貸金事件始末記

一括弁済と分割弁済


 借金で苦しんでいる場合に、破産にまではいかないで、何とか弁済して解決をはかったケースをご紹介しましょう。

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 1つは、一括弁済による解決です。
 Aさんは、50代のサラリーマン。奥さんと2人暮らし。しかし夫婦でクレジットカードを使用してできた借金が約500万円ありました。一方、財産といえるのは、自宅マンション(但し、抵当権付き)のみ。支払いは滞り、クレジット会社より再三請求を受け、困り果てていました。そこで私の法律事務所に相談にみえました。
 まず、私は、各クレジット会社に弁護士介入の通知書を送付しました。この通知書がクレジット会社に着いてからは、本人に対する請求はピタリと止まります。
 次に、右自宅マンションを売却しました。代金から抵当権者に債務の支払いをした後、手元に残ったのは250万円でした。
 そして、私は、上250万円で各クレジット会社に対する借金(500万円)の支払いをするため、各クレジット会社に対し、借金の半分の額で一括して支払うという和解を申し込みました。
 結果は、全社半額で和解することができました。

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 もう1つは、分割弁済による解決です。
 N君は21歳。両親と同居している独身の青年です。神戸の弁護士会から債務整理の件で紹介されて私の事務所にやってきました。話を聞いてみると夜にラウンジでアルバイトに出ており、収入は月額18〜20万円あるとのことでした。債権者7社に対し370万円の負債があり、そのうちの自家用車のローンについては父親が保証人になっていました。毎月の支払額は20万円にもなり、本人の収入のすべてが借金の返済のために使われており、本人の手元には1円も残らない状態でした。さっそく、債権者に通知書を発送し、債権者と分割弁済の交渉を開始しました。内容は、毎月の支払いを本人の希望する10万円以内の約8万4000円におさえ、41〜45回払い。なお、うち6社については残元金のみで利息をカットしてもらい、残りの1社については借入後間もないことから、残元金に年率15%(利息制限法の最低ライン)の利息を付しての支払いとなりました。
 N君と同様に、月収の大半が債務の支払金である方が意外と多くいます。N君の場合は、幸い早期に法律事務所を訪れてよかったのですが、多くの方が、何十年も支払いを続け(まるで借金を返すための人生というような生活を続け)、自由も若さも物質的幸せも、借金のために失われていることがあります。しかも、それで返済できればいいのですが、あげくの果てに支払い不能状態に陥る方がずいぶんたくさんおられるように思われます。もし、愛する兄弟姉妹がそのような状態にあるとしたら、耐えられないことであります。
 さて、N君の場合ですが、私は、まず私がN君の代理人である旨の書類をサラ金業者に通知いたしました(これにより、サラ金業者は、N君本人に請求ができなくなります)。そして、分割弁済で処理することにしました。金融業者とこちらとの分割弁済の条件は、ずいぶん食い違いました(食い違うのが普通であります)。
 弁護士は、このようなとき、条件を提示したまま動きません。すると、たちまち金融業者は、窮地にたちます。なぜなら、弁護士が提示する条件は、安い利息で計算した分割弁済計画ではありますが、利息制限法に合致した条件です。同条件を提示されている以上、金融業者は、本人請求もできなければ、裁判をする意味もなく、いたずらに時間だけを費やすことになるのです。やむなく金融業者は、こちらの条件をほぼ全面的に受け入れることになるのです。
 上のN君の場合も、給料の半分以上は自由に使うことができ、しかも最終的に完済する計画がたちました。現在N君は、自由に、生き生きと生活されています。

(弁護士M)




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