
法のくすり箱
Q、 当方は、神戸市内に本店をおく株式会社ですが、商法改正に伴う最低資本金制度についてご相談します。
実は、取り紛れて増資手続きがまだできておらず、4月に入ると法務局から会社の解散予告の通知が届いて会社は強制的に解散させられるのではないかと心配しています。今からでも何かいい方法はないでしょうか?
A、 まず、経過からお話しましょう。
平成3年の商法改正により、会社の財産的基礎を強化して債権者を保護するために、「最低資本金制度」が取り入れられました(くわしくはそよ風52号)。株式会社については1000万円、有限会社については300万円が設立の最低額となり、従来からある会社については5年間の猶予期間が与えられ、平成8年3月末日までに増資か、または合名会社・合資会社あるいは有限会社に組織変更する手続きをとらねばなりませんでした。
さらに、兵庫県・大阪府に本店をおく会社については、阪神大震災に伴って猶予期間を1年延長する措置がとられましたが、これも平成9年3月31日で終わっています。そのため、法務大臣による解散予告の官報公告がこの4月1日になされ、最低資本金に満たない会社には各登記所から通知がなされます。
この公告から2ヶ月を経過する本年6月2日をもって、最低資本金に満たない会社は解散とみなされます。しかし、この期日までに増資または組織変更の登記をすれば、解散したものとはみなされませんので、まだ若干期間が残されていますから、至急、手続きをとることが必要です。
ちなみに、大阪府・兵庫県を除く全国の都府県では、株式会社の約10%にあたる約11万社、有限会社の約20%にあたる約34万社が、平成8年5月31日の経過ですでに解散とみなされたとのことです。
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さて、平成9年6月2日をもって解散とみなされた会社は、職権で解散登記がなされます。そうなると会社は、商法の規定にしたがって直ちに清算手続きに入ることになります。
清算手続きが開始されると会社は清算の目的の範囲内でしか活動できません。要するに、会社を閉めるための活動のみということで、その主な内容は、これまでの会社の事業を終わらせるための権利義務関係の整理・資産の処分・債権の取立・債務の弁済・残余財産の分配などの活動に限られます。もっとも、事業を終わらせるために必要な範囲では、営業・取引行為を続けることも可能であるとは考えられていますが、少なくともそれまでと同様な営業活動はできません。
清算の目的の範囲外の行為については、清算会社代表者(清算人:原則として従来の会社取締役がなります)として行った行為であっても、清算中の会社には権利が帰属しませんし、義務も同様ですので、後でトラブルが起こらないよう十分注意して下さい。
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こうして解散とみなされた会社でも、その後会社を継続する方法がないわけではありません。会社が解散したものとみなされた日から起算して3年以内に限り、株主総会(有限会社については社員総会)の特別決議により、会社を継続することができます。しかしこの場合でも、この決議だけでなく、実際に増資か組織変更の登記手続きを同時に行わなければならないこととされています。この登記までの間は、会社は、増資または組織変更の目的の範囲内でのみ権利義務を有するだけです。
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このように、解散とみなされても、条件付きながら、会社を継続する方法は残されています。そこで、これまで会社としてせっかく築き上げた取引先や従業員他、各方面との信頼関係やつながりを維持するためには、この唯一残された方法をとるようにされるのが得策ではないでしょうか。

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