〜DV法の改正〜
保護命令を拡充
深刻な脅迫にも発令可能
電話も禁止!親族も保護!
H20.1.11施行



DVは犯罪です!
  保護命令で被害者を守る


 「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律DV法)」が平成13年10月にスタートしてから6年が経過しました。同法は、これまで3年ごとに見直しが行われています(そよ風113133 号参照)。
 つい先頃まで、夫婦間の暴力は「夫婦げんか」として軽視され、深刻な事態も放置され見過ごされてきました。同法の成立以来、夫婦間のDVもれっきとした犯罪であるという認識は、近年急速に広まりました。とはいえ、まだ現実にDVがなくなったわけではなく、改善すべき点は多く残されています。
配偶者暴力について出された「保護命令」の件数
発令
件数
合計
(1)被害者に関する保護命令
のみ発令された場合
(2)「子への接近禁止命令」
が発令された場合
@
退去命令
と接近禁
止命令の
双方

A
接近禁止
命令のみ



B
退去命令
のみ



@
退去命令,
被害者へ
の接近禁
止命令と
同時
A
被害者へ
の接近禁
止命令と
同時

B
事後的な
子への接
近禁止命


平成13年12332910
平成14年1,1283267984
平成15年1,4684061,0584
平成16年1,7175541,098517385
平成17年2,141190730432288312
平成18年2,20816671083469744
合 計8,7851,6744,485256851,89521

 今回大きく改正されたのは、「保護命令制度を拡大充実させることです。
 「保護命令」とは、裁判所の決定によって強行措置をとることができる制度で、これに従わなければ、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されるという強い権限をもったものです。
 従来からあった保護命令の種類は、(1)6ヶ月の接近禁止命令(2)2ヶ月の住居退去命令(3)子への6ヶ月の接近禁止命令の3種類でした。

過去に暴力はなくとも…脅迫あれば保護命令可能

 今回の改正では、まず、種類を問わず、保護命令全体の要件が大きく広げられました。
 これまでは、配偶者(内縁関係及び離婚直後を含む)から実際に暴力を受けており、このままでは生命・身体に重大な危害のおそれがあるときに限って、保護命令が出されていたものです。改正により、これに加えて、過去に暴力をふるわれたことはないが、現に生命等にかかわる脅迫を受けており、このままでは生命・身体に重大な危害のおそれがあるときも、保護命令の対象となることとしました(10条1項)。
 たとえば、「ぶっ殺してやる」「腕をへし折ってやる」「ぶん殴ってやる」などの言動を受けている場合は脅迫とみなされ、この脅迫が現実に重大な危害にエスカレートする可能性があるか否かについては、裁判所において個別具体的に判断されることとなります。

執拗な電話等も禁止
   ・親族等へも接近禁止

 保護命令の種類も、2種類追加されました。

(a) 電話等禁止命令(10条2項)
 (1)6ヶ月の接近禁止命令が出ているときに、さらに加えて、電話等による執拗な行為をも禁じるもの。禁止されるのは下表にあげた8つの行為です。
表 電話禁止命令により禁止される行為
1 面会を要求すること(電話・手紙・FAX・メール・掲示板への書込等あらゆる手段を含む)
2 行動を監視している旨(いついつどこにいるかを見ていたぞ等)を告げること等
3 著しく粗野または乱暴な言動をすること(電話での罵声・暴言,汚い言葉で非難する手紙やメール等)
4 無言電話または連続しての電話・FAX・メール(緊急やむを得ない場合を除く)
5 夜間(午後10時〜午前6時)の電話・FAX・メール(緊急やむを得ない場合を除く)
6 汚物・動物の死体等著しく不快・嫌悪の情を催させる物の送付等
7 名誉を害する事項(勤務先はお前の男性遍歴を知ってるのか,嘘つきで職場でも嘘ばかりついている等)を告げること等
8 性的羞恥心を害する事項(夫婦間の性交渉の話等)や性的羞恥心を害する文書・図画等(ヌード写真に被害者の顔を貼る等)の送付等

 こうした行為があると、せっかく接近禁止命令があっても、「このままではいつまでも嫌がらせをされるのでは」「もっと怖い目にあわされるのでは」といった恐怖心から、結局会うことを強要されるおそれがあることから追加されたものです。
(b) 親族等への接近禁止命令(10条4項)
 (1)6ヶ月の接近禁止命令が出ているときに、さらに加えて、被害者の親族等への接近禁止も命令するもの。
 せっかく接近禁止命令があっても、被害者の親や兄弟などの住居に押しかけてきわめて粗野・乱暴な言動(罵声・暴言を吐く、汚い言葉で罵るなど)をされ、これを制止するために結局会わざるを得ない状況になるおそれがあるため追加されました。
 親族等の範囲には、被害者の身近で安全などを配慮する立場にある者も含まれ、たとえば、職場の上司やシェルターの担当職員などが考えられます。なお、この命令は、「親族等」という不特定な形ではなく、各人の氏名を特定して出されるもので、本人の同意も必要です。

*       *       *

 今改正では、このほかに、努力規定とはいえ、市町村での取組みを強化するための条文(市町村基本計画の策定・配偶者暴力相談支援センターの設置)が盛り込まれました。




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