ドライバーに朗報
点検・車検がラクに

点検項目大幅削減・点検なし車検も可

道路運送車両法等改正〜H7.7.1施行〜

 車を持つ人(ユーザー)にとって車検と言えば気の重くなる言葉ですが、昨年の7月1日から車検や点検の制度が一部改正されました。これによってユーザーの負担を少し軽くすることができるようになりました。

点検はユーザーの責任で──6ヶ月点検の廃止等


 これまでは運行前点検と定期点検(6ヶ月・12ヶ月・24ヶ月点検)が義務づけられていましたが、今回の改正で、自家用車については、日常点検整備(法47条の2)及び定期点検整備(12ヶ月及び24ヶ月点検、法48条)が義務となり、6ヶ月点検は廃止されました。ここでいう点検とは車の状態のチェックを行うことで、ユーザーは責任をもってこの点検を行い、修理の必要な個所を整備しなければならないことが明文化されました(法47条)。
 さらにこの定期点検の際の項目も大幅に簡素化されました(自動車点検基準2条別表6)。自家用車の場合、12ヶ月点検では60→26項目ヘ、24ヶ月点検では102→60項目へと半減されたものです。たとえばライトやウィンカーの作用やバッテリーの液量など日常点検でユーザー自身が判断することのできる項目や、シャシばねの損傷といったような実際には必要がないと思われる項目などが大幅に削減されたのです。
 また年間走行距離が5000km以下の車については、次の定期点検まで省略できる項目があり、この結果24ヶ月点検の項目は45項目にまで減ります。

毎年車検の廃止と車検制度の改正


 こうした「点検」という制度は義務づけられたものとはいえ罰則はなく、まさにユーザーの意識と責任にかかっているのに対して、「車検」とは国が一定期間ごとに安全走行や公害の面で車が大丈夫かどうかを判定する検査のことです。この車検に合格し車検証(自動車検査証)が交付されなければ車を運行することはできません(法58条)。
 従来の車検は、新車で購入した場合はまず3年目に、それ以降は2年ごとに、さらに11年目をすぎると毎年行わなければなりませんでした。この毎年車検の負担は特に大きく、これを機に車の買い換えを考えるユーザーも多かったのではないでしょうか。しかしこのシステムが今回廃止され、11年を過ぎた車の車検も2年ごとに行えばよいことになりました(施行規則37条)。
 ところで、車検といえば「高い」と連想する方が多いと思います。しかし、実は車検そのものにかかる費用は数千円なのです。これに点検整備費用・自賠責保険料・自動車重量税などが加わり十数万円もかかってしまうのです。この中でも点検整備費用がかなり高く、まだ使える部分も取り替えているのではないか、どこを整備したのかよく分からないといったユーザーの不満も多く聞かれます。
 実はこれまでの制度では、車検の前に24ヶ月点検を受けることが義務づけられており、点検後でないと車検を申請することができませんでした。そのため、たとえユーザー自身が車検を受けるいわゆるユーザー車検であっても、事前に十分な時間と労力をかけて点検整備を整えたうえで申請にのぞんでいました。
 ところが今回の改正で、この義務づけがなくなりました。このため自分で車検を受けにいくなら、ユーザー自身がとりあえずまず陸運事務所に車を持ち込み車検を受けます。もし不合格の場合には限定自動車検査証が交付され、15日以内に不合格部分を直して再検査を受け合格すれば車検証が交付されるのです。しかも、この整備を指定整備工場で行えば再検査はさらに簡略化され、書面検査のみとなります。このようにユーザー自身が手間をかければ車検を一層安く、しかも容易にとることも可能になりました。ただし最初から指定整備工場に頼む場合には24ヶ月点検が先になり、従来どおりのシステムがとられます。
 ここで心配なのは、ユーザーの意識が「車検にさえ合格すれば点検・整備はしなくてもよい」というふうになっていくことです。今回の改正ではユーザーの経済的負担は軽くなるが、同時に、ユーザーの車に対する管理責任は重くなるということをしっかりと認識しなければなりません。




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