少年の立ち直りに必要なものは??…
少年法等の一部改正〜平成19年11月1日施行〜
//14歳未満の少年事件に警察の調査権限//
//保護観察で改善なければ改めて審判//



少年法の厳罰化とその後の推移は……


 人間は、生まれてから後、家庭や学校や社会の中で育てられることで、はじめて、社会的存在として成長していきます。そしてわが国では、法律により、成人年齢は20歳と定められています。
 犯罪を犯した場合も、当然年齢により処遇は異なり、成人には「刑法」が、そして20歳未満の未成年者には「少年法」が適用されます。少年・少女には原則として、刑罰(刑事処分)を科すのではなく、健全育成の見地から保護処分が課せられることとなっているのです。
 しかし一方、刑法41条では「14歳に満たない者の行為は、罰しない」と規定され、14歳以上であれば刑事処分の対象となり得ることが示されています(刑事責任年齢)。
 少年による凶悪重大な犯罪が起こったのをきっかけに、「少年法」は大きく改正され、平成13年4月からは刑事責任年齢に達した少年への措置はきびしくなりました(くわしくはそよ風112号)。


 そして改正後の再検討が行われる予定の5年が経過し……この間、14歳未満の少年によるセンセーショナルな事件(小学6年生による同級生殺人、小学生による幼児誘拐…)が起き、再び「少年法」は改正されることとなり、平成19年11月1日より施行されています。

14歳未満の犯罪 ――
     警察による調査を明文化

 14歳未満の少年・少女による犯罪は、刑法で罰せられないため、これまでは警察による調査権限について法律上の明文の規定はありませんでした。14歳未満の犯行と判明した時点で児童相談所等に引き継がれ、現場検証や検死なども十分でなく、親が拒んで証拠品が押収できないなどのケースも発生していました。
 しかし、まずは事実を知ることが、少年自身の更生の道をさぐる上での出発点ともいえましょう。そこで、「犯罪捜査」としてではなく、あくまで真相を明らかにするための「調査」権限を、警察官に与えることが明文化されました(6条の2)。
 裁判官の令状があれば、警察官は、現場や自宅等での捜索、証拠品の押収、現場などの検証、そして死体解剖を含め鑑定嘱託を、強制処分として行なうことができるようになりました(6条の5)。
 警察官は、調査の上で必要があれば、少年や保護者・参考人を呼び出して質問することができる旨も、とくに明記されています(6条の4)。ただ、呼出しや質問に応ずることが義務づけられているわけではありません。
 低年齢の子供は、自分の考えや言いたいことを十分に伝えられるとは限りません。また往々にして、大人の言うことをそのまま肯定する傾向が強く、してもいないことをしたと自白したり、見てもいないことを見たと証言することも十分起こりえるところです。このため、よほどの配慮をすることが必要で、少年心理にもくわしい専門的知識をもった職員の対応が求められています。
 なお、14歳未満の少年の犯罪は、警察の調査書類とともに、まずは児童相談所長に送致されます(6条の6)。司法(家庭裁判所)に委ねる必要があるかどうかを、児童福祉機関で先に検討するためです。ただ、故意の犯罪行為により被害者を死亡させたり、死刑・無期もしくは短期2年以上懲役・禁錮にあたる罪(殺人未遂・放火・強盗・強姦等)を犯した場合には、原則として、家庭裁判所で審判を行って措置を決めることとなりました(6条の7)。

少年院収容の年齢下限をおおむね12歳に引下げ

 「少年法」では、犯罪を犯した少年、そして性格・環境に照らしてこのままでは将来犯罪を犯すことになる虞(おそ)れがある少年(たとえば家出の常習者や深夜歓楽街をうろつく少年、犯罪者と交流のある少年等々)について、家庭裁判所で審判を行うことと定められています(3条)。
 その結果、保護処分が必要であると決定されれば、(1)少年院に収容、(2)児童自立支援施設・児童養護施設に収容、(3)保護観察、のいずれかの措置がとられることとなります(24条)。


 このうち、少年院については、従来は14歳以上の年齢規制がありましたが、これを「おおむね12歳以上」(11歳程度までは可能性がある)と引き下げる措置がとられました(少年院法2条)。受入対象となるのは全国で8つの少年院です。
 とはいえ、あくまで、14歳未満の少年については、家庭あるいは児童福祉施設で保護するのが原則であり、それでは改善更生が見込めないという特別の事情がある場合に限り、例外的に行われるものです(24条)。

保護観察――
甚だしい不遵守には施設収容決定も

 また、保護観察に付された少年への措置も見直されました。
 保護観察中は、遵守(じゅんしゅ)事項(たとえば暴走族や暴力団員と付き合わない、深夜に出歩かない等)をきちんと守り、保護観察官・保護司と定期的に面談してその指示に従うことが課せられます。しかし、現実には、遵守事項を何度も破り、保護観察官との連絡もとれないような事態が往々にして起こっていました。残念ながら、これに対して有効な措置はないのが実情でした。
 そこで、遵守事項を守らない少年には保護観察所の所長が警告を発し、たび重なる警告をも無視して不遵守を続ける場合には、家庭裁判所は、保護観察の継続では改善更生の見込みがないと判断すれば、改めて、児童自立支援施設か少年院への収容を決定できることとしました(26条の4)。

鑑別所段階から国選付添人制を導入

 平成13年の法改正で、一定の重大な犯罪行為については、家庭裁判所の審判に検察官が関与するケースもあることが盛り込まれました。その場合には、刑事裁判で国選弁護人が付くのと同様に、少年には「国選付添人」が選任されます(そよ風112号)。
 今改正でこの国選付添人制度がさらに整備され、少年が一定の重大事件で鑑別所に入っているときには、家庭裁判所が必要と認めれば、職権で国選付添人を付けることができることとなりました(22条の3)。
 ちなみに、国選付添人は、公費で弁護士を付添人として付けるもので、この制度があるのは上記の2つの場合だけです。これに対して、保護者や少年自身が私選付添人として弁護士を頼むことは、警察の調査段階から可能となっています。





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