全国15ケ所の国立・私立療養所には現在約5800人が入所しています。平均年齢は70歳をこえ、重症者については後遺障害が残っている場合もあるとはいえ、ハンセン病そのものはほとんど全員完治しているのが実情です。しかし、長年にわたり、差別と偏見のなかで、名を変え、家族・親族と縁をきり、療養所で世間と隔絶した生活を余儀なくされてきました。しかも、半強制的に中絶手術を受けさせられ、頼る子供も奪われたという現実があります。
強制的に連れてきて長年にわたり収容して、今度は法の廃止と同時に強制的に追い出して老後の生活の場を奪う――こんなことは許されません。そこで、療養所はハンセン病療養所として存続させ、引き続き療養を行うこととなります(2条)。また国は社会復帰を支援し(5条)、入所者の親族への経済的援助も今後とも継続されることとなりました(6条)。さらに障害年金1級に相当する給与金も保障されています。あわせて、国民健康保険法・優生保護法・出入国管理法なども是正されました。
差別・偏見がこうした特別な「病気」を生み出し、これら患者の人権を侵害することが二度とあってはなりません。その意味で、今日のエイズ治療においても、ハンセン病から多くを学び、ヒステリックでない適切な対応が緊要といえましょう。
[従来の「らい」という用語に代わって、今回「ハンセン病」という呼び名が正式なものとされました。]


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