育児休業の再度取得 パパ・ママ育休プラス
父親も子育てができる働き方の実現
育児休業法の一部改正
H22.6.30より施行中


 働き方の見直しによる仕事と生活の調和(ワークライフバランス)の実現と男女ともに子育て等をしながら働き続けることができる雇用環境を整備することが育児介護休業法(育児休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉等に関する法律)の改正の目的です。


 平成21年7月1日に公布され、平成22年6月30日から24年4月1日にかけて施行されます。


少子化対策への優先課題

 近年は急速な少子化の進行、家庭及び地域を取り巻く環境の変化の中「ワークライフバランス」が重要なテーマとしてあがっています。次代の社会を担う子供を育成し、育成しようとする家庭に対する支援について、家庭のみならず、事業主や国、地方公共団体についても一体となって取り組むことが喫緊の課題となっています。次世代育成支援対策においても「家庭その他の場において子育ての意義について理解が深められ、子育てに伴う喜びが実感されるように配慮して行わなければならない」としており、もはや育児はその父母や保護者だけの問題ではありません。そこで育児介護休業法でも子の養育を行う労働者等の保護を一層強めるべく種々の改正が行われました。

父親の育児休業取得の促進

 改正点の1つ目としては特定の場合「無条件に」2回目の育児休業を取得できるようになったことです(5条)。改正前は「育児休業は養育する子が1歳に達するまでの間、1回に限り取得できる」としており、その期間の長短を問わず、1回取得すると、2回取得が認められる特別の事情のあるときを除き、原則はもう育児休業はとれません。すなわち、1歳に達するまでの期間内に2回目の育児休業を取得するには「子の養育をする配偶者が産前産後休業・死亡・離婚」など特別の事情がない限り認められることはありませんでした。ですが、「ワークライフバランス」を唱え、父母ともに「育児」に参加することの意義を重要視することから、改正により無条件で2回目の育児休業が認められるケースが創設されることになりました(5条の2)。ただし夫の1回目の育児休業が妻の産後8週間を経過する日の翌日までに取得されたものであることが必要です。

この産後8週間については妻が産後休業を取得したかどうかは問われません。妻の産後は何かと大変です。その期間内に夫が育児に参加するのであれば、その育児休業については回数としてカウントしないことになります。従って、その後も子が1歳未満である限り夫には2回目の育児休業が認められます。また、従来の2回目が認められる特別の事情として「育児休業対象の子が疾病・負傷・身体上または精神上の障害により2週間以上の要介護状態になった」「保育所における保育の実施を希望し、申込みを行っているが当面それがかなわない」という事由も追加され、2回目が認められる特別な事情が緩和されています(5条)。また1歳到達後の期間について休業することが雇用の継続のために特に必要と認められる場合(子の養育をする配偶者が死亡や保育所に入所できない等)、従来通り1歳半までの育児休業が認められていますが、1歳到達日において妻か夫が育児休業をしていることが要件となります(5条の3)。

パパ・ママ育休プラス

 改正点の2つ目としては、「パパママ育休プラス」という制度が新設されたことです(9条の2)。
 これは対象となる子が1歳に満たない期間において妻も夫も育児休業を取得した場合において、後発として育児休業を取得する夫については無条件に1歳2カ月まで育児休業を認めようというものです。ただし、取得できる期間が長くなるわけではなく、認められるのが1年であることには変わりはありません。また対象となる要件として夫の育児休業開始が妻の育児休業開始より先行していないこと、後発となる夫の育児休業は「子の1歳到達翌日まで」に開始されたものであることとなっています。したがって妻の育児休業の初日前に夫の育児休業の開始予定日があるような場合はパパママ育休プラスの対象とはならないのでご注意ください。またパパママ育休プラスの適用があった場合でも、前述の「雇用の継続のため特に必要と認められる場合」の1歳半までの育児休業の取得は可能です。



 子育て期間中の働き方の見直し

 また育児休業を取得しない労働者に対して事業主が講じなければならない措置についてワークライフバランス観点から義務化したものがあります。それが「所定外労働の免除(16条の8)」「勤務時間の短縮(23条1項)」です。従来はこれは努力規定であり、事業主におしつけるものではありませんでした。しかし育児休業を取得しないから育児に参加しえないというのは趣旨から外れるため、そういった者についても育児に参加する機会を増やすことを事業主に要請した規定といえます。この措置は育児休業対象の子のみならず「3歳未満」の子を養育する労働者が対象となっています。従って育児休業終了後も、事業主にこの規定を使う旨請求すれば、労働者は育児に参加できる機会を得られることになります。義務化されたことに伴い、これらを労働者が請求した場合、事業主は拒否することは許されません。また請求する労働者としてもこれらの制度を適用する間の賃金については育児休業同様ノーワークノーペイの原則(会社によっては保証しているところもあるが法律では賃金確保までは求めていない)が適用されるため、収入とのバランスを考えながら請求することが必要となります。そこで育児休業とは異なり子が3歳に達するまでの間であれば、たとえば所定外労働の免除を受ける場合、適用期間(1回につき1月以上1年未満)を自分で区切って調整しながら「何度でも」請求できることになっています。



 またこれらの措置が義務化されたことに伴い、事業主が拒否した場合、男女雇用機会均等法と同じような裁判外個別紛争の対象となることになりました。努力規定であれば拒否したところで対象になりえませんでした。改正により事業主によるこれらの拒絶があった場合において当事者の自主的解決で解決できない場合、労働局長に紛争解決の助言・指導・勧告を求めることになります。それでも解決しない場合は調停となります。いずれも両者はもとより一方からの申請で行えるため、従来の努力規定から「育児に参加するための」非常に強い労働者の権利であるとともに、事業主にも次世代育成を強く意識づける規定になったといえるのではないでしょうか。(ただし常時100人以下の中小事業の場合の義務化は猶予され平成24年6月30日からとなっています)。

5日から10日へ 子の看護休暇制度

 子の負傷や病気のための看護が必要な場合、小学校へ入るまでの子を養育する労働者に対して年5日の休暇が付与されています。それを今回の改正においては小学校就学の始期に達するまでの子が1人であれば年5日、2人以上であれば年10日の看護休暇を取得できることとしました。子の人数が多ければそれだけ看護に手間がかかるという観点からの子育て支援というわけです。


 
育児休業等による賃金の低下を年金に反映させない方法

 なお、厚生年金被保険者である場合、3歳未満の子を養育する場合でこれらの措置を受けることで賃金が低下する場合で、支払う保険料については低下した報酬で算定(ただし育児休業期間中は免除になる)するものの、将来もらえる年金額については措置を受けていない時すなわち低下前の報酬を算定の基礎として計算してくれる特例(厚生年金保険法26条)もあるので、育児休業も含めてこれらの措置を受けて賃金が低下すると分かっている時には、予め、年金事務所へ出向いて従前標準報酬月額の特例適用(以下「従前額保証」という)の申出をしておいたほうが得策です。(事業主を通してするのが原則ですが保険料自体は変わらないため申出自体行われないことが多い)申出が遅れた場合、申出月前月から2年までしか遡及してくれないため、それよりも前の育児休業等については、低下した報酬で年金額が計算されることになりますのでご注意ください。




 なおこの従前額保証には退社後に3歳未満の子の養育を開始した場合にも適用されます。例えば、以前の会社を辞めた後で、3歳未満の育児の養育を始めたが、その後新たに就職した場合などが該当します。従前額保証で適用される標準報酬月額は原則では、育児休業等開始月の前月のものが用いられます。すでに以前の会社を辞めているのですから、前月に標準報酬月額そのものがないという方がほとんどだと思います。こういった場合育児休業等開始月前月の前1年以内の直近の標準報酬月額が従前額保証として用いられることになります。従って、会社を辞めてから1年内(離職月は月末退職以外は被保険者期間とされず標準報酬月額がある月とされないのでご注意ください)に3歳未満の子の養育を開始しないと従前額保証は適用されないことになります。
 適用されるならば、従前標準報酬月額の方が新たな就職先の標準報酬月額より高額であったとしても、年金額の計算においては、調整されることはなく、辞めた会社の高額な標準報酬月額で計算されることになりますので、例え会社を辞めてからの養育であったとしても必ず特例適用の申出はしておきたいところです。









ホームページへカエル
「最近の法令改正」目次にもどる
次のページ(日本の森林を救うため…「公共建築物木材利用促進法」の制定)へ進む