのごうというもので、とくに、サラリーマン本人と70歳以上の老人にとっては窓口での負担が現行の2〜3倍になるなど、非常にきびしいものとなっています。
サラリーマン | (1)保険料率の引上げ |
(2)本人一部負担金2割に |
(3)外来薬剤費負担の新設 |
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サラリーマンについては、まず、政府管掌健康保険の保険料率(労使折半)が8.2%から8.5%に引き上げられます(健保法71条ノ4第1項)。
さらに、通院や入院時の一部負担金(患者が窓口で支払うお金)は、現在、健保加入者本人(民間サラリーマン・公務員等)については一割負担となっていますが、これが一挙に、2倍の2割負担となります(健保法平成6年附則5条の廃止)。
これとは別に、外来(通院)の患者については、薬剤費の負担をさらに加算して徴収することとなりました(健保法43条ノ8)。その内訳は、次のとおり、種類や数や日数によって細かく分けられています。
○内服薬(飲み薬)
日数に応じて計算される。
1日につき、
2・3種類…30円
4・5種類…60円
6種類以上…100円
○外用薬(塗り薬・貼り薬・うがい薬など)
日数に関係なく、
1種類なら…50円
2種類なら…100円
3種類以上…150円
○頓服薬(解熱剤・痛み止めなど一時的不定期に服用するもの)
日数に関係なく、
1種類ごとに10円
(ただし、飲み方が同じなどでひとつにまとめて出される薬については、1日の薬剤費が205円未満のものなら、たとえ数種類がまじっていても1種類としてみなされる)
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サラリーマンの家族や自営業者など国民健康保険加入者については、現在、一部負担金が3割ですが、今改正で、この3割に加え、前述の外来(通院)の際の薬剤費の負担が加算されることになります(健保法59条ノ2、国保法42条)。
70歳以上の老人 | (1)一部負担金の増額 |
(2)外来薬剤費負担の新設 |
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70歳以上の老人については、外来(通院)の際の一部負担金は、現在、1医療機関ごとに毎月定額の1020円を負担することになっています。この定額制が廃止され、通院1回につき500円、ただし5回目以降は無料(つまり、1医療機関ごとに月額最高2000円の負担)と改正されました(老保法28条1項1号)。
さらに、サラリーマンなどと同じく、外来(通院)の際には、薬剤費の負担がこのうえに加算されることになります(老保法28条2項)。
一方、入院の場合の一部負担金についても、現在の1日につき710円が、本年(平成9年)度は1日1000円、来年(平成10年)度は1100円、さ来年(平成11年)度が1200円と段階的に引き上げることが決められました(老保法28条1項2号、附則8条2項)。
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なお、今回の改正法では、6歳未満の乳幼児と老齢福祉年金を受ける低所得の高齢者については、薬剤費の負担上乗せは免除されています。
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きびしい負担増に加え、複雑・煩雑でわかりにくい薬剤費負担の新設で、医療機関窓口での混乱は避けられないものとなりましょう。何よりも、保険医療全体についての抜本的改革の実現が早急焦眉の課題となっています。


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