!!!!あきらめるのはまだ早い!!!!
振り込め詐欺救済法の制定
〜H20年6月21日スタート〜
犯行口座を凍結・失権し、被害者に分配

気が付いても後の祭り
     取り戻すのはさあ大変!


典型的な振り込め詐欺の四類型
◆オレオレ詐欺・恐喝
 電話を利用して親族を装い、交通事故の示談金借金返済
・トラブルの解決金頭の名目で、お金を預金口座に振り込ま
せる方法でだまし取ったり脅し取る。最近は、暴力団員や警
官・弁護士に扮する人物など複数が登場し、役割分担して
信用させ、手口が巧妙化している。
 [被害者の7割は女性で、60歳代の女性が全体木3割を
占める]

◆架空請求・恐喝
 手紙・ハガキやインターネット等を利用して、不特定多数の
者に、ありもしない事実(アダルトサイトを利用した・債務不履
行で裁判が起こされているので取下げには至急お金がいる
等々)を並べて料金やお金を請求して、現金を預金口座に
振り込ませる方法でだまし取ったり脅し取ったりする。
 [被害者の6割は20〜30歳代の男性]

◆融資保証金詐欺
 低額融資をするという触れ込みで、申し込んできた者には
とりあえず保証金等を払うよう指示し、お金を預金口座に振
り込ませてだまし取る。
 [被害者の4割は30〜50歳代の男性]

◆還付金詐欺
 税務署や社会保険事務所等を騙(かた)り、税金等の還付
をするからとATMの前で携帯電話を通じて指示を与えて操
作させ、実は口座間送金をさせてお金をだまし取る。
 [被害者の7割が女性で、50歳代以上の女性が全体の6
割]
※手口はますます巧妙に──
  「私は大丈夫」の過信は禁物!
  最近では、この新法を利用した新手の還付金詐欺が、
  早くも発生しています。

 オレオレ詐欺や架空請求…アッ、だまされたと気が付いたときには、すでにお金は他人の口座に振り込んだ後です。一旦、他人の口座に入ってしまえば、たとえ金融機関がその口座をすぐに凍結してくれたとしても、お金を取り戻すのは大変でした。
 預貯金は口座名義人の財産ですから、勝手に金融機関がお金を出すことはできません。しかも、複数の被害者がいるかもしれず、どんなルールで返すのかを金融機関が勝手に決めることもできません。そのため、被害者がお金を取り戻すには裁判手続きを経なければならず、知識や費用がかかり厚い壁となっていました。こうして凍結されたまま被害者に返還されることなく滞留しているお金は実に80億円(平成19年3月末)とも言われています。
 そこで、振り込め詐欺等の被害者に当該口座からお金を取り戻すための特別なルールを定めた新法、「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」(振り込め詐欺救済法)が作られ、平成20年6月21日より施行されました。

簡易な手続きで被害者を救済するルールを制定

 新法で救済の対象となるのは、右表のような典型的な振り込め詐欺だけに止まりません。たとえばインターネットオークションを利用した詐欺やヤミ金など、被害者からの預貯金口座への振込を利用した犯罪が広く対象となります(2条3項)。ただし、同じ詐欺でも、現金が直接受け渡された場合やバイク便・宅配便などが利用されたものは本法の対象外です。
 さて、もし、被害にあったと気が付いたら、まっ先に、振込先の金融機関に連絡しましょう。と同時に、警察にすぐに被害届けを出しましょう。
 金融機関では、通報を受けて、犯罪の疑いがあると、すぐにその口座を取引停止等にします(3条1項)。さらに、(1)警察等からの情報、(2)それに基づいた被害状況の調査、(3)名義人の住所への連絡等による調査、(4)口座の取引状況などから総合的に判断して、犯罪に利用された口座であると疑う相当な根拠があるとなれば、その口座についての権利を消滅させる手続きを進めることになります。
 具体的には、預金保険機構「ことば欄」参照)が、インターネット上でこれらの口座の情報(金融機関名・支店名・種類・口座番号・名義人・残高等)を公開し、60日以上の期限を設定して、口座に権利をもつ人は期限内に届け出るよう促し、この期間に届出がなければ口座名義人の権利を消滅させるというものです(5〜7条)。犯罪者は当然申し出てきません(逮捕される)から、口座の権利は失われることとなります。

失権したお金は金融機関の責任で被害者に分配 

 そして次に、この口座のお金を被害者に分配する手続きに入ります。やはり、預金保険機構が、今度は、被害者は当該金融機関に支払いを申請する手続きを一定の期間(30日以上、実際には約2ヶ月)内にするようにとの公告をインターネット上に出します。この期間内に申請のあった被害者に対して、金融機関が責任をもって口座のお金を分配するものです(11〜16条)。
 口座の権利を消滅させるための第1回の公告は、すでに平成20年7月16日に行なわれ、約6000もの口座が現在公告されています。今後も原則として毎月1日と15日に公告がなされる予定です。第1回分の権利が消滅するのは平成20年10月1日の予定で、被害者が支払申請をする期間は同年10月17日から12月16日までとなります。
 こうした公告はすべてインターネットで行なわれますが、パソコン等が使えなくても大丈夫!振込先の金融機関に被害を申し出ていれば、支払の手続きは個別に連絡が行なわれます。
 法律ができる前の被害だから……とあきらめている方はいらっしゃいませんか。これも大丈夫!これまでに金融機関が凍結した口座が一斉に公告の対象となっています。あなたが振り込んだ口座がないか、よーくお確かめください。過去の被害もこの新法で救済されます。
 支払申請は、申請書に必要事項(被害にあった状況や被害額、分配金の振込先等)を記入し、振込明細書の写し等を添えて(紛失した場合でも申請は可能)、振込先の金融機関に提出します。振込を行なった金融機関を通じて提出することも可能です。申請手数料等もかかりません。金融機関の窓口では親切に教えてくれるはずです。心配はご無用。まずはお尋ねください。たとえ被害者であっても、申請期限内に手続きをしなければ支払いの対象とはなりません。本法は適用されず、自力で犯人に対して民事訴訟を起こすほかありません。

分配金は被害額に応じて按分

 こうして、期間内に集まった被害者からの支払申請をまとめて整理し、分配金が決まります。当該口座のお金が申請額より多ければ、もちろん全員に満額返ってきます。しかし、足りなければ、被害額(一部弁償されている場合は残額)に応じて分配されることになります。分配される金額が決まれば、金融機関から個別に書面が送付されます(14条1項)。
 ちなみに、口座の残高が1,000円未満の場合は、残念ながら被害者への分配手続きはなされませんのでご了解ください。また、分配して残ったお金や支払申請がなされないなど分配されなかったお金については、預金保険機構に納付され、一部は口座名義人からクレームがついた場合のためにストックされ、残りは犯罪被害者等への支援金として支出されることとなります(20条)。
*     *     *

 振り込め詐欺等を防止するためには、口座開設時の本人確認を強化し、口座の売買を禁止して違反者に刑事罰を科すなど、さまざまな法的取り組みを行なってきたところです。しかし被害は後を絶たず、ATMを利用した還付金詐欺に対処するため、ATM近辺では携帯電話の使用を禁止する動きもあります。また、ATMでの出金を監視するためマスクやサングラスをはずすよう求めたり、ATMでの不審な動きがないか行員の見回りや警官の立ち寄りも強化されています。
 用心が第一!振り込む前にもう一度落ち着いて、一人で即決せず、家族や周りに相談して慎重にお考えください。

<ことば欄>
☆預金保険機構
 金融機関から預金保険料を預かり、万が一金融機関が破綻した場合、一定額の保険金を支払うことで預金者を保護する組織。預金保険料は、金融機関の前年度の預金量などに応じて、毎年強制的に納付が義務づけられる。預金保険の対象となる預金は、全額保護される当座預金等と元本1000万円とその利息のみが保護される普通預金や定期預金等の別がある。外貨預金など保護の対象とならない預金もある。
 ちなみに、保険会社には「保険契約者保護機構」が、証券会社には「投資者保護基金」がそれぞれ設立されている。




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