最近の地価下落を受けて
地代・家賃Q&A
――神戸の例を中心に(平成9年6月)――
ここ数年、地価が下落し続けるとともに、最近では家賃も下落傾向にあります。従来、賃料は物価上昇につれて上昇し続けると考えられてきましたが、どうやら認識を改める必要があるようです。 不動産鑑定士 Y
家賃と地代は現在どうなっているのか──Q&A方式で以下述べてみましょう。
なお、この文章は神戸市を念頭において記述しております。地代または家賃に関しては地域的特色が強いのですが、一方、基本的な考え方は共通しているものと思われますので参考にして下さい。
Q1 家賃は下落傾向にありますが、地代の減額請求は認められますか?
A1 戦前または戦後まもなく借地契約がなされた通常の借地の地代の減額請求はまず認められないと思います。現在、地代は横ばいないし上昇傾向にあります。現在の地代は土地の経済的価値に即応する水準より低いというのが基本的な認識です。
Q2 神戸市内の地代はどの程度の水準ですか?また、現在の地代が周辺の地代と比較して安すぎると思うのですが、裁判所に訴えた場合、適正な水準に回復するでしょうか?
A2 神戸市内の住宅地の地代水準は、月額坪単価500円ないし1000円が多いようです。公租公課(固定資産税・都市計画税)に対する地代の倍率でいえば、概ね3倍ないし4倍程度ではないでしょうか(なお、神戸市以外でも坪単価100万円〜130万円程度の住宅地であれば、月額坪単価については同程度の地代水準にあるものと思われますが、公租公課に対する地代の倍率については、各都市の固定資産税に対する課税方針が異なるため一概には言及できないのが現状です)。
以上はだいたいの目安ですが、そのゾーン外にあるからといって、ただちに大幅な増額または減額請求が認められるわけではありません。地代の鑑定評価においてウェイトが大きいのは、貸主・借主双方の合意で決まった直近の地代です。特段の事情がなければ、直近の合意地代をベースに上昇率ないし下落率を判断することが基本になります。
Q3 地代と地価は連動するのですか?
A3 地価が高いほど地代は高いのが基本ですが、必ずしも地価に連動しているわけではありません。たとえば、商店街に面する1000坪程度の大きな画地の場合、商店街に面する土地の価値は背後の住宅地の価値よりかなり大きいのですが、地代の水準に関してはさほど大きな差ではないのが現状です。鑑定評価は現状を基本的には尊重することになります。
Q4 借家人の減額請求は裁判所で認められますか?
A4 家賃の趨勢が下落している現状は鑑定評価にも反映されますが、借家人がより条件のよいところへ引越しすれば問題は解消されますので、家賃減額請求の訴えは今のところあまり多くありません。
Q5 昭和初期に建てられた建物を貸しています。近所では同程度の床面積の家賃は数倍もしています。裁判に訴えれば家賃は何倍かになるでしょうか?
A5 家賃の鑑定評価をする場合、周辺の家賃相場の調査もしますが、古い建物の場合は、古い建物の賃貸事例と比較するのが基本です。しかしながら、古い建物を賃貸している事例はほとんどないので比較は容易ではありません。
実際の鑑定評価においては、家主・借家人双方で合意された直近の家賃に一定の率を乗じる方法にウェイトをおいて判断します。借家の場合、修繕費の負担・敷金等の一時金支払い・借家期間・特約等、個別的な要因が強いのですが、直近の合意家賃がそれらの事情を反映していることが多いからです。
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