
「住宅瑕疵担保履行法」H21.10.1スタート
新築住宅の引渡しには安心を添えて
『保険への加入』または『保証金の供託』が必要となります

「そよ風」の前号では、100年の使用に耐える良質な住宅を推進するための「長期優良住宅法」(長期優良住宅の普及の促進に関する法律) について取り上げました。100年とはいわずとも、一般の新築住宅についても、最低10年の瑕疵担保責任(住宅の欠陥=瑕疵を売主・請負人が無料で補修等する)の期間が保証されています(「住宅品質確保法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)」そよ風105号参照)。
今回ご紹介するのは、この瑕疵担保責任を確実なものとするため、金銭的な保証システムを整えた新法「住宅瑕疵担保履行法」(特定住宅瑕疵担保責任の確保等に関する法律)です。
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平成17年秋、構造計算書偽装事件(いわゆる姉歯事件)が発覚しました。全国でいくつものマンションの建替え・大規模改修が必要となったものの、販売業者は結局倒産。マンションの住民は自分たちで建替え費用を負担せざるを得ませんでした。瑕疵担保責任をたとえ法律で定めても、実際に履行されなければ意味がない。そこで、新法の登場となったものです。

「住宅品質確保法」では、新築住宅を引き渡す際に、売主・請負人に対して、構造耐力上主要な部分(ここに欠陥があると家の強度が弱くなる)と雨水の浸入を防止する部分(右図参照)について、10年間の瑕疵担保責任期間を定めています(94条・95条)。
この責任を全うするため、1つは、特別な保険制度が創設されました(新法2条5・6項)。

新築住宅の売主・請負人となる建設業者・宅地建物取引業者は、着工前にこの保険契約に申し込む必要があります。保険金額は1戸あたり最低2000万円。そして、いざ瑕疵が見つかって補修したときには、その補修費のほか、必要な調査費や引越代・仮住居費など必要な金員が保険金として支払われます。そしてもし、当該建設業者や宅建業者が倒産するなどして補修しないときには、住宅の買主に保険金が直接支払われる仕組みです。
これを請け負うのは一般の保険会社ではなく、必要な資力や専門的な技能をも備えていると国土交通大臣が指定する特別な保険法人で、現在5つの法人が指定されています(新法17条)。保険料は、瑕疵担保責任期間(最低10年)分を一括して前納します。1戸建てで6〜9万円程度。支払うのは建設業者・宅建業者ですが、結局何らかの形で買主に負担が転嫁される可能性はあります。
着工前に保険契約を申込み、工事の途中で保険会社の検査員(建築士)が現場検査もしたうえで、保険契約を受けることになります(平成22年3月31日までは、非破壊検査等を受けることで着工・完成後の申込みにも対応する。保険料は割高)。

注文住宅なら請負契約書の中に、分譲住宅なら売買契約の際の重要事項説明書の中にこの保険契約の内容は明記され、建物引渡しの際には保険に加入している証明書などの書類が交付されますので、よくお確かめください。

さらに、この保険に加入している住宅についてトラブルが発生したときには、安価で迅速な処理機関の利用が可能です(新法33条)。各地の弁護士会が設置している「住宅紛争審査会」で、基本的に1万円の申請手数料を支払うだけで、専門家による斡旋・調停・仲裁を受けることができます(「住宅品質確保法」に定める住宅性能評価書が交付された住宅も同審査会を利用できる)。
もし、この保険制度に加入しないときには、一定の金額を法務局に供託する必要があります。
毎年、3月31日と9月30日の2回、建設業者・宅建業者は、免許を受けた国土交通大臣または都道府県知事に対して、過去6ヶ月に引き渡した新築住宅の戸数を届け出ます(新法4・12条)。このうち、前述の保険契約を結んだ戸数部分は問題ありませんが、それ以外の戸数については、対応した金額の現金・有価証券などを業者の最寄りの法務局に供託していなければなりません(住宅瑕疵担保保証金。新法3・11条。1戸なら2000万円、戸数が増えれば逓減する)。一度供託された金員は、瑕疵担保責任期間が明けるまで勝手に出すことはできません。
もし、この供託が規定どおりなされなければ、50日を経過した日以降、新築住宅の請負契約や売買契約を結ぶことは禁止されます(新法5・13条)。また、従わなければ業務停止となる場合もあります。

こうして瑕疵担保責任期間(10年)中の供託金が積み上げられ、もし期間中に住宅に瑕疵が見つかり、しかも業者が倒産したといった場合には、買主に優先的に還付されることとなります(ただし、損害賠償額を認めた判決などの債務名義や公正証書等が必要)。
供託についても、請負契約・売買契約の中にきちんと記載されることになっています。契約に際しては内容をよくお確かめください。
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新法の対象となるのは、平成21年10月1日以降引き渡される新築住宅(新たに建設された居住用の建物で、工事完了から1年以内で人が住んだことがないもの)です。工事遅延・売れ残り等、どんな理由であれ、引渡し日がこの日以降なら対象となります。一戸建て、分譲マンションはもちろん、賃貸住宅用に建てられた建物や会社の寮なども対象です。また、新築住宅とはいえ、別棟として増築・改築されるケースでも、本法の対象となる場合がありますのでご注意ください。
ただ、本法は消費者保護のための制度ですから、発注者・買主が宅建業者の場合は対象外となっています。


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