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株・投資信託・外貨預金・ファンド……
リスクを伴う投資――素人でも大丈夫?!
証券取引法改め「金融商品取引法」
H19.9.30スタート


低金利時代が長引く中、預貯金中心だった家計金融資産も、今や「貯蓄から投資へ」と流れつつあります。これに伴って、とくに投資信託などいわゆるリスク性商品の販売・勧誘方法等をめぐっての消費者トラブルが頻発し、利用者保護の観点から問題視されてきました。また、いわゆる「ファンド」と呼ばれるような、出資金等を募って事業・投資を行いその収益等を分配するさまざまな仕組み(集団投資スキーム)も現れ、社会的な問題となっています。
従来は、縦割り業法によって金融商品ごとに適用される法律は異なり、規制内容もまちまちでした。また、新たな金融商品が生まれると規制の網がかからない「隙間」が発生し、ファンドもそうした中で利用者保護法制の対象とならずほとんど野放し状態だったものです。
そこで、今回、「証券取引法」など多数の法律が同時に改正され、平成19年9月30日より、金融商品をめぐっての法制度が大きく変わりました。

従来の「金融先物取引法」「有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律」「外国証券業者に関する法律」「抵当証券業の規制等に関する法律」の4法律が廃止される一方、従来の「証券取引法」がこれらの法律を含めて金融商品の販売や資産運用についての一般的な規制を行う包括的・横断的な法律としていわば格上げされ、名称も新たに「金融商品取引法」として生まれ変わりました。
もっとも、金融商品の中でも、たとえば預金や保険などそれぞれ「銀行法」や「保険業法」等の個別の法律で別途に特別に規制されているものについては、この法律は直接適用されません。それ以外の、前述のファンドも含めていわゆる投資サービス全般を広く統一的に対象とした法律として作られたものです。業者は原則として登録制になり、同じ経済的機能を有する金融商品には同じルールが適用されることとなります。
中でも、問題となっていたリスク性商品の販売・勧誘について利用者保護の徹底がはかられ、不適切な販売が判明したときには行政処分の対象となるなど、規制も強化されています。
販売・勧誘ルールとして定められたのは、主に次のようなものです。
(1) 広告の規制(法37条、府令73条)
利益の見込みについて著しく事実と相違したり、人を誤認させるような表示は禁止。元本割れなどのリスク情報は明確に表示すること(隅の方に小さくはダメ。最も大きな文字と比べて著しく異ならない大きさで表示)。
(2) 契約前・契約時の書面交付の義務づけ(法37条の2・3、府令79・82条等)
口頭だけでの説明は原則としてダメ。契約締結前にも取引内容に関する書面を交付すること。利用者の判断に影響を及ぼすとくに重要な事項については最初に平易に記載し、次に手数料・報酬その他利用者が支払うべき対価を記載。損失や元本割れなどのリスク情報やクーリングオフの可否(同法でクーリングオフが規定されているのは投資顧問契約のみ。10日以内)についてはとくに12ポイント以上の大きな文字で明瞭かつ正確に表示すること等々。
(3) 勧誘についての各種禁止行為(法38条)
虚偽のことを告げたり、不確実な事項について断定的判断(絶対儲かる等)を提供して勧誘することは禁止。要請していないのに訪問・電話で勧誘することも禁止(当面は店頭の金融先物取引のみが対象)。契約を締結しないと意思表示したのに勧誘を継続することも禁止(当面は金融先物取引全般が対象)。
(4) 勧誘に際しての適合性の原則(法40条)
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リスク商品の購入にはこんな点を確認して…
◎購入者の年齢 |
◎年収・金融資産
リスクの許容度はどの程度か
適切な購入額はいくらか |
◎投資経験・知識
リスク商品を購入した経験があるか
リスクの所在を理解できるか |
◎投資目的
元本の安全性重視か
利回り・値上がり重視か |
◎投資期間
短期運用か長期保有か |
利用者保護のための主要なルールとして明文化されている。顧客の知識・経験・財産の状況及び契約締結の目的に照らして不適当な販売・勧誘をしてはならない。つまり、顧客の身の丈に合わない金融商品を勧めることはできない。たとえ知識・経験があって資産を十分もっている人に対してでも、その投資目的に照らして不適当な勧誘(たとえば元本の安全性重視の客にハイリスク・ハイリターンの商品を勧める等)はこの原則に違反し、行政処分の対象となる。
ちなみに、重大な適合性原則の違反があったときは、利用者は業者に不法行為責任を問うことができる(=損害賠償を請求できる)とされています。
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こうした販売・勧誘ルールは、金融商品取引法の規制対象ではない業種においても、投資性の高いリスクのある金融商品については、基本的に同一のルールが適用されることとなります。たとえば、銀行や保険会社でも、外貨預金や外貨建て保険・年金、変額保険・年金などは同様の規制がなされるほか、商品先物取引も同一のルールとなるなどです。
金融商品取引法と同様のルールで規制される
投資性の高い金融商品とは……
投資性の強い預金など (銀行法) | 外貨預金 | (為替相場の変動により、円建て元本の欠損が生じるおそれがある預金) |
デリバティブ預金 | (中途解約の場合に、金利動向に基づき計算される違約金により、元本欠損が生じるおそれがある預金) |
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投資性の強い保険など (保険業法) | 外貨建て保険 ・年金 | (為替相場の変動により、円建ての保険金などにつき損失が生じるおそれがある保険・年金) |
変額保険 ・年金 | (運用状況により、保険金などにつき損失が生じるおそれがある保険・年金) |
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投資性の強い信託 (信託業法など) | 指定金銭信託 (実績配当型) | (運用状況により、元本欠損が生じるおそれがある信託) |
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商品先物取引 (商品先物取引所法) | (商品の価格などの変動により、損失が生じるおそれがある取引) |
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不動産特定共同事業 (不動産特定共同事業法) | (不動産取引の状況により、損失が生じるおそれがある取引) |
投資の素人である消費者にとっては、自分にあった金融商品を、くわしい書面での説明も受けたうえで納得して購入することができるわけですから、安心のシステムとなったものの、反面、投資のプロにとっては煩雑な面も否めません。そこで、投資家をプロ(特定投資家)とアマ(一般投資家)に分けて、プロについては簡易なルールも可能としています(ただし個人投資家は基本的にはすべて一般投資家として保護)。
金融商品取引法では、このほか、投資を安心してできるものとするため、市場の透明性を確保する措置(上場会社の4半期ごとの報告書の開示等)や市場の公正性を確保する措置(公開買付制度の見直しやインサイダー取引等への罰則の大幅な強化等)が定められました。これらの改正により、諸外国と同等の法制度が整うことにより、国際投資家にとって日本市場がより魅力的なものとなり、豊富な金融・資本が流入することが期待されています。
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金融商品は日々新たなものが出現します。業界の垣根を越えた規制が及ばない新型のハイブリッド商品も誕生してくることが予想され、それに応じたさらなる利用者保護も、また求められるようになるかも知れません。


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