乗れない…行けない…
仕方がないともうあきらめない!!

パック旅行―内容の変更に料金払戻し
H8.4.1
旅行業法・標準旅行業約款等の改正☆

 夏休みはもう目の前!今年はどんなご予定ですか?
 旅行好きなあなたに朗報です。旅行業法・標準旅行業約款が改正され、パック旅行などがいっそう安心して申し込めるようになりました。


旅行日程の変更があれば料金の一部が払戻し!


 旅行をめぐってのトラブルで最も多いのが、パック旅行で当初の日程や旅行の予定が急に変更になることです。とくに海外旅行の場合、航空便や宿泊ホテルそして観光日程が変わるのはほとんどやむを得ないこととされ、残念ながらとあきらめていた方が多いのではないでしょうか。
 ところが標準旅行業約款が改正され、主催旅行(旅行業者がお仕着せのコースを発表して参加者を募集するもの、いわゆるパック旅行)については、当初契約した日程や内容が変更されるような、[表1]にまとめた一定のケースでは、旅行業者に責任があるなしにかかわらず、主催会杜が旅行料金の一部を参加者に払い戻すことになりました(約款25条、旅程保証)。

[表1]パック旅行で内容が変更されたときの変更補償金
出発前出発後
旅行開始日または旅行終了日の変更
入場する観光地・施設(レストランを含む)・目的地の変更
運送機関の等級または低額設備への変更
運送機関の種類または会社名の変更
ホテル等の種類または名称の変更
ホテル等客室の種類・設備・景観の変更
上記のうちツァー・タイトルに記載があった事項の変更
1.5%
1%
1%
1%
1%
1%
2.5%
3%
2%
2%
2%
2%
2%
5%
※「出発前」とは、旅行開始日の前日までに通知がされた場合
※変更補償金総額は、1旅行あたり旅行代金の15%が上限

 たとえば、旅行に出発した現地で、行く予定だった博物館が休館で入れず、さらに帰国便の航空会社が急に変更になった場合は、2%プラス2%で、合わせて、旅行代金の4%が旅行後払い戻されるというわけです。しかし同じ帰国便の変更でも、同一の航空会社内での便名や時間の変更は対象外となります。ただ、同一航空会社内での変更であっても、そのために観光が中止になったり(2%)、帰国日が延びた(3%)ときは払戻しの対象となります。1泊や1フライトは1件として計算され、合計払戻額は旅行代金の15%が上限となっています。
 従来、こうした変更には明確な規定がなく、旅行業者の故意・過失が認められないかぎり業者に責任は問えませんでした。しかしたとえばオーバーブック(乗客や宿泊客のキャンセルを見込んで多めに予約をとりすぎたため、乗れない・泊まれない客が出ること)をとってみても、原因はいろいろで、旅行業者の過失を旅行者が証明するのは容易ではありません。しかも航空会社やホテルに旅行者が直接責任を問うのは現実には無理といわざるをえず、結局消費者(旅行者)にとって一方的にきびしい規定となっていました。今回の改正により、旅行業者の責任が明確になったわけです。
 ただし、この旅程保証については、5月10日以降に出発するパック旅行から適用されることになっています。

「同等クラス」はダメ! ホテル名等は列挙せよ


 旅行業者には、旅行者と契約を 結ぶときには日程・観光内容・料金・サービスの内容等々について説明する義務があり(法12条の4)、しかもそれらを書面で交付する義務があります(法12条の5)。この書面に一定の形はなく、パック旅行の場合、現実には、パンフレット・申込書控・最終日程表などの形で交付されています。
 この説明内容と交付書面を一層はっきりさせるため、標準旅行業約款の規定が改正されました。まず、パック旅行に申込み、申込書・申込金を振り込んだ時点で契約は成立となりますが、旅行業者はこの契約成立後すみやかに旅行日程・旅行条件等を書いた契約書面を交付しなければなりません(約款9条)。この段階でまだ確定していない航空便やホテルがあれば、従来の「…と同等クラスのホテル」などといったあいまいな記述は許されず、利用可能性のある航空会社・ホテル等をすべて列挙することとなります。また、いつまでに、確定した内容を記載した書面(確定書面)を交付するかもこの契約書面で定めます。この確定書面の交付前であっても、旅行者からの手配状況についての問合せには、迅速適切に回答することがあわせて義務づけられました(約款10条)。
 ちなみに、パック旅行の広告についても、出発日によって料金が異なるケースでは、最低料金を表示するのなら、同時に最高料金も表示することが新たに定められています(規則28条の2)。


参加者不足による中止はもっと早く通知せよ


 いわゆるツァーの場合は旅行実施の最少催行人員が定められていますが、この人数が集まらず、旅行が中止になることがままあります。今改正により、旅行業者から参加者にこの通知がなされる時期が早められることになりました。
 これまでは、旅行開始日の前日から数えて、国内旅行の場合は7日(日帰り旅行では前日)、海外旅行では20日より前に通知することになっていましたが、これが、国内旅行では13日(日帰り3日)、海外旅行では23日より前となりました。しかも海外旅行の場合、お正月やゴールデンウィーク・夏休みといったピーク時には、さらに早めに、33日より前に通知することが義務づけられました(約款26条)。そんなに簡単に休みをとったり変更することができない私たちにとってありがたい改正です。
 一方旅行者の方でも、いくつものツァーにとりあえずかけもちで予約をしておいて、キャンセル料が必要となる間際に不参加の通知をするというケースがままありました。これは、ツァーを実施するかどうかがなかなか決まらない要因ともなっています。そこで、これを少しでも防ぐために、ピーク時の予約についてキャンセル料の規定が変更されました。[表2]のように、飛行機を利用する海外旅行では、ピーク時に出発する旅行は、旅行開始前日から数えて40日目以降に予約を取消すには、キャンセル料が10%必要となりましたのでご注意下さい。

[表2]パック旅行の主なキャンセル料
国内旅行
旅行開始日の前日から数えて20日〜
(↑日帰り旅行では10日〜)
旅行開始日の前日から数えて7日〜
旅行開始日の前日
旅行開始の当日
旅行開始後または無連絡不参加
20%以内

30%以内
40%以内
50%以内
100%以内
◇ただし、貸切船舶を利用しないもの

海外旅行
旅行開始日の前日から数えて40日〜
(↑ただし、旅行開始日がピーク時のとき)
旅行開始日の前日から数えて30日〜
旅行開始日の前々日〜
旅行開始後または無連絡不参加
10%以内

20%以内
50%以内
100%以内
ピーク時とは12月20日〜1月7日、4月27日〜5月6日、
7月20日〜8月31日出発のツァー
◇ただし、出国または帰国に航空機(貸切以外)を利用するもの

 ちなみに従来から、日程や観光内容に重要な変更があった場合には、キャンセル料なしで予約を取消すことができました。しかしこの「重要」の判断が不明確であったため、これまでトラブルの原因ともなってきました。今回の改正で、先に述べた旅程保証の対象となるような変更([表1]参照)及びその他重要な変更と、一定の基準がもうけられることとなりました(約款15条)。ただし、これまでは、配偶者や一親等の親族(父・母・子・舅・姑)が死亡したときにはキャンセル料なしで予約を取消すことができましたが、この規定がなくなりましたのでご注意下さい。


企画手配旅行にも特別補償を適用


 これまで述べてきたのはいわゆるパック旅行についてですが、これとは別に、旅行者が希望を言って宿やチケットの手配をしてもらうこともあります(手配旅行)。旅行業約款では主催旅行(パック旅行)とは別に、この手配旅行についても定めています。
 この中で、新たに企画手配旅行についての規定がもうけられました(約款6章)。これは、個々の宿や交通機関の手配をしてもらうだけでなく、旅行全般を通じて、ルートとして旅行の企画・手配をしてもらうことをいいます。旅行業者に企画の責任もあるわけですから、それだけ業者の果たすべき役割は大きいことを考慮して、これまではパック旅行にしか適用されなかった「特別補償金」制度が、この企画手配旅行にもあわせて適用されることになりました(約款28条)。
 ただし、補償されるのは死亡や傷害といった人的被害だけで、携帯品の損害についての補償はありません


代金払戻の規定を整備 返金は30日以内


 従来、キャンセルに伴う旅行代金の払戻し等については規定が明確ではありませんでした。
 今改正でこれが整備され、旅行開始前の解除については、キャンセルの翌日から数えて7日以内に料金を払戻し、前述の旅程保証に伴うお金など旅行開始後の払戻金については、旅行終了日の翌日から数えて30日以内に払い戻されることとなりました(約款18条)。
 このほか今回の改正では、渡航手続代行契約・旅行相談契約についても、それぞれ標準旅行業約款が新たに作成されました。
* * *
 今号では、旅行業者と旅行者の間で結ばれる契約──旅行業約款について主に 述べてきました。旅行業法の改正点については、次号で取りあげることにします。


◇◆◇標準旅行業約款とは?◇◆◇
 約款とは、同種の取引で一々個々に異なる契約を作成するのが煩雑なため、一律に適用する契約事項を事業者があらかじめ決めたもの。
 旅行業者が旅行者と結ぶ旅行業約款は、各旅行会社に掲示あるいは備えつけられているので、契約前には必ず確認しよう。なおパンフレットの裏等にもその主要部分は記載されている。
 この旅行業約款は、作成・変更するのに運輸大臣の認可が必要である(法12条の2)。また運輸大臣は、標準旅行業約款を公示して、これと同一の約款を使えば右の認可は必要ないとしている(法12条の3)。このため、現実には、旅行業者の大半はこの標準旅行業約款を採用している。しかもこの標準約款が、認可の際の最低ラインとしても意味づけられる。
 ちなみに今改正で、標準旅行業約款は、(a)主催旅行契約の部(特別補償規程を含む)、(b)手配旅行契約の部、(c)渡航手続代行契約の部、(d)旅行相談の部の4つの部分から構成されることとなった。

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◇◆◇特別補償金制度とは?◇◆◇
 本来旅行業者には、その故意・過失が明確でない限り、損害賠償の責任はない(約款23条、損害発生の翌日から2年以内の請求が必要)。
 しかしパック旅行については、旅行業者は請負契約的な大きな義務を負っていると考えられるため、その法的責任の有無にかかわらず、旅行中に被った損害について一定の補償金・見舞金を支払う制度がある(約款24条)。種類は次の4つ。
(a)死亡補償金   旅行中の事故により180日以内に死亡したとき
 海外旅行──2000万円  国内旅行──1000万円

(b)後遺障害補償金  旅行中の事故により180日以内に後遺障害が生じたとき
(治療中なら181日目に後 遺障害の程度を認定する)

 後遺障害の程度に応じて  死亡補償金の3%〜100%

(c)入院見舞金   旅行中の事故により入院等をしたとき
 入院期間に応じて2万円〜20万円

(d)携帯品損害補償金  1品につき10万円まで  1人につき15万円まで
 (ただし、盗難の場合は対象となるが、置忘れ・紛失は対象外なので要注意)
 なお今回の改正で、オプショナルツァーにおいてもこの特別補償金制度の対象となることが明文化された。 →文中へもどる




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