犯罪被害者・遺族の苦境……
こんな支援制度もあります

犯罪被害者等給付金
国選被害者参加弁護士
犯罪被害者支援法・保護法等の改正



 前号のそよ風では、人の生命・身体・自由に被害を及ぼす重大な犯罪について、被害者等が刑事裁判に参加できる新たな制度ができたことをご紹介しました。今号では、さらにこうした被害者を支えるための制度として、最近、改正・創設された制度をいくつかご紹介しましょう。

犯罪被害者給付金――大幅にアップ

 本来、犯罪によって引き起こされた被害は、加害者にこそ損害賠償の責任があります。しかし、犯人がわからないあるいは捕まらないとき、また、犯人に賠償する資力がないとき、代わって国が一時金を支払う制度があります。それが「犯罪被害者等給付金」です。
 国が被害者を経済的に支援するため昭和56年(1981年)にスタートしたものです。その趣旨から、親族間の犯罪や被害者にも非がある場合には原則として支給されません(6条)。また、自賠責保険(自動車事故に適用)や労災保険(労働災害に適用)など他の制度で給付が行われるときや、加害者等から損害賠償を受けたときにも、その限度で支給はなされません(7条)。
 この給付金には、大別すると、被害者が死亡したときに支払われる「遺族給付金」と、被害者が後遺障害を受けたときに支給される「障害給付金」があり、いずれも平成20年夏に大幅に最高額が引き上げられました。
 「遺族給付金」については最低320万円〜最高1573万円を、最高額2964万5000円へと約2倍に引き上げられています。とくに、被害者が抱えていた扶養家族の数に配慮することとし、扶養家族が多かった遺族には手厚い給付がなされます。新基準は、上図のとおりです。たとえば、45歳で扶養家族が4人いたなら、従来は、被害者の生前の収入の額により、最低559万円〜最高1508万円のいずれかの額でしたが、改正により、1960万円〜2842万円と大幅アップしています。
 「障害給付金」については後遺障害1級〜14級の被害者に対して、最低18万円〜最高1849万2000円の範囲で支給されていました。昨夏の改正により、とくに1〜3級の重度障害に対しては1056万円〜3974万4000円で手厚くし、最高額は2倍以上に引き上げられています。また、収入が少ないため低額となりがちな若年層への支給にも配慮しました。たとえば、20歳未満で常時介護を要する1級のケースでは、従来は約482万円〜約710万円にとどまっていましたが、現在は2188万8000円と3倍以上に大幅に引き上げられています。
 これら給付金とは別に、「重傷病給付金」といって、保険医療費の自己負担分を支給する制度があります。対象となるのは、3日以上の入院(精神疾患の場合は3日以上の休業)を要し、しかも1ヶ月以上の加療が必要なケースで支給されるものです。この医療費の補助に加えて、改正により、休業損害の一部も給付されることとなりました。ただし、「重傷病給付金」の上限は120万円です。
 こうした給付金を請求するには、事件を扱う警察署に各申請書を提出します。ただ、被害を知った日から2年以内、または、被害が発生した日から7年以内に申請しなければなりません。この時効の規定には例外がなくきびしいものでしたが、これも改正により、身柄が拘束されていたなどやむを得ない理由がある場合に限り、その理由がなくなった日から6ヶ月以内なら請求ができると、例外の規定が盛り込まれました(10条3項)。
 なお、この制度の根拠となっている法律の名称も改正され、「犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律」(略称:犯罪被害者支援法)と改められています。
 同法は、平成20年7月1日から施行されました。新法が適用されるのはこの平成20年7月1日以降に発生した犯罪に対してで、それ以前の犯罪については従来の規定が適用されますのでご注意ください。

資力がない被害者参加人に国費で弁護士をつける

 さて、刑事裁判への被害者参加制度が平成20年12月1日からスタートした(そよ風156号)のに伴い、被害者参加人はこの手続きを弁護士に依頼することができます。
 刑事裁判では、被告人(犯人として起訴された人)に資力がなく弁護士に依頼できない場合、国費で弁護士を付ける制度があります(国選弁護人制度)。そこで、被害者参加人にも、資力がなければ「国選被害者参加弁護士」を付けることができる制度がスタートしています(平成20年12月1日施行。「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律」及び「総合法律支援法」の一部改正)。
 資力の基準は、被害者参加人の保有する預貯金の額から、3ヶ月以内に必要になる見込みの医療費や付添看護費・入通院の交通費等、被害で直接生じる支出を控除し、その残額が150万円に満たないときには、国費での弁護士を請求できるものです。
 手続きは、法テラス(日本司法支援センター。TEL0570−078374=「おなやみなし」。そよ風143号参照)で行います。法テラスでは、被害者・遺族に希望を聞き(希望する特定の弁護士がいるか、性別や年齢等の希望があるかなど)、候補となる弁護士を裁判所に通知して、国選被害者参加弁護士が決定することとなります。




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