それ以外の第三者が交付請求できるのは、次の3つの場合のみです。
- (1) 自己の権利・義務を果たすために必要があるとき
- 権利・義務の発生原因、内容、戸籍の確認を必要とする理由を明示する。
- (2) 国や自治体に提出するため
- どこに提出するか、提出が必要とされる理由を明示する。
- (3) その他正当な理由があるとき
- 利用の目的と方法、なぜ利用する必要があるかを明示する。
たとえば、結婚相手の戸籍を確認するとか、取引相手に破産・後見といった問題がないか戸籍で確認するといったことは、右のいずれにも該当しないと考えられ、交付を受けることはできません。他方、結婚詐欺による損害賠償請求のために相手の戸籍を確認するとか、財産隠しによる被害を立証するため譲渡人と譲受人の親族関係を確認するといったケースでは、認められると考えられます。
表 職務上の請求が可能な有資格者
1 弁護士
2 司法書士
3 土地家屋調査士
4 税理士
5 社会保険労務士
6 弁理士
7 海事代理士
8 行政書士
(各法人を含む)
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- C 弁護士等有資格者による職務上の請求と公用請求
- 右表の8つの有資格者は、受任した事件・事務の中で必要となった際には交付請求ができます。また、国や自治体等も、公用事務で必要なときには交付請求ができます。ただ、いずれの場合も、平成20年5月からは従来より厳格な取扱いが行われています。
次に、どういう方法で交付請求されるかによっても、手続きが異なります。
- ◆請求者本人が窓口に出向いて請求するとき◆
- 本人であることを確認するものを持参しなければなりません。免許証やパスポートなど写真付の公的な証明があればそれを、もしなければ健康保険証や年金手帳などを二種類提示する必要があります。

- ◆請求者本人ではなく、代理の人が窓口に出向く場合◆
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請求者本人が確かに委任したという委任状の提出が必要です。そして、窓口に出向いた人は、その本人確認のために、自分自身の免許証等、前述の証明書類を持参しなければなりません。
- ◆郵便で交付請求する場合◆
- 同じく請求者本人であることを証明するために免許証等のコピーを同封し、送付先を住民票記載の現住所にしなければなりません。
このように、戸籍謄本や住民票の交付申請においては、きびしい本人確認の措置がとられることになります。
さて、不正な戸籍の届出がなされないために改正された点は以下のとおりです。
「結婚」「離婚」「養子縁組」「(養子縁組の)離縁」「(父による子の)認知」の5つの届出は、原則として、窓口に出向く必要があります。
その際、本人でも、本人確認のための同様の書類を持参しなければなりません。また、代理人の場合は、代理人自身の本人確認書類を持参します(委任状は必要なし)。
そして役所では、届出を受理した後、窓口に出向かなかった当事者がいる場合(たとえば、代理人が届を出した場合や夫婦の一方だけが離婚届を出しに来た場合など)、窓口に来なかった当事者に、届出を受理した旨を通知することとなります。
さらに、不正な届出を防止するため、あらかじめ不受理申出をすることもできるようになりました。
たとえば、離婚をめぐってもめているとき、一方的に離婚届がなされるのを防ぐために、役所に離婚届の不受理申出があらかじめできるという制度が、従来からもありました。しかし、これは有効期間(6ヶ月)もあり、限定的なものでした。
今回導入された制度は、上記の5つの届出すべてについて、本人が窓口に出向かない限り受理しないようにと、あらかじめ申し出ることができるもので、有効期間もありません。この不受理申出をしておけば、本人が知らない間に誰かが届出をしても受理されることはなく、しかも、こうした届出がなされた旨は本人に通知されます。
ただし、この不受理申出の手続きは、必ず本人が役所の窓口に出向く必要がありますのでご注意ください。
<不受理申出用紙PDF文書>
一旦、戸籍に不正な届出がなされてしまった場合には、その戸籍を訂正するには、家庭裁判所での煩雑な手続きが必要となります。離婚や将来の相続などをめぐってもめていたり、不正な届出が懸念される場合には、この制度を利用されるのが一番です。
ちなみに、戸籍謄本等の交付申請をめぐって不服がある場合には、当該市町村役場の所在地を管轄する法務局・地方法務局にまず審査請求をすることとなります。
<ことば欄>
☆ 血族
血筋のつながっている血縁者のグループを「血族」という。ただし、血筋がつながっていなくても「養子」は、法律上、血族とされる。血族には「直系血族」と「傍系血族」があり、直系というのは、自分を中心にして直接上下の関係にある者(祖父母、父母、子、孫など)をいい、傍系というのは、直系の者から枝分かれした系統にある者(兄弟姉妹、おい・めい、おじ・おば、いとこなど)をいう。


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