放送の法体系を60年ぶりに見直し

平成23年3月31日 一部施行

 

1 デジタル化と法体系の方向

 

我が国では本年7月24日より、全国的に、テレビの送受信がデジタル化され、それまでのアナログ方式のテレビはすべてデジタル方式のテレビに買い換えざるをえなくなりました。アナログは連続的、デジタルは離散的を意味します。音楽はもともとアナログで、音の気圧の連続的変換をそのまま録音再生するものですが、デジタルは時間を区切り各時点での気圧を数値化するもので、音の自然さを多少犠牲にする代わり、再生の確実さ、軽量化と移動性、操作の簡便さを長所とします。この長所のために、我が国の通信放送分野においてはデジタル化が進展し、各種の通信放送サービスの一層の発展が期待されるにいたりました。こうした変化に対応した新たなサービスを可能とするため、放送法等の一部が改正され、その一部は平成23年3月31日より施行されるに至っています。

主な改正内容は、現在、放送関連について4本ある法律(放送法・有線ラジオ放送法・有線テレビジョン放送法・電気通信役務利用放送法)を一本化する等60年ぶりに、通信・放送の見直しを行うこととしたものです。

 

2 放送への参入を希望する事業者への認定・登録等

 

改正後の新放送法においては、「放送」を基幹放送と一般放送に二分しています。そして、「基幹放送」は放送用に専ら又は優先的に割り当てられた周波数を使用する放送

(たとえば現在の地上テレビジョン放送、BS放送、AM・FMラジオ放送など)であり、「一般放送」は基幹放送以外の放送(たとえば現在の有線テレビジョン放送、有線ラジオ放送、電気通信役務利用放送)が該当します。

基幹放送へ参入しようとする事業者に対しては、原則として「認定」参入規律となります。その事業者が無線局の設置・運用(ハード)と放送の業務(ソフト)の両方を希望する事業者であるときは、電波法上の「免許」のみで足りる現行の制度を存置させることとしています。一般放送は登録(有線テレビなど)・届出(有線ラジオなど)が参入規律となります。

 

3 マスメディア集中排除原則の法定

 

1の者が支払可能な基幹放送の放送事業者の数等の制限は、マスメディア集中排除原則といわれ、放送がその社会的な役割を適切に果たすために欠かすことができない必要不可欠なルールであるとされます。放送の多元性、多様性、地域性等の確保にかかわるからです。

そこでは複数の基幹放送事業者への出資に関しては、原則として、議決権の一定の範囲内(10分の1から3分の1未満までの範囲内で総務省令で定める水準)を超えてはならないものとされた。これはマスメディア集中排除原則について、その基本的な部分を法定化したものです(放送法104条3項ほか)。

 

4 放送における安全・信頼性の確保

 

自然災害等の際に長時間にわたる放送中止事故などが生ずることのないように設備の維持・重大事故が実際に生じた場合の報告にかかる規定を整備する(放送法111〜113条外)。これは、これまで放送中止事故が発生しているにもかかわらず、これに対応する規律が欠けており情報通信の安全性、信頼性の確保を必要としたためである。

 

5 番組調和原則と公表制度

 

これは放送番組の種別の公表にかかわる問題である。テレビ放送を行う基幹放送事業者に対しては、番組調和原則といって、教養番組、又は教育番組並びに報道番組及び娯楽番組枠を設け、放送番組の相互の調和を保つべきものとされている。

しかし、具体的にどのように調和が図られているのか明確ではなく、その実効性が確保されるべきとの社会的な要請がある。

そこで改正法は、「基幹放送事業者の自主自立の下で、基幹放送事業者が、放送番組の種別を区分する基準等の策定、放送番組の種別ごとの時間・割合等の集計を行ない、放送番組審議機関の審議を経て、公表する制度を設けるべきものとした(放送法107条)。

 

6 有料放送における提供条件の説明義務

 

有料放送について放送事業者と受信者との間で、トラブルや苦情が増加している。国民生活センター情報(P10-NET)によれば、平成20年度で年間苦情相談件数役3000件、10年前に比べて9倍、5年前と比べて2倍増である。そこで新法は利用者受信者の権利を補償する観点から、@有料放送業者の休廃止について事前の周知、A提供条件の説明B提供条件に対する苦情等についての処理等の義務を定める規定を新設しました(放送法149〜151条)






ホームページへカエル
「最近の法令改正」目次にもどる
次のページ(父親も子育てができる働き方の実現…「育児休業法の一部改正」)へ進む