< 平成12年(2000年)5月31日までに結ばれた金銭使用貸借契約については、下記の利率が適用されます。また、平成12年6月1日以降の契約については、そよ風105号の記事をご覧ください。>
サラ金規制2法とは?
貸金業法の制定と出資法の一部改正
昭和58年11月1日〜
昭和58年(1983年)11月1日、「貸金業の規制等に関する法律」(貸金業法)が制定され、さらに「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」(出資法)も同時に改正され、いわゆる『サラ金規制2法』として施行されました。この法律は、貸金業における高金利の引下げ、営業の登録制を導入し、各種の業務規制の措置を講ずることにより、サラ金利用者の保護を図るとともに、法律の規制を遵守した貸付に限って貸金業者にいわゆるグレーゾーンの利息の確保を認めるものです。
サラ金とグレーゾーン立法 |
いうまでもなく、サラ金の貸付金利は銀行金利などに比べるとずっと高率のものとなっており、専門家はこの金利のことを『グレーゾーン金利』という呼び方をします。
わが国では、従来から、「利息制限法」(同法1条1項は、貸付元本別に利息の最高限度を定めており、これを超える利息の約定は、民事上無効としている。元本が10万円未満の場合は年利20%、元本が10万円以上100万円未満の場合は年利18%、元本が100万円以上の場合には年利15%が限度となる)と「出資法」(=出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律。同法の5条1項では、年利109.5%を超える割合による利息の契約をした貸金業者を処罰する。)の2つの法律によって金利を規制していました。『グレーゾーンの金利』とは、利息制限法の限度(たとえば50万円の貸金なら年利18%が限度)は超えるけれども、出資法の制限利率である109.5%にはいたらないという、中間領域の金利のことをいいます。
グレーゾーンの金利に対しては、出資法による処罰は行われませんが、利息制限法によれば無効なのです。したがって、裁判沙汰にしてしまえば、貸した方は利息制限法の範囲でしか取立てができず、借りた方も利息制限法の限度を超える分は支払いを免れるというわけです。しかし実際のところ、返済に窮した借主が、利息制限法超過分の利息支払いについて債務不存在確認の訴訟を提起するケースは、きわめて数少ない例に属します。これが、グレーゾーンの金利による貸付を業とするところの企業や個人が、十分に安全と採算を見込むことができる大きな理由です。
実態としてサラ金は、手近な金融として根強い消費者需要に支えられて急伸する反面、その業務運営などにつき、業法による規制をまったく欠いていました。このことが多くの『サラ金地獄』を生んでいるという認識により、「貸金業の規制等に関する法律(貸金業法)」の制定と「出資法」の一部改正とが同時に行われたわけです。
なお、この立法措置は、昭和58年11月1日以後の貸借から適用され、それまでの貸金の元利弁済等については、なお従前どおりの取扱となります。
高金利の規制(改正出資法) |
業として金銭の貸付けを行うものについての制限利息を、昭和58年10月までの年利109.5%(日歩30銭)から年利40.004%(日歩10.96銭)に引き下げるとともに、この制限を超える高金利への処罰を一段ときびしくすることにしました(30万円以下の罰金から300万円以下の罰金へ、出資法5条)。
しかし、金利を、ただちに年利40.004%にしたわけではなく、5年以上の期間をかけて徐々に引き下げられました。すなわち、改正から3年にあたる昭和61年(1986年)10月31日までは年利73%(日歩20銭)、さらに5年後の平成3年(1991年)10月31日までは年利54.75%(日歩15銭)とし、平成3年11月1日より年利40.004%(日歩10.96銭)へと引き下げられたものです。
<ちなみに,平成12年6月1日からは,さらに年利29.2%(日歩8銭)に引き下げられています。また,平成15年9月1日からは,高金利への処罰も大幅に引き上げられ,年29.2%の金利を超える契約をしたり支払いを要求するだけで,懲役5年以下または罰金1000万円以下(併科もあり)に処せられます。法人の場合は3000万円以下の罰金となります。>
サラ金利息の任意支払いは有効 |
貸金業法の制定により、借主が任意に『グレーゾーン金利』(サラ金利息)を支払った場合には、この任意の支払いは有効な弁済とみなされることとなりました(いわゆる『みなし弁済』規定、43条)。
ちなみにこの貸金業法ができるまでは利息制限法の範囲内でのみ有効な弁済とされ、利息制限法の制限超過分は、それを任意に支払った場合でも、元本の返済が残っておれば元本に充当し、元本も充当済のときは、不当利得として返還請求ができるものとされていました(判例)。そこで、借主が支払不能となったときに裁判に持ち込めば、利息制限法の範囲でしか貸金業者に支払わなくてすんでいたのです。
さて、この貸金業法43条の『みなし弁済』となるためには、貸付の際に契約書、返済の際に受取書が交付されていることが重要な前提となります。さらに、あくまで「任意の」支払いでなければなりません。表面的には、借主の支払いはほとんど任意の支払いとみられがちですが、少なくとも、後述の取立行為の制限規定に違反するときには、利息として任意に支払ったとはいえないでしょう。また、貸金業者が強制執行や競売をかけてきた結果としてなされた強制的支払いや、詐欺・強迫・錯誤による支払いも任意の支払いには該当しません。任意の支払いに該当しないときには、裁判所に持ち込めば利息制限法の限度額によって処理されることは同様です。
いかなる場合が任意の支払いにあたるかについては、判例や通達などで具体的なケースが示されることによって明らかとなり、個々のケースで判断されます。
なお、サラ金利息が支払不能となった借主が、少なくとも利息制限法の範囲を超える利息分の任意の支払いだけは拒絶しておきたいというときには、内容証明郵便でその旨を業者に申し入れておくことが賢明でしょう。
取立行為の規制 |
債権を取り立てる際に、暴行または脅迫を用いれば暴行罪・脅迫罪となり罪を問われますが、暴行脅迫に至らないその周辺の威迫やいやがらせについては、従来なかなか取り締まれませんでした。
貸金業法ではこれを一歩進めて、債権取立にあたって、人を威迫しまたはその私生活もしくは業務の平穏を害するような言動により、その者を困惑させてはならないものと定め、これに違反した場合には、6ヶ月以上の懲役もしくは100万円以下の罰金に処することとしました(21条、48条)。
<ちなみに,違法な取立行為への罰則もさらにきびしくなり,平成15年9月1日からは,2年以下の懲役または300万円以下の罰金となっています(併科もあり)。>
このほか、不当な取引形態を解消させるため、営業所ごとに顧客の見やすい場所に貸付条件の掲示を義務づけ、弊害の多い誇大広告を禁止し、契約の締結や弁済に際して、契約書の内容や弁済額・残債務等を明らかにした契約書・受取書の交付を義務づけました(14〜18条)。
さらに貸付に際し、貸金業者が借主から、不払いの場合の強制執行に備えて、公正証書作成のための白紙委任状を取得することを禁止しました(20条)。
これらの違反に対しては、いずれも罰則が付されています(47〜52条)。
なお、従来は、貸金業を営む場合には、何ら資格要件は必要ではなく、事後の届出ですみましたが、これからは登録制となり、3年ごとに更新を受けなければならないものとなっています(3条)。
法令の解釈や運用方針などについて、上級行政機関が下級行政機関に対して行う具体的・個別的な注意や指示を総称したもの。たてまえとしては、行政組織の内部を拘束するにとどまり、法規として国民や裁判所を拘束するものではない。しかし現実に、上級行政機関によって、立法の背景・趣旨・目的その他さまざまな事情を十分に考慮して作成されることに加えて、行政が通達によって反復・継続して行なわれるので、事実上の強い拘束力があり、実務上重要な地位を占めている。
ちなみに、サラ金の取立方法の規制について大蔵省が発した通達(昭和58年9月30日付銀行局長名)によれば、たとえば◇電話・電報・居宅訪問等が継続して行なわれたり、深夜早朝(午後9時〜午前8時)に行なわれたりすること、◇貼紙・落書き、多人数での押しかけ、大声や乱暴な言動、◇勤務先で借主に不利な言動をとること、等々の禁止を示達している。