地代家賃統制令が廃止になりました

1986年12月31日

 昭和35年以来、その存廃が論議されてきた地代家賃統制令が、昭和61(1986)年12月31日をもってついに廃止されました。これにより統制家賃等はこれまでの制限枠がはずされることになります。
地代家賃統制令では、貸主が統制額を超えて、地代または家賃の額を契約し、または受領することを禁止していたほか、認可を受けないで、地代家賃の額を変更し、または受領することも禁止していました。また、この禁止をいろいろな名目によって免れる行為や、地代または家賃として金銭以外のものを受領することも禁止していました。
 この地代家賃統制令の廃止によって、これまで低廉な地代家賃で助かってきた賃借人の家計が圧迫されることになるのか、それとも、不当に安い賃料をかこっていた賃貸人サイドが今後の賃料改訂に強気で臨むことになるのか、さらには、これをきっかけに、概して老朽化している統制令適用借家の大修繕や建て替えが進行するのか、さまざまな影響が予想されます。

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 ご承知の方も少なくないと思いますが、これまで地代家賃統制令の統制の対象となっていたのは、昭和25年7月10日以前に新築に着手された床面積99平方メートル以下の住宅およびその敷地等に限られていました。また、統制額も一定の算式にしたがった画一的なものであったため、一部の借主の既存の利益のみを保護し、反面、一部の貸主にその犠牲を強いる結果になっているとの非難が強くなっていました。
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 もともと、現行の地代家賃統制令は、終戦直後の異常な住宅難に対処し、地代家賃の高騰をおさえて国民生活の安定を固めるため、いわゆるポツダム勅令により制定されたものです。しかし、制定当時の異常な住宅難は、かなり緩和され、すでに全都道府県で住宅数が世帯数を上まわる状況になりました。これに加え、統制対象の住宅は、その相当数が既成市街地にあり、土地の高度利用を図る上で、阻害要因となっています。
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 このような現状にかんがみ、昭和55年7月には住宅宅地審議会は、「住宅困窮者に対する公共賃貸住宅への入居のあっせん等の体制を整備し、建替のための補助、融資制度の改善を図るなどの条件整備を行った上で、早急にこれを廃止する必要がある。」と提言し、臨時行政調査会の第3次答申(昭和57年7月)においても「現状と著しく乖離している地代家賃統制令を廃止する」ように指摘されていました。今回の廃止措置は右のラインに沿ったものですが、複雑な問題をかえつつもこの地代家賃統制令という法律(制定当時は勅令)がついに廃止されたことが、今後、各方面にどのような影響と変化とをもたらすか注目していきたいと思います。
 なお、統制令の枠がはずされたために地代家賃の支払が困難になった人びとで一定の資格をみたす者に対しては、多くの県や市で公営賃貸住宅の優先入居の制度が設けられていますので、地元自治体に問い合わせてください。




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