”パート”だからって……
区別はいいけど、差別はしないで!!
「パートタイム労働法の改正」〜H20.4.1施行〜
正社員への転換を進める



増大するパートと深刻な待遇格差――



 短時間労働者(パートタイム労働者)は、いまや、わが国の労働力の4分の1(1200万人余)に達しています。これらのパートタイム労働者にとって、正社員との待遇の格差は大きな問題となっています。その格差は、契約期間の有無、賃金(基本給・ボーナス・退職金等)、教育研修、昇給・昇進などに及び、その生活設計・人生設計への足かせになるケースも少なくありません。当初、パートタイム労働者は、女性労働力の流動化のきっかけとなりましたが、その後、男女を問わない大量の人材派遣、短期・臨時雇用の増加など、正社員と非正規社員の「身分」化等が大きな社会問題となっています。
 すでに、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律パートタイム労働法)」は、平成5年に制定されていますが(そよ風68号参照)、そのときは、事業主に労働条件の明記(6条)や就業規則作成の際の意見聴取(7条)に「努める」ことを求めたにすぎません。このため、平成418年から19年にかけて、労働政策審議会で検討が重ねられ、このたびの法改正となったものです。

待遇改善!
 正社員への転換推進!

 改正パートタイム労働法では、「義務」として、事業主が措置しなければならない事項をさまざまに定めました。

(a) 労働条件の文書による明示(6条)
 雇入れに際して、事業主は労働条件を明示することが義務づけられています(労働基準法15条)。「契約期間」「仕事場所と内容」「始業と終業時刻、時間外労働の有無、休日と休暇」「賃金」などは文書で明示する必要があります(違反すると30万円以下の罰金)。
 本法では、これに加えて、パートタイム労働者に対しては、「昇給の有無」「退職金の有無」「ボーナスの有無」についても、文書で明示することが義務づけられました(指導に従わないときは10万円以下の過料、47条)。
(b) 正社員等と同一視できるパートには一切の差別的取扱いを禁止(8条)
 (1)業務内容や責任が正社員等と同じで、(2)異動(昇進・転勤等)の有無とその範囲も正社員等とずっと同じ、そして、(3)契約期間も定められていない(契約の更新を繰返すなど実質的に無期契約となっている場合を含む)なら、たとえパートタイム労働者であっても、その待遇について、一切差別的取扱いをしてはなりません(この対象となるのは全体の4〜5%の見込)。
 たとえば基本給について、こうしたパートは正社員と1時間当たりの金額は同額にしなければなりません(成績評価による差はOK)。諸手当・賞与、福利厚生、退職金、休暇、解雇基準等々、すべての取扱いで差を設けることはできません。
(c) 一般のパートの待遇も改善すること
 次の各項目について、罰則はないものの、改善することあるいは配慮することが義務づけられました。
<福利厚生施設>(11条)
 「更衣室」「休憩室」「給食施設」については、パートも利用できるよう配慮すること。
<教育訓練>(10条)
 職務上必要な技能を身につけるための教育訓練は正社員等と同様に実施することを義務づけ。ただし、キャリアアップのための訓練などは、その能力・意欲等に応じて実施するよう努力すること。
<賃金>(9条)
 正社員等との均衡に配慮すること。また、主観的な決定やパートだからの画一的・一律の決定はダメ。その働き・貢献に応じて決定するよう努めること。
(d) 正社員への転換推進措置を義務づけ(12条)
パートから正社員への転換を進めるために、次の3つのいずれかの措置をとることが義務づけられています。

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 これら待遇の改善のために考慮した事項については、パートタイム労働者からの求めに応じて説明する義務があります(13条)。
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 このほか、改正法では、苦情・紛争の解決のため仕組みが整備されました(4章)。事業主には、パート労働者から、労働条件の文書交付や待遇の差別的取扱い、正社員への転換措置等についての苦情を受けたときは、自主的な解決を図ることが努力義務となります。それでも解決できない場合には、(1)都道府県労働局長に援助を求めて必要な助言・指導・勧告をしてもらうことができ、あるいは、(2)必要があると認められるときには「均衡待遇調停会議」(学識経験者などの専門家で構成される第三者機関)で調停が行われることとなります。なお、(1)・(2)の援助や調停を求めたことを理由として、解雇等の不利益処分をすることは当然禁止されています。

今法の対象となる「パートタイム労働者」とは?……
 「パート」「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」等々、呼び方は問いません。1週間の所定労働時間が、同一事業所の正社員等に比べて短い労働者は、パートタイム労働者として、すべて、本法の対象となります。
 逆に、正社員と同じ時間働く、いわゆるフルタイムパートについては、この法律の対象となりません。参議院の厚生労働委員会では、フルタイムパートについても改正法の趣旨が考慮されるべきであると「附帯決議」をしています。
 本法の対象となる短時間労働者にとどまらず、派遣社員、フルタイムパート、偽装請負等々、非正規社員の増大とその不安定な身分は社会問題となっています。わが国の将来も懸念される大きな問題だけに、労働法制全般にわたる見直しが必要な時期が来ているのではないでしょうか。




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