<以下の解説は、そよ風33号(昭和63年2月号)に掲載された記事をもとに、平成11年3月15日現在の建築基準法に基づいて若干の修正を施したものです。>

建物の高さ制限が緩和されました

1987年11月16日施行

建築基準法の一部改正




 建築基準法は、建物の敷地や用途、構造や設備などを規制の対象にした法律です。
 私たちの生活に非常に密接な「建物」に関する「きまり」ですから、誰でもこの法律が基本的なルールとして定めている内容ぐらいは常識として知っていることが望ましいのです。しかし、「建物」の基準は、建築技術のたえまない進歩や、都市部の限られた土地利用に対するさまざまな要請の中で、複雑に変化し流動せざるを得ない面があります。そのためでしょうか(税金の法令などと同じように専門家だけがわかればよいとしているのではないのでしょうが)、この法律はかなりわかりにくい代物(しろもの)となっており、改正のたびごとにふつうの人びとにとってますますわかりにくくなっていくのは困ったことです。
 さてこのたび、建築技術の進展や敷地の有効利用に対する要請に基づき、主として建物の高さに関連する建築基準等についていくつかの改正が行われました。

13メートル以上の木造建築が可能に


 まず、木造建築物は従来、高さ13メートル(軒の高さは9メートル)をこえて建築することは許されませんでした(これまでは13メートル以上の建物となると近代的な鉄筋等のビルを選ばざるをえなかった)。
 それが昭和62年(1987年)の改正で、主要な構造部分について一定の技術的水準(たとえば外壁・床・火気使用室の防火・耐火、柱や基礎の耐久力など)をクリアすれば、高さ13メートルまたは軒の高さが9メートルをこえる木造建築物を建てることができるようになりました(法21条)。


低層住居専用地域も12メートルまで


 都市計画区域においては、都市計画によって、第一種低層住居専用地域・第二種住居地域・近隣商業地域・工業地域などという用途地域が定められ建築物の用途がさまざまに規制されていることは、都会に住む人びとの多くはどこかで聞かれたことがあると思います。

☆都市計画区域
 都市計画法5条に基づき市町村の中心市街地を含み、自然的社会的条件を考慮して一体の都市として総合的に整備し開発し保全する必要があるとして指定される区域。

 第一種または第二種低層住居専用地域というのは、典型的な住宅地であり、その地域の良好な環境を確保させるため、従来、学校建築などの例外をのぞき高さが10メートル以上の建物は禁止されていました(法55条)。しかしこれが改正され、建築物の高さの限度を都市計画で定めるものとし、その限度として、従来の10メートルのほかに、新たに12メートルの場合を付け加えました。

道路斜線制限を知っていますか?


 道路からビルを見上げると何階目からか上の方が斜めに切られて建てられている場合がありますね。
 道路の上空を一定の角度内で確保することによって、採光や解放感を与えビルの谷間などにおける圧迫感の軽減に役立っています。これは、道路斜線制限といって、建物が、その建物の前面の道路の向かい側の端っこ(反対側)からみて一定の角度(地域によって道路の巾の1.25倍または1.5倍)以内におさまるように建築を制限する制度です(法56条1項1号)。
 この規定が改正され、上の前面道路の反対の端っこからの距離が何メートルか離れてしまえば、その部分からは建物は斜線制限に服さないでもよいことになりました。つまり、これによって、道路から見上げたビルが何階目からか上は斜めに切られていますが、その斜線の先でさらに高層の階がそびえるという光景が見られるようになったものです(右図参照)。
 このほかにも、隣地境界から後退した高さ20メートルまたは31メートルをこえる建物について、高さの制限(隣地斜線制限)を軽減したり、広い道路から70メートル以内の横町での建築については容積率(いわゆる建坪)の制限を緩和したりするなど、建物の高層化と土地の高度利用とを若干助長する改正が行われました。




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