これは前回の消費税法改正の際に平成3年10月1日(第55号)に掲載された記事です。消費税の導入(第40号)・消費税5%にアップ(第86号)と合わせてご覧下さい。

より公平な税をめざし

家賃・出産費用は非課税
事業者の益税・税テク防止

平成3年10月1日施行  消費税法の一部改正

 消費税が導入されて、早や3年目に入りました。ようやく浸透し定着した観があります。しかし当初から、導入を急ぐあまり、制度の粗さ・不公平さが指摘されていました(そよ風40号参照)。とくに、@消費者から預かった税金分を事業者が納付までの期間運用して得る運用益の問題(大企業にとっては数十億円もの利益となる)、さらにA中小企業者向けの簡易課税制度などにより、消費者が支払った税金がきちんと国庫に入らずその一部が事業者の利益となる益税の問題、そして何といっても、Bほとんどあらゆるものに一律に課税したために生じた逆進性の問題(低所得者層に一層きびしい税制)等々……
 そこで平成3年5月に「消費税法の一部を改正する法律」が公布され、次の諸点が主に見直されました。

非課税の拡大


 当初より土地や郵便切手などは非課税でしたが(そよ風40号 表1)これまで課税対象になっていた取引のうち、平成3年10月1日以降の取引から次のようなものも非課税となりました (別表第一関係)。

@第二種社会福祉事業等と身体障害者用物品

A入学金・施設設備費等と教科書代

B出産費用

C住宅の貸付け(家賃)

D埋葬料、火葬料


簡易課税の見直し


 簡易課税制度とは、課税売上高に一定%を乗じて納付税額を算出する簡便計算法です。中小事業者の納税事務負担の軽減を図る観点から、基準年度(原則として前々年度)の課税売上高が3000万円〜5億円以下の事業者に限り適用が認められています。今回この適用基準が4億円に引下げられました(37条)。[平成9年4月1日からは、さらに2億円に引き下げられた。]
 さらに、現行では「卸売業――90%」「その他の事業――80%」と2区分されている「みなし仕入率」を、次の4区分により細分化して適用することになりました(施行令57条)。[平成9年4月1日からはさらに細分化され、5種類になっている。]

 この改正は、実際の仕入率がみなし仕入率より低い事業者が、簡易課税を採れば税金で儲かるといういわゆる「益税」問題に対処したものです。
 2業種以上を兼営している事業者が簡易課税を選択するときは、原則として事業別のみなし仕入率を用いることとされました。ただ、みなし仕入率の異なる事業ごとに区分経理が行われていない場合には、兼営している事業のうち最も低いみなし仕入率を全体の売上に適用します。但し、1種類の事業(たとえば小売業)の課税売上高だけで全体の75%以上を占める場合は、全体をその仕入率(小売業なら80%)とすることができます。
 簡易課税を選択してもこれまでのような「益税」によるメリットは薄れてきますので、卸・小売以外の各業者では簡易課税の適用と実額計算による方法を充分比較検討する必要があります。
 簡易課税制度の改正適用は平成3年10月1日以降開始する課税期間からです。個人事業者の場合は平成4年分から適用されることになります。

限界控除制度の見直し


 限界控除制度というのは、課税売上高が免税点(3000万円)を超えた途端に消費税の急激な負担が生ずるのを避けるため、売上高6000万円までは緩やかな納税額となるよう配慮した制度をいいますが、この基準が5000万円に引下げられました(40条)。[この限界控除制度は平成9年4月1日をもって廃止された。]

課税期間の見直し


 消費税の課税期間は原則として個人事業者は1月1日から12月31日まで、法人については各事業年度とされています。また、6ヶ月を経過すると直前の課税期間の納付額の2分の1相当額を中間納付することなっています(つまり年2回の納付となる)。 そのため、納税までの期間に預かり消費税を「運用」し利益を得ることが可能であったことから、今回の改正では納付の回数をもう少し頻繁に行うことになりました。年間納付額が5000万円を超える事業者の申告・納付回数を現行の年2回から4回に増やして運用益の問題に対処することになります(42・48条)。




ホームページへカエル
「最近の法令改正」目次にもどる
次のページ(塩の専売制度廃止)に進む