
どんなとき離婚できるの?
〜法令と判例から〜
重大な事由がある場合…具体的には??

[1] 配偶者に不貞な行為があったとき(民法770条1項1号)
「不貞な行為」とは、婚姻関係外の異性との肉体的交渉をいい、一時的な関係であるか、同棲を伴うか、売春的行為であるかなどは問いません。この場合、裁判所は、不貞な行為の有無のみで判断するのではなく、不貞な行為によってひきおこされた諸々の「婚姻を継続し難い事由」とあわせて判断して、離婚を認める場合が少なくありません。
[2] 配偶者から悪意で遺棄されたとき(同2号)
夫婦の一方が承知の上でわざと婚姻上の義務(同居・協力・扶助)を果さず、他方を放置して顧りみらないことで、もはや、婚姻を継続する意思がないと認められる場合です。たとえば、夫が出かせぎに行ったまま蒸発してしまい、妻の方へ全く仕送りをしない場合(3年以上の場合は下の[3]に該当)などが、これに相当します。
ただし、遺棄は、有責度が高いものでなければならず、たとえば、妻の嫁としての立場や家業への不慣れについて夫の理解が欠けたために、妻が将来に絶望して実家へ帰った場合などは(下の[5]に該当するときは別として)、悪意の遺棄にはなりません。
[3] 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき(同3号)
3年という期間は、相手が生きているということをこちらが知っていた最後の日から起算します(たとえば、最後の音信が発せられた時)。この場合、相手がいないため、家裁へ調停を申立てても無意味なので、直ちに訴訟が起こせます。
[4] 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込がないとき(同4号)
「強度の精神病」とは、回復の見込みのない精神分裂症など、不治の精神病のことであり、一時的又は軽度のものは(下の[5]に該当するときは別として)この場合の離婚原因とはなりません。
ただし、この場合相手が強度の精神病者であるため、これを相手として離婚の訴えをすることは不可能です。そこで、手続きとしては、まず、後見開始の審判を家庭裁判所に申し立て、その審判で決まった法定代理人(後見人)を相手方としてそれからすすめていきます。
しかしながらいくら不治の精神病であっても、病人の今後の治療や生活に対してできるだけの手を打ち、ある程度まで将来の見とおしをつけてからでないと、離婚の請求は認められないことになっています。
[5] その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき(同5号)
「重大な事由」の有無は、実際のケースごとに判断していくほかありませんが、それが認められたケースとして、判例からは、たとえば次のように類型化することが可能です。
(1) 夫の妻に対する暴行・侮辱・虐待
- 夫が粗暴・短気な性格に加え酒乱のため、妻にしばしば暴力を振い、妻が夫の虐待に耐えかねる場合
- 夫がしばしば些細なことか ら妻に暴行を加え、そのため妻は愛情を失って別居しており、妻にも今少しの努力が望ましいものの妻の離婚意思が固い場合
- 婚姻後20数日の妻が夫の旅館経営に意見を述べたところ夫が憤慨して妻を実家に追い帰し、その後の話し合いに応じない場合
- 夫が妻の不貞行為を不問に付して婚姻を継続した後、些細なことから夫が妻に傷害を負わせ、表戸を釘付けにして妻を締め出し、再三乱暴な言葉を使ったため、妻が離婚を決意するにいたった場合
(2) 妻と同居の舅・姑等親族との不和
- 姑が農家の主婦としての昔風のしきたりの中で我ままに振舞い、殊に農村一般の気風としてありがちな、嫁は自分の家に もらったもの、一般家事の外、農業労働についても有力な働き手となるのはあたりまえという観念のもとに嫁を遇することのみ多く、しかも夫は姑に従順で妻をかばわず、両親と夫婦とが別居して生活できない場合
- 妻が同居する夫の両親と折り合いが悪いのに、夫が妻をかばってその不和を解消する努力をしない場合
(3) 夫の怠惰・浪費
- 先妻の子5人(23歳から7歳まで)と妻との折り合いが悪いのに、夫はその間を調整する積極的な努力をせず、家事の処理も一任せず精神的に孤立させ、家事および日用品雑貨手伝いに酷使されているにすぎないと思い込ませるにいたったため、婚姻が破綻し、夫婦の共同生活を回復することが期待できない場合
- 夫が働く意欲がないため、経済的に困窮し、妻が別居の上働いて生活費を得ているのに、夫は嫌がらせをするだけで、妻に住所も知らせず、子の監護も怠る場合
- 失業中の夫が就職の意思がないため、代わりに妻が働いて家計を支えていたが、調停により別居した。その後、夫は自営によって収入を得られるようになったので同居を求めたところ、妻はすでに怠惰な夫を極度に嫌うあまり同居を拒むにいたった場合
(4) 援助・協力義務違反
- 夫が会社で重労働をし疲労して帰宅し、その給料が家計の支柱となっていたのに、妻は夫をたんなる働き手と考え、さらに引き続き深夜まで同居の義父母の家業の手伝いをさせて、夫に安息の時間を与えず、夫も妻との生活を改善できない場合
- 妻が新興宗教の信仰活動に熱中し家事をおろそかにしたため婚姻が破綻し回復不能となった場合
(5) 夫の受刑
- 夫が2回にわたり懲役刑の執行を受け、家族の生活に重大な支障を与えた場合
- 夫が怠惰で就職せず、4度目の犯罪により服役した結果、妻子が別れて生活するほかなくなった場合


ホームページへカエル
「婚約・離婚トラブルQ&A」目次へもどる
次のページ(裁判離婚に変化の兆し――有責主義の緩和をめぐって)へ進む