
〜個人情報を守る〜
閲覧をきびしく制限
住民基本台帳法の改正
営業目的での閲覧は認められません
H18.11.1施行

運転免許の申請やパスポートの申請等々、住民票は住所を証明する資料として広く活用されています。また、自治体や国がさまざまな施策を実施する際のもっとも基本的な資料としても利用されています。
この住民票には、住所・氏名・本籍など住民票の写しをとったときに記載されている内容のほかに、選挙人名簿への登録の有無、国民健康保険や介護保険、国民年金、児童手当などの資格、住民票コード番号についても記録されています。
そして、各市町村は、これら個人の情報である住民票を、さらに世帯ごとに編成して、住民基本台帳を作成しています。
昭和42年(1967年)に「住民基本台帳法」が制定された当時、この基本台帳は誰でもが閲覧できる、いわば公開の制度としてスタートしました。
しかし、その後、プライバシーへの配慮から、昭和61年(1986年)の改正では、閲覧申請の際に理由を明示するようになり、不当な目的での閲覧は市町村が拒否できるようになりました。さらに、住基ネット(住民基本台帳ネットワーク)のスタートに伴って(そよ風119号参照)、閲覧できるのは、住民票記載事項のうち、「氏名」「生年月日」「性別」「住所」の4つの事項に限られることが法律上明記されて運用されてきました。
しかし、それでも、基本的には公開が原則で、また、住民票は世帯ごとにまとめられていますから、閲覧により、年齢や家族構成まで把握した一覧を入手することができるわけです。このため、平成16年度は150万件の閲覧申請がありましたが、このうち実に約7割がダイレクトメールを発送するなどの営業目的での閲覧でした。また、閲覧内容が犯罪に利用されるおそれも指摘されていました。
近年、個人情報の保護のためきびしい法規制が行われるようになりました(たとえば「個人情報保護法」そよ風124号参照)。そこで、住民基本台帳についても、平成18年11月1日より、閲覧制度は大幅に見直され、従来の制度は廃止されて、きわめて限定した場合にしか閲覧できないシステムとされました。
まず、営業目的での閲覧は一切できません。閲覧が認められるのは、次の2つの場合に限られます。
- 1 国・地方公共団体の機関が事務遂行上必要なため公文書で請求した場合(11条)
- 従来は、公務員なら、理由の明示などなくとも安易に閲覧利用が可能でした。改正により、請求事由や閲覧者も明示することとなり、閲覧の際には身分証明書の提示が必要など、たとえ公的な利用といえども厳格に運営される仕組みとなります。
- 2 個人・法人からの閲覧申出があり、市町村長がそれを認める次の3つの場合(11条の2)
- (1) 公益性の高い調査研究
- 成果が社会に還元される次のようなものに限定されます。
- (a) 放送局・新聞社など報道機関が行う世論調査で、その結果に基づく報道が行われるもの。
- (b) 大学などの学術研究団体などが学術研究目的で行う調査で、その結果が学会等で発表されるもの。
- (c) a)・b)以外の統計的調査研究で、その結果が国や自治体の施策立案に利用されるもの。
- (2) 公共的団体が行う地域住民のための公益性の高い活動
- たとえば、社会福祉協議会が敬老事業を行うため、自治会が地域の子どもに入学祝いをするためなど。
- (3) 営利目的以外でとくに必要があって居住関係を確認
- たとえば訴訟の提起のため、マンション管理組合が居住者確認をするため等で、ほかに手がないとき。
いずれも、申出の際には、氏名・住所を明示するのはもちろん、利用目的、閲覧者の氏名・住所、閲覧したデータを扱う者の範囲、データの保管方法や廃棄時期等を細かく申請する必要があります。
市町村長は、不正な利用がなされていないかがチェックできるよう、1年に1回以上、閲覧者の氏名・利用目的・閲覧日・閲覧対象となった住民の範囲を公表します。また、必要な限度で、閲覧申出者に報告をさせることもできます(報告しない又はウソの報告をすれば30万円以下の罰金、47条)。
もちろん、閲覧した内容を利用目的以外に使用することは禁止されます(本人の同意あるときは除く)。また、閲覧した内容を、申請した範囲の者以外の第三者に提供することも禁止です。これらに違反すると、30万円以下の過料の対象となります(51条)。
また、ウソの内容で申請したり不正な手段で閲覧したり、あるいは前述の目的外利用や第三者への提供が行われ、個人の権利を保護するため必要と判断されれば、市町村長は必要な措置を勧告・命令します。この命令にも違反した場合には、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられるなど、きびしい罰則規定も設けられました(46条)。
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個人情報がルーズに扱われていた時代はもはや過去のことです。きびしい規制のもとに、プライバシーの保護と個人情報の適切な活用が模索されています。


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