郵政民営化H19年10月1日いよいよスタート
何が、どう、変わるの??

郵政民営化法等の制定



 いよいよ郵政民営化は準備段階を終え、平成19年10月1日からスタートしました。衆議院を解散までして問うた郵政民営化──でも、あなたはその中身をどこまでご存じですか?「民営化=サービス向上?」「民営化=過疎地の切捨?」「電々公社からNTTに、国鉄からJRに…ローマ字になるだけで実生活では同じ?」
 郵政民営化でいったい何が決まったのでしょうか。

郵政公社を廃止して
    5つの株式会社を設立

 郵政民営化をめぐっては、6つの法律が新たに制定され、13の法律が廃止、そして実に160に及ぶ関係法律が改正されました。
 中でも「郵政民営化法」で、その骨子とプロセスが定められています。
(1) 郵政公社の廃止
 日本郵政公社(そよ風122号参照)は、平成19年9月30日をもって廃止されました。
(2) 郵政グループとして5つの株式会社を設立

 公社に代わって、次の5つの株式会社が設立されました。
「日本郵政株式会社」
 グループの持株会社。現在、他の4社の株式のすべてを保有している。
「郵便事業株式会社」
 郵便業務と印紙の販売を担当する会社。
「郵便局株式会社」
 既存の郵便局を窓口ネットワークとして活用して、他社からの委託を受けて、郵便・貯金・保険などの窓口業務を担当する会社。
「株式会社ゆうちょ銀行」
 従来の郵便貯金のうち通常貯金と郵便振替口座を引き継いで新たにつくられた銀行。
「株式会社かんぽ生命保険」
 従来の簡易保険に代わって、新たな保険事業を展開するために設立された保険会社。

 国家公務員総数の約30%をも占めていた日本郵政公社の職員(約28万人)は、基本的に、この5社のいずれかの従業員となりました。
 このうち、日本郵政(株)と郵便事業(株)・郵便局(株)は、それぞれ、「日本郵政株式会社法」「郵便事業株式会社法」「郵便局株式会社法」に基づいて運営される特殊会社です。これに対して、(株)ゆうちょ銀行と(株)かんぽ生命保険は、完全な民営化が目指されます。
(3) 郵便貯金・簡易生命保険管理機構の設立
従来の簡易保険と定期性郵便貯金を引き続いて処理する機関として、この独立行政法人が設立されました。

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 では、各社は実際にどんな仕事をし、これまで郵便局で扱っていた郵便や貯金・保険はどう変わるのでしょうか。

日本郵政株式会社――
    親会社として経営管理

 「日本郵政株式会社」は、郵政民営化を軌道に乗せる準備手続きをするため、ひと足早く、平成18年1月23日に設立されました。そして公社が廃止された平成19年10月1日からは、グループの中核である持株会社の役割を果たし、4事業それぞれの経営管理・業務支援を行うこととなります。
 日本郵政公社は、これまで、都市部を問わず、過疎地を問わず、国民の最も身近な存在として、広く郵便・金融業務で全国一律のサービスを提供してきました。民営化によって、このサービスが低下し、過疎地が切り捨てられることがあってはなりません。
 そこで、郵便事業(株)と郵便局(株)の株式については、そのすべてを、この日本郵政(株)が保有することとなります。そしてこの親会社である日本郵政(株)の株式は、現在はすべて政府が保有しており、5年以内に徐々にこの株式は売却されるものの、政府は将来もその3分の1を超える株式を保有し続けることが決められています。政府はグループの大株主として将来も経営に関与するわけです。
 一方、(株)ゆうちょ銀行と(株)かんぽ生命保険の株式については、現在はそのすべてを、持株会社である日本郵政(株)が所有していますが、3年後の上場をめざし、遅くとも10年以内(平成29年9月30日まで)に全株式を売却し、完全な民間会社とする予定です。
 この株式の売却等で得た収益の一部は、「社会・地域貢献基金」として積み立てられます(1兆〜2兆円)。この基金を運用して、その収益を、郵便局(株)には「地域貢献資金」(採算がとれないため過疎地域でサービスの一部が切り捨てられそうなときの資金)として交付し、郵便事業(株)には「社会貢献資金」(第三・四種郵便の赤字が深刻なとき等の援助資金)として交付されることになります。
 また、当面、「かんぽの宿(簡保加入者福祉施設)」や「メルパルク(郵便貯金会館など郵貯宣伝施設)」も、日本郵政株で管理運営し、5年以内にその廃止ないしは譲渡を終える予定です。

郵便事業株式会社――
     全国一律サービスを

 郵便事業については、全国一律のサービスが確保されます。一種(手紙)・二種(ハガキ)郵便はもちろん、三種(定期刊行物)と四種(通信教育・点字郵便等)郵便についても、これまでどおりのサービス・価格が維持されています。従来の切手やハガキ等もそのまま使えます。
 ただし、小包については、「郵便法」の枠内からはずされました。規制はなくなり、一般の宅配業者と同一の土俵で自由に競うこととなります。これに伴って、小包の損害賠償の内容が少し手厚くなりました。ゆうパックでは、紛失・破損の場合の賠償額は従来どおり30万円までに加えて、配達が遅れたときにも料金の返却という形で賠償が始まりました。また、エクスパック・ゆうメールなどでも、紛失・破損の場合の賠償が料金の枠内とはいえ始められました。ただし、小包以外の書簡については、これまでどおり、「書留」扱い以外のものは補償の対象となりませんのでお間違いなく。

郵便局株式会社―
   窓口ネットワークは健在

 全国にある約2万4000の郵便局ネットワークも健在です。郵便局は全国にあまねく設置することが義務づけられています。
 郵政グループ各社からの窓口業務の委託を受けて、その委託手数料を主な収入源とすることになります。郵便事業(株)からは郵便窓口業務を、(株)ゆうちょ銀行からは銀行窓口業務を、そして(株)かんぽ生命保険からは保険の窓口業務をいずれも委託されることになり、結局、郵便局の窓口では、今までどおりのサービスを受けることができるわけです。住民票の交付等も引き続いて行なわれます。
 しかもそれにとどまらず、他の分野に進出することも可能です。たとえば、各種チケットの販売や雑貨をも扱うなど、郵便局施設を利用した創意ある活用法が模索されています。

郵便貯金はどうなる――
  通常貯金はゆうちょ銀行

 これまでの郵便貯金のうち、「通常貯金」と「郵便振替口座」(通販代金の振込など振替用紙を利用して集金する口座)は、(株)ゆうちょ銀行に引き継がれました。そのため、今後、国による保証はありません。民間金融機関と同じく、預金保険機構による1000万円までの保証となります。
 とは言っても、当分の間、ゆうちょ銀行に預けることができる金額は、従来の郵便貯金と合わせて1000万円(財形は別途550万円)までと上限が設けられています。これは、これまでの郵便貯金の上限と同じで、巨大な銀行ができることで他の民間金融機関が圧迫されることがないよう当面とられている措置です。
 また、郵便振替口座については、当座預金などと同じく決済性の預金ですから、上限はなく、全額保証されることになっています。
 移行に伴う手続きは一切不要です。通帳・カード・口座引き落とし等、すべてそのまま引き継がれます。ただ、通帳がいっぱいになって新しくゆうちょ銀行の通帳に切り替わるときなどには、免許証・健康保険証などで一度本人確認をすることとなります。

郵便貯金はどうなる――
   定期貯金は機構が管理


 これに対して、従来の郵便貯金のうち定期性のもの、たとえば「定額貯金」や「定期貯金」などは、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構が引き継ぐこととなります。
 これらはすべて従来どおりの条件で引き続いて管理・支払いされます(ただし、実際には同機構から委託されて株ゆうちょ銀行が運営することになる)。国による全額保証も元のままです。
 ただ、当然ながら新規の受入れは行ないませんので、満期になればそれ以降の手続きはできません。定期貯金を自動継続扱いにしている場合でも、民営化後の自動継続はできませんので注意が必要です。満期後も同様の定期性預金を希望されるなら、ゆうちょ銀行や他の金融機関の定期預金等を利用することとなります。
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送金・振込手数料(ゆうちょ銀行)
★ゆうちょ銀行口座間の送金
窓口140円
ATM120円(※)
ゆうちょダイレクト110円
※平成19年10月1日〜平成20年9月30日は
 民営化記念でATM送金料金は無料となっている。
★振替口座への送金(通常払込み)
3万円未満3万円以上
窓口120円330円
ATM80円290円
★為替証書を発行して送金
普通為替3万円未満3万円以上
420円630円
定額小為替1枚 100円
 このほか、民営化に伴って、各種送金の手数料が変更・値上げとなっていますのでご注意ください(左表)。また、他の金融機関口座への振込も、ゆうちょ銀行では今のところ、わずかな数を除き大半の金融機関には対応ができていません。

簡易保険はどうなる――
    新規の受入れは廃止

 簡易保険については、新規の受入れは廃止されました。従来から加入していた簡易保険についてのみ、郵便貯金・簡易保険管理機構が引き継ぐことになります(ただし、実際は(株)かんぽ生命保険が運営を委託される)。
 そのため、従来加入分については、国の全額保証があり、これまでどおりの条件で契約を続けることができます。ただし、途中増額や期間延長、特約の追加・変更など、内容を増やす変更はできませんのでご注意ください。
 一方、(株)かんぽ生命保険の保険商品については、もはや国の保証はありません。民間の保険会社と同じく、保険契約者保護制度に基づく保護となります。そして加入限度額も、当面、1000万円までと決められました(従来と同額)。ゆうちょ銀行の預入限度額の設定と同じく、他の民間保険会社を圧迫しないため、当分の間とられる措置です。
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 郵便貯金と簡易保険で、これまでは、個人の金融資産の実に4分の1を占めていました。そして郵便局は、全国に約2万4000もあって巨大なネットワーク網を作っています。それらが民営化されることにより、巨大な金融グループが誕生しました。
 利潤追求の中に組み込まれた郵便事業の推移とともに、これからの運営が問われています。




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