<労働者派遣業法は、平成11年12月1日に大幅に改正され、職種制限が原則として撤廃されました。くわしくは、次ページをご覧ください。
 なお、この記事は、平成8年12月16日施行の改正について「そよ風」87号で解説した内容です。現在では大きく変わったわけですが、法改正の変遷としてご参照ください。>

〜人材派遣に新たな流れ〜
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業種問わずOK

人材派遣業法等の改正――H8.12.16施行

人材派遣法――10年目!初の大幅見直し


 派遣労働者の数は、現在、全労働人口の1%にも満たないわずかなものです。しかし、派遣労働という形態は、もはや社会での確たる地位や役割を果たしているといえましょう。「人材派遣業法」(正式には、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律)がスタートしたのが1986(昭61)年7月1日でしたが(くわしくはそよ風23号)、それから10年以上たって、今回、同法制定以来はじめての大改正が行われました。なお、この改正法は平成8年12月16日より施行されています。

 技術を生かして好きなときに好きなだけ働く──派遣労働は、一見華やかに見えます。しかしその実態は、労働時間などが当初の契約内容と違う、契約業務以外のあらゆる雑用を強いられる、簡単に途中解雇される、お手軽なセクハラの対象とまでされる等々、不安定な雇用である弊害が顕著に現れているのです。しかも、同じ職場で働く「同僚」との間にまで、雇用形態の違いからくるヒズミが生じやすく、ヤッカミやイジメの対象ともなりかねない有り様です。こうした問題に派遣先の企業は十分な対応をしてくれず、一方、派遣元の人材派遣会社の方もお得意様である派遣先に遠慮して、多くは派遣労働者の側にがまんをさせるのが現状です。そのため、労働者の側からは、派遣労働者を保護するための施策が要望されていました。
 これに対して産業界からは、もっと広く人材派遣を活用したいので規制緩和をの声が高まっていました。現状のように、特別な技能を必要とする等の理由で指定業務とされた分野だけで人材派遣を認めるのではなく、例外業務だけを除いて原則としてすべて自由に人材派遣を認めてはどうかとの考え方まで出されていました。
 こうした流れを受けて、今回の法改正では、対象業務の大幅緩和と就業条件の確保のための方策が盛り込まれています。

育児・介護休暇の代替は職種問わず自由に派遣


 まず、人材派遣の対象業務が、別表のとおり、従来の16業種に加え、新たに11業種が認められることとなりました(施行令2条)。

人材派遣業の適用業種(施行令2条より)
従来からの適用業種新たに追加された業種
1 ソフトウェアの開発・保守
1-2 機械・設備の設計
1-3 放送機器等の操作
1-4 放送番組等の演出
2 事務用機器の操作
3 通訳・翻訳・速記
4 法人代表者等の秘書
5 文書等ファイリング・分類
6 市場等の調査と整理・分析
7 財務処理
8 外国・国内取引文書の作成
9 デモンストレーション業務
10 主催旅行に係る添乗業務
11 建築物の清掃
12 建築設備の運転・整備等
13 受付・案内、駐車場管理等
10 手配旅行に係る添乗業務(10号関係)
14 科学研究・開発
15 企業の事業実施体制等に関する調査・企画・立案
16 図書の制作・編集
17 広告デザイン業務
18 インテリアコーディネータ
19 アナウンサーの業務
20 OAインストラクター
21 電話勧誘の営業
22 いわゆるセールスエンジニアの営業業務
23 放送番組等に係る大道具・小道具の業務

 ところで、すでに高年齢者については業務の指定を取り払う措置がとられています。60歳以上の労働者については、港湾運送業務・建設業務・警備業務のほか製造業務をのぞき、従来から、あらゆる業務で人材派遣が認められてきました(「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」11条の3・11条の4。1994(H6)年11月1日から施行)。
 今回の改正では、これに加え、育児休業・介護休業している労働者の代替要員として雇うのなら、港湾運送業務・建設業務・警備業務の3つの例外をのぞき、あらゆる業務で派遣労働者を雇うことができることとなりました〔これについては「育児休業等に関する法律」(正式には、育児休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)の改正による、同法40条の2・40条の3〕。
 育児休業制度は、1992(H4)年4月より導入されていますが(くわしくはそよ風58号)、1995(H7)年4月からは猶予対象であった従業員30人以下の事業所においても施行されています。そのため、今回の措置は、現実に労働者が育児休暇をとる上で大いに役立つものと考えられています〔なお介護休業については、現在、法律上は施行されておらず、平成11年4月1日からの導入が予定されている(同法附則1条、この施行日にあわせそよ風でも取り上げる予定)〕。
 育児・介護休暇の代替要員として派遣労働者を雇う場合には、その派遣契約に際し、誰の代替要員であるかをはっきり明記し、派遣期間も当該休暇中の者が休業している期間に限るものとされます。また、派遣期間は1年を超えることはできません。

派遣先企業の責任も法律に明記


 一方、就業条件を確保するために、派遣先の義務も明記されました。

 派遣先は、派遣労働者を、契約内容と異なる業務に従事させてはならず(4条4項)、著しく不適当な場合には労働大臣が派遣の停止を命ずることもできます(49条2項)。また、正規の許可や届出を行っていないいわゆるモグリの派遣業者から人材派遣を受けてはならず(24条の2)、こうした不法な行為をする場合には、指導・助言を行って、なお改善されなければ勧告し、従わない場合には、当該派遣先を公表する措置がとられることとなりました(49条の2)。
 さらに、契約期間の途中で、派遣先の都合で一方的に契約を解除されることに対処するため、派遣契約に際しては、派遣元・派遣先の間で、もし契約解除をするなら、当該労働者の次の勤務先を関係会社などからきちんとみつける等の雇用安定措置をとることを定めなければならないとしました(26条1項)。
 また、派遣労働者からの苦情にきちんと対応するため、派遣契約の中に苦情の処理に関する事項を盛り込むこととし、派遣元の管理台帳及び派遣先の管理台帳ともに、苦情のあった日にち・内容等をきちんと記入することが義務づけられました(26条1項、37条1項、42条1項)。さらに労働大臣は、派遣元及び派遣先がとるべき措置について具体的な「指針」としてまとめて公表することとし(47条の2)、すでに、昨年12月13日付でこの指針が出されています。
*  *  *

 このほか、罰金額がそれぞれ引き上げられています(58〜61条)。
 また、規制緩和措置として、一般人材派遣事業(登録制。希望者を登録しておき注文があったときにその中から適任者を雇用して派遣する。労働大臣の許可制)の許可について、1回目の有効期間は従来どおり3年ですが、更新を受けた場合は有効期間を5年に延長する等の措置がとられました(10条4項)。  




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