密告?!  裏切り?!
イエ! 公益のための勇気ある告発者を守る!
公益通報者保護法の制定
H18.4.1スタート



公益を守るための告発
     通報者を守るルールを


 社内で不正が行われているとき、あなたならどうするでしょうか。嫌々ながら加担する、仕方がないと黙認する、それとも、断固告発する?

 耐震設計の偽装、粉飾決算、産地や賞味期限等食品の偽装表示、車のリコール隠し……法令を守らず、消費者の生命や財産を脅かす企業や個人の深刻な犯罪が後を絶ちません。そしてこれら事件の大半は、内部の者からの通報をきっかけに発覚しています。
 社会正義のためにこうした不正を告発しようとすれば、解雇さらに次の勤め口も困難になるという不利益も覚悟しなければならない、そんな理不尽な現実があります。一方で、ただのデマや噂を、悪意をもって「通報」されたのでは大きな損害が発生します。そこで、どんな内容の通報をどういう形で行えば、通報した労働者を保護するのかという、基本的なルールが定められることになりました。
 「公益通報者保護法」は、平成18年4月1日から施行されています。

通報の内容は?
法律違反の犯罪行為等

公益通報の対象となる法律
・刑法
・食品衛生法
・証券取引法
・農林物資の規格化及び品質表示の適正化に
 関する法律(JAS法)
・大気汚染防止法
・廃棄物の処理及び清掃に関する法律
・個人情報の保護に関する法律
・その他政令で定める法律
(薬事法・労基法・独禁法など現在400以上)
 くわしくは下記でご確認ください。


 通報の対象となるのは、国民の生命・身体・財産などを保護するためのさまざまな法律の中で、違反すれば罰金や懲役といった罰則が科される犯罪行為。あるいは、こうした犯罪行為に至るまでの法令違反行為です。たとえば、法令で、ある基準を定め、これに違反した場合、勧告→命令(指示)→罰則が科されると規定されているなら、この基準違反や勧告違反も法令違反行為として通報の対象となります(努力義務規定の違反は対象外)。
 こうした犯罪行為などが実際に行われた、または、まさに行われようとしている(直前でなくとも、誰が・いつ・どこでなど確定していればOK)なら、公益通報の対象です。
 対象となる法律は、現在140余りが指定されています(右表)。
 ただ、法律の性格から、業務とは無関係な個人の私生活上の犯罪については、本法の対象外となっています。
 また、当然のことながら、不正な目的(ゆすり目的・嫌がらせ目的等)ではなく、あくまで公益のための通報であることが大前提となっています。

通報者は?
社員・派遣社員・取引先社員も含む

 保護されるのは、そこに勤める労働者(パート・アルバイト等々や公務員も含む)にとどまらず、そこに派遣されている派遣社員、また、請負契約その他継続的な関係のある取引先会社(物品納入業者・清掃業者・コンサルタント会社等)の社員も、広く含まれます。

通報先は?
内部通報・行政機関・その他外部へ

 通報先としては、次の3つが予定されています(3条1〜3号)。


(1) 内部通報
 不正な法令違反等と思ったら、当該企業等(法人・団体・事業を行う個人)に通報。
 各企業では、通報のための相談窓口やヘルプラインを設置したり、公正性を確保するため弁護士など外部への委託も進めています。また、調査の結果や是正措置について、通報者に知らせる努力が必要です(9条)。
 なお、まずは内部通報をと、とくに優先を義務づける規定は設けられていません。
(2) 行政機関に通報
 当該不正な法令違反等に対して処分する権限のある行政機関に通報。
 この場合には、その違反があると信ずるに足りる相当の理由(真実相当性)があることが要件です。つまり、単なる伝聞などではなくそれなりの証拠があるなど、信じたことに合理的な理由がなければなりません。もし、通報先の行政機関がわからず、他の権限がないところに通報したときにも、担当の行政機関を教えてもらうことができます(11条)。
(3) その他外部への通報
 被害拡大防止等のため必要と認められる外部(被害者・消費者団体・報道機関など)に通報(暴力団やライバル企業への通報はもちろんダメ)。
 ただしこれには、真実相当性が必要であるだけでなく、次のいずれかのケースに限って認められます。

保護の内容は?
解雇は無効、不利益取扱は禁止

 これら公益通報の要件を満たしていれば、通報したことを理由になされた解雇は無効です(3条)。就業規則に違反して企業秘密を漏洩(ろうえい)したなどと、懲戒解雇を言い渡すことはできません。
 同様に、派遣社員についてなされる、派遣契約の解除は無効です(4条)。
 さらに、降格・左遷・減給・嫌がらせ・退職年金の差止めなど、いかなる不利益な取扱いも禁止されます(5条)。派遣社員の交代を要求することも禁止です。もしこうした行為が強行された場合には、損害賠償の請求をすることができます。
 ちなみに、本法の公益通報の要件をたとえ満たしていなくても、従来どおり、労働基準法18条の2「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」の規定は適用されますので、一概に保護されないわけではなく、個別に判断されることになります(6条2項)。
 また、通報者の氏名を無闇に公表しないなど、プライバシーにも十分配慮した措置も望まれるところです。
*       *       *

 本法は、平成18年4月1日以降になされた公益通報について適用されます。通報された違反行為が、たとえそれ以前の過去の行為であっても、平成18年4月以降の通報であれば本法の対象となります。
 民間企業や行政機関に向けてのガイドラインも公表されています。この法律を通じて、企業の風通しがよくなり、法令を遵守するという自浄作用が一層進むことが期待されています。




ホームページへカエル
「最近の法令改正」目次にもどる
次のページ(会社法制を抜本的に見直し,1つの法に整理・整頓!会社法の制定)に進む