こうした「点検」という制度は義務づけられたものとはいえ罰則はなく、まさにユーザーの意識と責任にかかっているのに対して、「車検」とは国が一定期間ごとに安全走行や公害の面で車が大丈夫かどうかを判定する検査のことです。この車検に合格し車検証(自動車検査証)が交付されなければ車を運行することはできません(法58条)。
従来の車検は、新車で購入した場合はまず3年目に、それ以降は2年ごとに、さらに11年目をすぎると毎年行わなければなりませんでした。この毎年車検の負担は特に大きく、これを機に車の買い換えを考えるユーザーも多かったのではないでしょうか。しかしこのシステムが今回廃止され、11年を過ぎた車の車検も2年ごとに行えばよいことになりました(施行規則37条)。
ところで、車検といえば「高い」と連想する方が多いと思います。しかし、実は車検そのものにかかる費用は数千円なのです。これに点検整備費用・自賠責保険料・自動車重量税などが加わり十数万円もかかってしまうのです。この中でも点検整備費用がかなり高く、まだ使える部分も取り替えているのではないか、どこを整備したのかよく分からないといったユーザーの不満も多く聞かれます。
実はこれまでの制度では、車検の前に24ヶ月点検を受けることが義務づけられており、点検後でないと車検を申請することができませんでした。そのため、たとえユーザー自身が車検を受けるいわゆるユーザー車検であっても、事前に十分な時間と労力をかけて点検整備を整えたうえで申請にのぞんでいました。
ところが今回の改正で、この義務づけがなくなりました。このため自分で車検を受けにいくなら、ユーザー自身がとりあえずまず陸運事務所に車を持ち込み車検を受けます。もし不合格の場合には限定自動車検査証が交付され、15日以内に不合格部分を直して再検査を受け合格すれば車検証が交付されるのです。しかも、この整備を指定整備工場で行えば再検査はさらに簡略化され、書面検査のみとなります。このようにユーザー自身が手間をかければ車検を一層安く、しかも容易にとることも可能になりました。ただし最初から指定整備工場に頼む場合には24ヶ月点検が先になり、従来どおりのシステムがとられます。
ここで心配なのは、ユーザーの意識が「車検にさえ合格すれば点検・整備はしなくてもよい」というふうになっていくことです。今回の改正ではユーザーの経済的負担は軽くなるが、同時に、ユーザーの車に対する管理責任は重くなるということをしっかりと認識しなければなりません。


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