<この記事は、平成8年2月号の「そよ風」に掲載されたものに加筆しました。その後、家電リサイクル法・食品リサイクル法・建設リサイクル法などが次々制定され、循環型社会への取り組みが進められています。>

ごみ減量化をめざして…トップバッター!
容器包装リサイクル法制定
H7.12.15一部施行
平成9年4月より本格スタート

買物かごをさげて市場ヘ、ボウルを持ってとうふ屋ヘ――傘は張り替え、衣料はつぎあてし、最後はくず屋で引き取ってもらう。これが当たり前というのが、ほんのひと昔前の日本でした。生活が豊かになり大量消費時代を迎えた今、毎日、毎日、大量の物がごみとなって出されています。年間に日本が輸入する資源は約7億トン、これに対して輸出する製品が約7千万トン。単純に考えても、日本は毎年毎年確実に重くなっているありさまです。
これに対してごみ問題は、従来からの考え方で、いかに伝染病の蔓延を招かず衛生的に処理するかに主眼がおかれてきました。そのため、ごみは基本的に焼却処理し埋め立てる(焼却できない物はそのまま埋める)という形が、衛生上からも、またごみの嵩を減量できるという意味からも最適だとされてきました。
しかし、今やごみ問題は差し迫ったものとなっています。というのも、このごみ処理場の残余容量が、日本全体であと8.2年分、首都圏では4.6年分、近畿圏でも6.8年分しか残されておらず、まさにパンク寸前の状態となっているからです。この目前の問題にとどまらず、地球上の限りある資源をいかに有効に使っていくか、また地球環境をいかに大切に守っていくかという大きな課題にも応えねばなりません。
何でも使い捨ての大量消費から、物を大切にし活用する生活へと、まさに発想の転換が求められています。
こうした中で、ごみ処理について定めた廃棄物処理法も全面改正され、排出の抑制と再生(=リサイクル)が初めて目的として明記され(平成4年施行)、またリサイクル法も制定されて(平成3年施行)ごみの再生利用に努力するよう、とくに紙・ガラス・建設業を指定して古紙やガラスなどの再利用率の目標値を設定したり、あるいはアルミ・スチール製等の材質表示を義務づけたりの措置がとられるようになりました(くわしくはそよ風59号参照)。
今回はこの一連のリサイクルを一層具体的におし進めるために、容器と包装ごみにターゲットをしぼって、法律を新たにつくったものです。
そのわけは、一般廃棄物の中で、容器や包装ごみが占める割合は、重量では約23%、容積ではなんと57.5%にもあたるからです(右図)。しかも容器や包装というのは、中身がなくなれば一回使っただけでごみとなってしまい、ほとんど再利用されない性質のものでもあります。この法律が施行されて、さらに分別収集が90%行われるなら、ごみの排出量は今のままでも、ごみ最終処分量は約55%減少すると推計されています。
リサイクル先進国のドイツ・フランスにおいてはすでに1990年代初めに、こうしたかさばる容器包装ごみについての処理・リサイクルシステムをつくって成果をあげているところです。
「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」(容器包装リサイクル法)は、市町村が分別収集の責任と費用を負担し、事業者がそれを再商品化する責任を負うという仕組みになっています。
この法律の対象となるのは、商品に付されたすべての容器・包装です。
国は、この容器包装廃棄物についての基本方針を定め公表しなければなりません(法3条、平成8年3月25日に公表された)。この中で分別収集とリサイクルの基本的な方向や排出抑制のための方策などについて大筋の考え方が明示されます。
さらに事業者と消費者はともに、再使用できる容器を使ったり、過剰包装等は避けたりしてできるだけごみを出さないよう努力し、一方でリサイクルされた商品を積極的に利用する義務が課されました(法4条)。
また市町村がその区域の容器包装ごみの分別収集に努め、都道府県はそれに技術的援助を与えることとなります(法6条)。
鉄・アルミ・ガラス・紙パック・ペットボトルに分けて収集保管 |
ただ、市町村が容器包装ごみを分別収集するかどうかは最終的にはその市町村の判断にまかされています(ごみ処理の実情や処分場の状況等の事情が異なるため)。
資源ゴミの分別収集を実施している市町村(対象3236市町村)[平成5年]
| 缶 | びん | 古紙 | 牛乳
パック | 古繊維 | 発砲
スチロール
トレイ | ペット
ボトル | | 資源ゴミ分別
実施市町村 |
市町村数 | 1,092
(33.7%) |
983
(30.4%) |
590
(18.2%) |
327
(10.1%) |
318
(9.8%) |
66
(2.0%) |
45
(1.4%) | |
1,342
(41.5%) |
---|
この新法に基づき、容器包装ごみを分別収集するなら、市町村は3年ごとに市町村分別収集5ヶ年計画を作成し、都道府県知事に提出しなければなりません(法8条)。都道府県では、こうした市町村の実情を踏まえて各都道府県分別収集促進5ヶ年計画を3年ごとに定めます(法9条)。国では、基本方針に沿って、なおかつ全国の実情をまとめた形で、平成9年4月から、再商品化5ヶ年計画を3年ごとに定めることとなります(法7条)。
市町村の分別基準については、厚生省令でこまかく決められています(2条)。@鉄製容器、Aアルミニウム製容器、Bガラス製容器、C紙製飲料容器(紙パック。ただし内側にアルミを張った酒パックなどは不可)、D飲料・しょうゆ用のペットボトルの5種類に大別し、いずれも洗浄・乾燥し異物を除き圧縮しておくこと。しかもガラスについては無色・茶色・その他に分別する必要があります。こうして分別収集されたものは原則的に人口30万人あたり1か所に設けられるリサイクルセンターなどで保管されることとなります(施行規則2条)。ところでこのようなこまかい分別を住民が行うのか、あるいは収集した後に市町村が行うのかは各市町村の判断に委ねられます。
自治体で資源ごみの分別収集が行われているのは41.5%にすぎません(上表)。包装ごみのうち再利用されているのはわずか3.3%ともいわれるのが実情です。新法の成立で、一層の分別収集が進むことが望まれるところです。
こうした容器包装ごみの分別収集が現実にスタートするのは平成9年4月1日からですが、ただ、紙製のものとペットボトル以外のプラスチック製品については当面除外され、4年後の平成12年4月1日から分別収集の対象とする措置がとられました(法附則2条2項、施行令7条)。
こうして分別収集し保管した物については、その容器をつくった事業者とその容器を利用した事業者(中身事業者、飲料メーカーなど)が再利用・リサイクルの責任を負い、その生産量等に応じて具体的にリサイクルの義務量が定められます(法12〜13条)。
しかし、市町村が分別収集した前述の@〜Dの5種類のごみのうち、@鉄製容器、Aアルミ容器、C紙パック、については自治体がきれいに分別保管すれば有償・無償で引取りが見込めることから、事業者へのリサイクル責任は見送られました(施行規則3条)。したがって、Bガラス製品とDペットボトルについてのみ、当面、この新法の対象となります。ガラスは色分けして粉々にすれば再ぴガラスとして再生できますし、断熱材や超軽量建材の材料あるいはタイルとしてリサイクルできます。またペットボトルはカーペットやスキーウェアなど衣料として、あるいは点字ブロックや植木鉢、または断熱材などとしても利用できるほか、最近では油化技術が開発され燃料や化学原料としても注目されているところです。
リサイクルの方法としては次の3つの方法があります。-
- (a)自主回収
市町村の分別収集に頼らず、自己の責任で一定の回収率が達成できると認められた容器については、当該事業者は申請によりリサイクルしたものと認定を受けられる(法18条、具体的にはビールびんなどを予定している)。
(b)独自にリサイクル
市町村が分別収集したものを自分の会社で、あるいは特別な委託会社に依頼して義務量をリサイクルする(法15条、方法・施設等が各基準に適合していることの認定が必要)。
(c)指定法人に委託料を払う
容器・包装リサイクルのために全国で一つの公益法人が指定される予定で、独自で回収やリサイクルをする技術や資金のない事業者は、この指定法人に委託料を払うことで再商品化したとみなされる(法14条、21〜32条)。
- 指定法人についてはまだ設立されていませんが、報告・立入検査・監督命令など国によるきびしい監督下におかれる予定です。
主要飲料容器のリサイクル
アルミ缶ほか
(1993年) |
生産量
(万トン) |
再生利用量
(万トン) |
再生利用率 |
回収びん
(1992年) |
使用量
(百万本) |
回収数量
(百万本) |
回収率 |
アルミ缶
スチール缶
ガラスびん
ペットボトル | 20.2
135.9
235.1
14.7 | 11.6
82.9
130.5
0.1 | 57.8%
61.0%
55.5%
1.0% | ビールびん
1.8リットルびん
2リットルびん | 5,840
780
30 | 5,660
650
28 | 97%
84%
95% |
[注]ペットボトルは飲料容器以外のものも含む
ビールびんは大びんに換算したもの |
今法で対象となる事業者は農林漁業・製造業・卸小売業の収益事業を営む事業者ですが、従業員20人以下(商・サービス業では5人)で、年間売上が2億4千万円以下(商・サービス業では7千万円)の事業者は免除されています(法2条11項、施行令2・4条、施行規則6条)。
また対象事業者のうち、資本金1億円以下(小売・サービス業では1千万円、卸売業では3千万円)、あるいは従業員数が300人以下(小売・サービス業では50人、卸売業では100人)の事業者については平成12年4月1日よりの施行とされ、猶予期間がもうけられています(法附則2条1項、施行令10条)。
いずれにせよ、この法律はその多くの部分、具体的な部分をいずれも政令や省令レベルにゆだねており、今後いかに運用していくかにより大きく左右されるところです。
また具体的なリサイクル法の第2弾としては、次に家電製品と自動車への導入が検討されています。
今法では、回収の責任は基本的に従来どおり市町村が負い、当然その費用も市町村の支出となります。しかしごみ抑制をめざす意味では、その収集費用の一部あるいは全部を消費者・住民が負担する必要があると考えられています(法10条)。現実に、世帯ごとに一定のごみ袋を支給し、それを超えたごみ袋は有料で買ってもらうなどといったシステムを取り入れて、ごみ収集有料化に踏み切っている市町村も全国に千近くあります。
一方リサイクルだけでは限度があり、たとえばこども会などの集団回収率をあげるためにびんビールを飲んでいたのを缶ビールに切り替えたなどという本末転倒の現象さえ起こっているのです。ごみ減量のためには何よりごみ排出抑制が第一であり、より小さなリサイクルの輪をめざす必要があります。さらには、いかに環境にやさしいかを指標としたごみ処理・リサイクルを考えねばなりません。


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