→→→国民目線の消費者行政に転換!!←←←
消費者庁が発足しました
消費者委員会の設置消費者安全法の制定
H21.9.1スタート

38年ぶりに新官庁発足「消費者庁」がお目見え


 平成21年9月1日から、「消費者庁」と「消費者安全委員会」が設置され、同時に関連法案である「消費者安全法」が施行されました。
 これまで各省庁にまたがっていた消費者行政(消費者の消費生活における被害を防止し、その安全を確保するための行政)を、新組織である「消費者庁」を設立して一本化し、同時に、お目付け役の監視機関として「消費者委員会」を設置して消費者行政の監視の徹底をはかります。そして「消費者安全法」は、国の行政機関における情報の収集に加えて、地方公共団体(消費生活センター)との連係による情報の収集等を行い、実質的に被害の防止・安全の確保の推進をはかろうとするものです。

消費者行政の司令塔「消費者庁」
     そのチェック機関「消費者委員会」

 「消費者庁」の任務は、消費者が安心して豊かな消費生活を営むことができるよう、消費者の利益の擁護及び増進をはかり、品質表示等を的確に管理することなどにより商品や役務(サービス)を消費者が自主的に合理的に選択できるようすることなどをその任務とするもので(「消費者庁及び消費者委員会設置法」3条・4条)、ひと言でいえば、これからの「消費者行政の司令塔」の任務を背負う官庁と位置づけられます。他省庁や地方公共団体に寄せられる消費者に関連する事故の情報を一元的に集めて分析し、関係省庁と協力して必要な対策をたて敏活に対応することが求められています。
 そして消費者庁と同格の存在として設置された「消費者委員会」は、すべて民間から登用される10人以内の委員で構成され、単なる諮問機関ではなく自発的に調査審議・建議もでき、内閣総理大臣に対して勧告等の権限をもつ強力な機関で、消費者行政全般を監視していく重要な役割を果たします(同法6・7条)。消費者庁の動きが鈍かったり動かなかったりしたときにおける行政への勧告や監督権限が期待されるものです。


消費者関連の法律を国民目線で実行する

 これまでわが国においては産業の育成ばかりに目が行き、消費者の目線でみることをしなかったとの批判が少なくありません。また、これまで国の消費者行政は各省庁の所轄分野ごとにバラバラに対応していました。そのため、冷凍ギョーザ事件やガス湯沸かし器の死亡事故等々、食品や商品の安全について対策が後手にまわり、被害の拡大を招いたとの反省もありました。そして規制法制が整っていない「すき間」事案の問題もあります。たとえば、こんにゃくゼリーによる幼児や高齢者の窒息死事故では、農林水産省の日本農林規格(JAS)法にも厚生労働省の食品衛生法にも適用法令がなく、対応の遅れを招きました。
 このたび、消費者庁が具体的な立入り調査や業務停止権限等を行使する官庁として発足するのは、これまでの姿勢の転回点として試され期待されるところです。

 消費者庁は、国民生活に密接にかかわる約30の法律を、主管または共管(消費者庁以外の省庁も関係する)の形で所管し、消費者行政をコントロールします。主な所管法令は次のようなものです(※は、これまでその法律についてそよ風で取り上げた号数)。

<表示について>
<取引について>
<安全について>

 また、消費者法令の性格がありながら、消費者庁に共管せずに各省庁に残る法令もあります。たとえば、医薬品の無許可販売の取締り(厚生労働省に)など。しかしこれらも、消費者被害の発生・拡大が懸念されるときには、必要な措置をすみやかにとるように当該担当大臣に要求できることとなります。
 さらに、法規制の及んでいない「すき間」事案に対しても、消費者庁自ら業者を指導したり、重大事故等にかかわるものとして商品回収命令を出したりすることでカバーすることになります。

事故情報を一元管理
     迅速的確な措置をとる

 この消費者庁の活動を実質的に裏付けるものとして位置づけられるのが、「消費者安全法」です。


 この法律で内閣総理大臣は、消費者安全の確保に関する基本的な方針を定めるものとしました(「消費者安全法」6条)。そして都道府県及び市町村は、消費者の苦情相談に応ずることが義務づけられ、この事務を行なうために、都道府県は消費生活センターを設置するものとされ、市町村は設置するように努めなければならないものとされました(同法8・10条)。早くも消費者庁に対応して、自治体において消費生活相談の窓口を強化する動きが伝えられています(京都府は、平成21年7月末に、府・市町村職員や弁護士らで構成する「消費者あんしんチーム」を立ち上げた。神戸市は、同年9月から、消費者問題の専門家を養成する「神戸コンシューマー・スクール」を開講する)。
 行政機関の長、都道府県知事、市町村及び国民生活センターの長は、消費者事故等が発生した旨の情報を得たときは、直ちに消費者庁(内閣総理大臣)に通知しなければなりません。こうして集約された情報を消費者庁は分析して関係行政機関の長等に提供するとともに、消費者安全委員会及び国会に対して報告し、公表しなければならないことにされました(同法12・13条)。


 そして消費者庁には、消費者被害の発生・拡大の防止のために、次のような措置をとることが義務づけられます。

(1) 消費者への注意喚起(同法15条)
 消費者事故等の態様、被害の状況、その他消費者被害の発生または拡大防止に役立つ情報を公表。
(2) 担当省庁への措置要求(同法16条)
 消費者庁とは別の省庁の所管法令による措置が必要なときには、事務を所管する大臣に対して当該措置の速やかな実施を求める。
(3) 事業者に対する勧告・命令(同法17条)
 商品または役務等が、消費安全性(通常見込まれる状態・頻度で使用したとしてその商品等が通常有すべき安全性)を欠くことにより重大事故等(死亡または1ヶ月以上の加療を要する障害や疾病など生命身体の重大な事故。同法2条6項)が発生した場合には、たとえ「すき間」事案で規制する法律がないケースについても、事業者に対し被害の防止等につき必要な措置(点検・修理・改造等々)を勧告し、正当な理由もなく従わないときには命令する。命令に違反した場合は罰則(1年以下の懲役もくしは100万円以下の罰金、または併科)。
(4) 譲渡等の禁止または制限(同法18条)
 商品等が消費安全性を欠くことによって重大事故等が発生し、かつ、被害が拡大し、または原因を同じくする重大事故等が発生する急迫した危険がある場合には、その発生・拡大を防止するために必要があるなら、事業者に対し、6ヶ月以内の期間を定めて、商品等の譲渡・引渡し、使用を禁止または制限することができる。この禁止・制限の命令に違反した場合は罰則(3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、または併科)。
(5) 回収等の命令(同法19条)
 事業者が前記(4)の禁止または制限に違反した場合には、製品の回収をはかること、その他重大消費者被害の発生・拡大を防止するため必要な措置をとるよう命令することができる。命令に違反した場合は罰則(3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、または併科)。

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 今法は、平成21年6月5日の公布からわずか3ヶ月にも満たない準備期間での見切り発車となりました。拙速でのスタートですが、これから着実に歩を進めることが期待されます。本法は、施行後3年以内の検討・見直しが予定されています。




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