“マンション法”大改正
1984年1月1日施行

 昭和30年代以降の分譲マンションの著しい普及と大型化によって、従来の「建物の区分所有等に関する法律」では十分に対処できない問題が生じてきました。そこで、区分所有建物の利用及び管理の合理化、登記の簡素化などを目的とする大きな法改正が行われ、昭和59年(1984年)1月1日から施行されることになりました。
 「建物の区分所有等に関する法律」、俗にいう「マンション法」は、一棟の建物を区分して所有する場合における所有関係や共同管理の仕組みを定めた法律で、昭和37年(1962年)に制定されました。しかしその後、大都市を中心に、中高層ビル形式の各種の分譲マンションが急速に普及し、マンションの規模も種類もさまざまに多様化しました。その結果、区分建物の登記や管理、居住者相互間の権利の調整などの面で、必ずしも従来の法律では十分に対処できない多くの不都合を生ずるにいたりました。
 昭和59年(1984年)の改正はこれらの問題に対応したもので、多数の条文の新設を含み、従来法の全体に及ぶ大改正となりました。その主な事項は次のとおりです。

「全員一致」から「多数決」へ
マンションの管理規約の制定と変更

 分譲マンションを買って共同生活をしている人びと(区分所有者)は、必然的に、建物や敷地を共同管理しなければならない立場にあります。このため、改正法では、区分所有者の全員が、当然に、マンションの管理を行うための「団体」を構成するものとし(3条)、この「団体」の「集会」を少なくとも年1回(住人の5分の1以上の要求があればその都度)開催して、マンションの管理に関する重要事項は、すべてこの集会の決議によって定めなければならないものとしました(34条)。
 従来は、マンションの管理規約を定めたり変更したりする場合には、区分所有者全員の書面による合意が必要とされましたが、改正法では、これを、集会で4分の3以上の多数決議をもって行うことに改め、これにより、ごく一部の人の反対のためにマンションの適正な管理が妨げられることのないように配慮しました。ただし、右の4分の3は、集会出席者の4分の3ではなく、欠席者も含めた区分所有者全員の4分の3(さらに床面積も考慮することがある。31・38条)ですから注意してください。
 なお、その他の集会の議事は、原則として出席者の過半数で決められます(39条)。

共同生活のマナーを守る義務
─緊急立入権も承認─

 改正法は、マンションのすべての住民(所有者・賃借人を問わない)に対して、共同生活のマナーを守り、共同の利益を損なわないように求めています。
 共同の利益に反する行為としては、たとえば、(1)共同部分である廊下・階段室などを勝手に倉庫がわりに使用すること、(2)勝手に専有部分の増築工事をしたり、屋上や外周壁に広告看板を取り付けたりすること、(3)他人に迷惑を及ぼす異常な騒音・振動・悪臭などを発散させること、(4)マンション売春・とばくの開帳など良俗違反の営業を行うことなど、種々のケースが考えられます。
 このような行為があった場合、他の住民らは、違反行為を止めるように請求をし、その行為によって被った損害の賠償を求めることができます。しかも、差止請求の相手方が不在で、しかも急を要する場合には、あらかじめの同意または承諾がなくとも、同人専有部分に立入ること(緊急立入権)が認められます。これらの措置は、いずれも、改正法6条の規定に基づき当然にとることができるものです。次に述べる強い措置にまで至らない段階での心得ごととして知っておくことが賢明です。

悪質居住者への強硬措置
「使用禁止」や「追出し」も

 他の区分所有者等からの、再三の申入れや差止請求にもかかわらず、これを無視して近隣に迷惑をかけ、共同の利益に反する行為を繰り返すなど、極端な共同生活不適格者もないではありません。そこでこのような悪質者に対しては、違反の程度に応じ、最終的には「追出し」にまでいたる各種の措置が認められました(訴訟による使用差止・使用停止・競売・追出し、57〜60条)。


マンションの建替え
5分の4の賛成で可能

 これまで、建物が老朽化した場合でも、建替えをするためには、一人でも反対者がいれば不可能でした。しかし、昭和59年(1984年)の法改正により、集会において、5分の4以上という特別多数の決議があったときには、マンションを建て替えることができることになりました(62条)。この決議がされたときは、建替えに参加する者は、参加しない者の有する区分所有権等を強制的に時価で買い取ることができることとされます。ただし、建替えの決議は、建替えを必要とするだけの客観的要件が備わっていなければ無効です。
 また、建物の一部が滅失した場合の復旧についても規定が設けられ(61条)、滅失した共用部分について、集会で復旧の決議(4分の3以上の多数決)をすれば、これに基づいて区分所有者が共同して復旧することができることになりました。ちなみに滅失した自己の専有部分については、区分所有者自身が復旧すべきものであることはもちろんです。
 なお、この改正で、昭和59年(1984年)1月1日以降に新築された分譲マンションについては、売買や担保に際して、専有部分と敷地利用権とを一体的に処分しなければならないものとされましたが、これによって、従来、複雑をきわめた区分所有建物に関する登記がよりわかりやすく簡素化されました。




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