<以下の解説は、そよ風56号(平成3年12月号)に掲載された記事をもとに加筆・訂正したものです。>

地方自治法の改正
町内会も法人として認められます
平成3年(1991年)7月1日施行

平成3年、地方自治制度の基本的なルールを定める地方自治法が種々の点で改正されました。いずれも地域生活や自治運営の近況に鑑み検討が重ねられていたものです。
1 町内会にも法人格を付与
わが国には居住地に最も身近な組織として、町内会・自治会といった地区や部落等の地縁による団体が数多く存在しています。これらの団体は、連絡・防犯・祭礼・施設管理・環境衛生等々の分野で活動しているほか、事実上市町村の末端の機構としても機能していることが少なくありません。またこれらの団体は、土地や建物等の財産を所有していることが珍しくないのですが(地区財産・部落財産)、これらの地縁団体は法人格をもたないために(人格なき社団といわれている)、その所有財産を団体名で登記することができず、やむなく団体と関係の深い個人名(役員等)で登記しているのが現状です。このため、団体のために登記名義を貸した個人が死亡した場合等には、相続時の財産処理をめぐって多くの紛争が発生しており、一日も早く公益法人として位置づけるように全国自治会連合会などから要望が寄せられていたものです。
そこでこのたび、自治会・町内会その他町村内の一定の地域に住居を存する地縁に基づいて形成された団体のうち、一定の要件(たとえば、(1)その区域の住民相互連絡・環境の整備など良好な地域社会の維持形成のための活動を行うこと、(2)この区域に居住するすべての個人が構成員となりうること、(3)目的・名称・区域・代表者・会議・資産等について規約が定められていること)に適合するものは市町村長の認可を受けて法人格を取得し、その規約の定める目的の範囲内において権利を有し義務を負うこととされたものです。
これまでこれらの団体の名義での不動産登記ができないなどの財産上の問題がこれによって解決されたのですが、認可を受けたことにより地縁による団体が行政組織の末端機構とされないよう、また、特定の政党のために利用されることがないよう戒める旨の規定も設けられているのも注目されます(260条の2の1項〜18項)。
2 県や市町村の休日
地方自治体において特別な歴史的・社会的意義を有し、住民がこぞって記念日とすることが定着している日で、広く国民の理解が得られるようなものについては、あらかじめ自治大臣との協議をへて自治体の休日と定めることができるとされました(4条の2の3項)。
自治体の休日は、(1)国民の祝日である休日ならびに(2)日曜日および土曜日さらに(3)条例で定める年末年始の休日に限られていますが、この規定により、たとえば広島市の平和記念日、沖縄県の慰霊の日など、その歴史的社会的意義に鑑み、休日としても広く国民の理解と支持を得られるようなケースについて休日化の道を開きました。しかしこの規定に該当する休日は、国の休日とのかねあいや、立法趣旨に照らしてかなり限定されるものであり、盆休み・土地の祭り・市制記念日などを自治体の休日として定めることはできないと考えられています。
3 監査委員の独立性等強化
監査委員は公正で能率的な自治財政運営を実現するための自治会のお目付役です。この監査委員の職務権限が、従来は原則として財務監査に限られていたものを、自治体の事務執行の監査、すなわち行政監査にも拡大し、さらにこの行政監査の対象となる事務の中には、機関委任事務といって知事や市長などが国から委任されている事務を含まれることになりました(199条。ただし、国の安全・プライバシー等に関する機関委任事務は除外)。
監査委員の職務権限の拡大強化に伴う監査委員の資格要件として(監査委員が議員以外のものから選任される場合には)、「人格が高潔で、…行政運営に関しすぐれた識見を有する者」と改められ(196条1項)、さらに知事や市長からの監査委員の独立性を確保するために、議員以外から選出される監査委員が3人あるいは2人である自治体では、そのうち2人あるいは1人以上は自治体の常勤職員でなかったものでなければならないとされました(196条2項)。ともすれば、自治体の息のかかったOB職員が監査委員に就任しがちなのをいくらかでも制限しようとするものであり、これまで住民監査請求に際して各方面から寄せられた監査委員制度に対する批判を念頭においた改正です。
4 その他(参考人制度など)
議会が検査し、または監査委員に監査を求めることができる事務を機関委任事務(前出)にまで拡大したこと、議会の委員会で民意を直接聴取するための参考人制度を設けたことなどがあげられます。
このほか、自治体の長に関し、第三セクター(自治体が出資している一定の法人)の役員との兼職を認める規定や前記機関委任事務の処理を怠った場合の手続き(職務執行命令訴訟制度)についての規定が整備されています。


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