いよいよ本番!
株券電子化H21.1.5スタート
あなたのタンス株は大丈夫!?
〜株券等決済合理化法の施行〜



いよいよ、株券は電子化されました。テレビなどでさかんに、”タンス株”をお持ちの方は急いで手続きをと呼びかけていましたが、あなたは大丈夫でしょうか。
「つい忙しくて…」「今ごろになって株券が見つかった…」実は、放置していたあなたの株券は、平成21年1月5日を境に、ただの紙切れになっているのです。とはいえ、一概に心配はご無用!まずは、制度の簡単な説明から始めましょう。

株券の所持でなく
   データ記録だけで管理

 株式のペーパーレス化は、実のところ、すでに平成3年(1991年)春から始まっていました。株の売買を大半の人は証券会社を通じて行い、その際、株券は証券会社の保護預りにします。そうすると基本的に、株券はすべて、日本で唯一の保管振替機関である「株式会社証券保管振替機構」(通称:ほふり)の名義に書き換えられ、株券自体はそこで混蔵保管されました。大半の株主は、実際の株券の所持者ではなくなっていたわけです。以後、売買・担保等すべての取引は、ほふりで帳簿上の振替操作が行われ処理されていました。こうした株券は平成16年時点ですでに全体の約7割に達していました。
☆ 振替
簿記の用語で、実際の金銭の出入りは伴わず、
ある勘定の金額を他の勘定科目に
転記する処理のことをいう。
 そして平成16年に「株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律」(株券等決済合理化法)が制定され、4年半に及ぶ準備期間を経て、いよいよ今回、平成21年1月5日より、すべての上場会社の株券が電子化されたものです。
 これまでは、株式の名義にかかわらず、株券の所持者に権利がありましたが、これからは、データ上記録されている人が株主としての権利を有していると推定されることになります。ペーパーレス化に伴い、膨大な株券の発行・流通のための費用は不要となり、株券の紛失・盗難・偽造等の危険もなく、株の管理・取引が効率的に行えると期待されて実施されたものです。

株券の名義があなたになっている場合は……

 さあ、肝心のあなたの”タンス株”の話に戻りましょう。
 まず、お持ちの株券の裏面に書かれている最後の名前をご確認ください。この株式名義があなたになっているなら、まずは安心です。
 各上場会社は、その会社の株式事務を取り扱う信託銀行に「特別口座」を開設して、これらタンス株主の権利を確保しています。近日中に、あなたのもとにも、この特別口座を作った旨の通知が会社から届くはずです。
 もし、株を売買するつもりがないなら、このまま放置していても何ら問題ありません。これまでどおり、配当や株主優待を受けることも当然できます。
 でも、もし売るつもりなら、証券会社に自分の口座をつくる必要があります。ほふりを介さなければ、株の売買はできないからです。特別口座からその口座に移すため、売ると決めてすぐの売却は難しいかもしれません。
 ところで、株の名義は確かに自分だけれど、そういえばここ数年、株主総会の通知など届いていないな…と思うあなた!住所変更の手続きを忘れていませんか。上場会社の中には、今回の株券電子化に先立って、所在不明の株主の株を買い取る手続きをしたところもあります。5年以上にわたり登録住所への通知が届かない株主について、自社のホームページなどで公告したあと、時価で自社が買い取り、その金額を取扱信託銀行で保管しているのです。この場合には、あなたの株はもうありません。保管されているお金を受け取ることができるだけです。しかも、保管は「10年」という時効がありますので、今度は放置しないようご注意ください。心当たりのある方は、まずは会社に確認されることをおすすめします。

もし、株券の名義が他人のままなら……

 次に、株券の名義があなたでない場合はどうでしょう。その場合も、同様に、その株券の名義で、上場会社の事務を取扱う信託銀行に特別口座が設けられています。
 もしそれが相続で入手した株券で、自宅に故人の名前で総会通知などが届いているなら、これもひとまず安心です。ただ、自宅に通知が届いていないなら、前述と同様の買取手続きがなされている場合があります。いずれにせよ、あなたに名義を変えるためには、電子化以前と同様、相続を証明するために、戸籍謄本類や遺産分割協議書などを添えて手続きをすることが必要です。くわしくは、その上場会社の株を扱う信託銀行にお問い合わせください。
 さて、売買等で株券を入手し、名義を書き換えず放置していたあなた!あなたが一番問題です。名義株主が、あなたに無断で、自分の名前でつくられた特別口座から証券会社の取引口座に移動させて、第三者に転売することも可能なのです。
 しかし、困難ながらも、いくつかの救済策があります。
 まずは、電子化実施後1年間だけの特例措置です。お手持ちの株券と、電子化前に買ったことを証明する書類(受渡証明書等)を提出して、当該信託銀行で手続きしてください。あなたにとっては株券はただの紙切れではありません。必要不可欠な証拠書類です。1年の期間を有効にお使いください。
 もし、名義株主が協力してくれるなら、名義株主と株券所有者であるあなたが共同で信託銀行に手続きすることもできます。これには期間制限はありません。
 それもできないとなると、これは裁判所で判決や和解調書をもらってはじめて手続きができることになり、きわめて困難な事態に直面することになります。




ホームページへカエル
「最近の法令改正」目次にもどる
次のページ(「犯罪被害者給付金制度の改正・国選被害者参加弁護士制度の導入」)へ進む