落とし物・忘れ物の法律が変わりました
〜保管期間は3ヶ月に短縮       
   インターネットで情報を公開〜
遺失物法の改正//H19.12.10より施行中//



 誰でも、一度や二度は、路上で手袋やマフラーを落としたり、車内に傘などを置き忘れた経験をおもちでしょう。そのとき、あなたはどうしました?仕方がないとあきらめた?それともすぐに交番や駅に届け出た?
 こうした身近な落とし物や忘れ物について定めた法律「遺失物法」(明治32年制定)が、実に50年ぶりに全面改正され、平成19年12月10日より施行されました。

落とし物――
  保管期間は3ヶ月に短縮


 今や、拾って届けられる物は膨大な数に達しています。平成18年には実に1221万点(現金は総額139億円)。その保管だけでも大変です。しかも、大量消費の現代、落としても届け出もせず、放置される品物が山積しています。
 そこでまず、落とし物・忘れ物の保管期間を3ヶ月(従来は6ヶ月)と短縮しました。持主が判明した事例では99%以上が、拾われてから3ヶ月以内に見つかっていることからも、こうした短縮措置は妥当なものといえましょう。


表1 2週間で売却される品物
1) 傘
2) 衣服
3) ハンカチ・マフラー・ネクタイ・ベルト等
  衣服と共に身につける繊維・皮革製品
4) 靴などの履物
5) 自転車
6) 動物(保管が困難なため)
 動物のうち犬とねこについては「動物の愛護及び
管理に関する法律(動物愛護法)」が適用され,基本的
に「遺失物法」の対象外となった。都道府県等が引き取
ることになるが,元の飼い主を見つけるために必要であ
れば警察に届けることも可能。
 とくに、気を付けなければならないのが、表1に記載した6種類の品物です。これらは、落とし物の多数を占めながら持主が現れることは少なく、しかもかさばるなど難点も多いため、今改正では、2週間以内に持主が見つからなければ、すぐに売却できることとしました(法9条・令3条)。たとえどんなに高価な品であっても、この6種類のいずれかであれば2週間たてば売却されてしまう可能性がありますので、注意が必要です。売却された後で持主が見つかったときは、売却代金から売却等にかかった費用を差し引いた残額が、その品物に代わって返却されることとなります(ただし、これも保管期間は3ヶ月)。

車内やデパート等での落とし物――各施設が保管

 鉄道やバスなどの交通機関、あるいはデパートや遊園地などの施設では、落としたり拾ったりしたとき、私たちは、まずはその場の係員に届け出ます。各施設では、落とし物情報を掲示したり、一覧帳簿を作って閲覧できるようにしています。
 従来は、こうして届けられた品物は、結局、まとめて警察に運ばれて保管され、持主が見つからないまま保管期間がすぎると、再びまとめて各機関が引き取るという二度手間が行なわれていました。
 この不経済をなくすため、落とし物の一覧を警察に届け出ておけば、現物は警察に運ぶことなく独自に保管することが認められました(法17条・令5条)。対象となるのは、各種交通機関と、落とし物を大量に扱い適切な保管ができると公安委員会が指定する施設です。これらの施設では、表1の品物については、警察と同様、2週間たてば売却することも可能です。ただし、10万円以上の現金や有価証券・品物については、従来どおり、警察に引き渡されて保管されることとなります(令6条)。

便利! 落とし物情報をインターネットで確認!

 一方、落とし主を早く確実に見つけ出すためには、次のような措置がとられます。
 従来は、落とし物情報は、警察署単位で管理されていたため、移動中のどこで落としたかわからない場合など、いくつもの警察に問い合わせる必要がありました。そこで、落とし物の中身が、1万円以上の現金・有価証券・品物、あるいは免許証や保険証などの身分証明書類、預貯金通帳やクレジットカード類、携帯電話の場合には、他の都道府県警察にもその情報が通報されることとなりました(法8条1項・規則11条)。
 さらに落とし物の情報は、インターネットでも確認することができます(法8条2項・規則12条)。各都道府県警察のホームページでは、当該都道府県で管理する落とし物(警察及び施設で保管する物)に加えて、他府県から通報された前記の落とし物情報も公表されています。落とした日時・品名などで検索して見つけ出すことが可能です。もちろん、品物・場所等の詳細は伏せてありますので、なりすまして受け取ることはできません。念のため。

 また、落とし物の中には、携帯電話やクレジットカードなど、その発行会社に問い合わせれば、即座に持主が判明するものもあります。けれども、会社によっては、個人情報の保護を盾になかなか協力が得られないケースもありました。そこで、遺失物の場合は、警察はこうした照会ができる旨が明文化されています(法12条)。

3ヶ月後には、所有権は拾い主のものに

 さて、落とし物の保管期間の3ヶ月がすぎると、それは拾い主の所有となります(民法240条)。
表2 拾った人に所有権は移らず廃棄される品物
(1)法令で所持が禁止されている物
   例:麻薬・刀剣銃砲類(美術品等を除く)等
(2)個人の身分や地位・一身に専属する権利を証する物
   例:免許証・社員証等身分証明・住民票・戸籍謄本
    ・パスポート・保険証・預貯金通帳・クレジットカード・定期券等
(3)個人の秘密について記録された物
   例:手帳・日記帳・家計簿・カルテ・個人的記録が
     保存されたパソコンや電子手帳等
(4)落とし主や関係者の住所などが記録された物
   例:携帯電話・住所録・同窓会名簿等
(5)個人情報データベースなどが記録された物
   例:企業の顧客リスト等

 とはいえ、法律で所持が禁止されている物と個人情報に関連する物について(表2)は、所有権は拾い主に移らず、廃棄されることになりました(法35条)。個人情報保護の観点から、新たに盛り込まれた条文です。
 そして、保管期間がすぎて所有権が拾い主に移った後、2ヶ月以内に引き取りに行かなければ、拾い主としての権利を失うこととなりますので注意が必要です(法36条)。拾った人の権利を証明するため、警察では「拾得物件預り書」が交付されます(法五条。同様に施設の場合も、拾った人の求めに応じて、品物の種類や特徴・届け出日時を書いた紙が交付される。法14条)。警察で渡される預り書には保管期間や引取期間が明記されていますのでご確認ください。
 一方、もし、保管期間中に持主が見つかったときには、拾って届け出た人には、当該物件の5%〜20%に相当する「報労金」を請求する権利があります(法28条)。店や施設で拾って、その係員に届け出たケースでは、報労金は当該施設と折半することとなります。
 ちなみに、拾って1週間以内に警察に届け出なかった場合、または施設(交通機関を含む)で拾って24時間以内に届け出なかった場合には、報労金はもちろん、3ヶ月後の所有権も一切失います(法34条)。拾った物をネコババしたときは「遺失物等横領」です(刑法254条)。1年以下の懲役または10万円以下の罰金・科料に処せられます。拾った物はすぐに届け出るようにしましょう。
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 「遺失物法」の対象には、埋蔵物も含まれます。ただし、埋蔵物については、保管期間は6ヶ月のままとされ、保管期間後の所有権は、発見者とその土地の所有者が折半することとなります(民法241条)。




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