
動物愛護・管理法の改正
H18.6.1スタート
〜ペットは人生のパートナー
豊かな愛情と信頼に応える責任〜

広がるペットブームの一方で、年間約40万匹もの犬やネコが殺処分されているのをご存じでしょうか。こんなに大きくなるとは……こんなに飼いにくいとは……こんなに事情が変わって……でも、あなたなしにはこの動物たちは生きていけないのです。
平成18年6月1日から、「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)」が改正され、動物取扱業や危険な動物の飼育への規制が強化されました。
動物取扱業が、従来の「届出制」から「登録制」へと変更されました。
対象も、従来は飼育施設をもつ業者に限られていましたが、そうした設備をもたないインターネットのオンラインショップやペット美容室、ペットシッター、お散歩代行、出張訓練等々にも広げられ、動物の販売・保管・貸出し・訓練・展示のいずれかを業として行う場合、すべてが登録の対象とされています。
これら業者は、各都道府県知事または政令指定都市の市長の登録を受けなければなりません(法10条)。また、5年ごとに更新手続きが必要です(法13条)。登録・更新に際しては、業務内容や実施方法が適切かどうか、飼育施設があるならその設備や管理方法は適切かどうかなどがチェックされます。

たとえば、動物販売業では、契約に当たって、きちんと書面(電子文書も可)で次のような点を説明する必要があります。種類・生産地・性別・生年月日はもちろん、成熟時の標準体重や体長、平均寿命、適切な飼育環境・餌・運動の方法、不妊・去勢の方法と費用、主な感染症やかかりやすい病気とその予防法、ワクチンの接種状況(すんでいるなら接種証明書を交付)、親や兄弟の遺伝性疾患の状況等々。また、取り扱う動物(哺乳類)は、きちんと社会化期(犬なら3〜12週、ネコなら3〜9週)を親や兄弟などと過ごした後でなければなりません(規則8条)。
さらに、登録に際しては、事業所ごとに、常勤の「動物取扱責任者」を配置することが義務づけられました(法22条)。動物取扱責任者は、実務経験が半年以上あるか、知識・技術について1年以上教育機関で学んだか、専門団体が行う試験に合格しているか、いずれかの資格が必要です(規則3条)。また、1年に1回以上、都道府県知事が行う研修に参加する義務もあります。
こうして登録が認められれば、「動物取扱業者標識」(登録番号等を記載)を、事業所の見やすい位置に掲示することができます(法18条)。
逆に、基準を満たさない場合は、改善を勧告・命令し、従わなければ、登録の取消しや6ヶ月以内の業務停止命令も行うことができます(法19条)。また、この法律に違反して罰金以上の刑を受けるなどした者には、2年間は登録が拒否されるなど(法12条)、登録拒否・登録取消・業務停止命令といったきびしい措置がとられる予定です。
つまり、登録制とはいえ、実質的には許可制に近いきびしい規制内容となりました。なお、平成18年6月1日以前からすでに営業している場合に限り、平成19年5月31日までの1年間に登録すればよいとの経過措置がとられています(法附則4条)。
クマ・トラ・ニホンザル・タカ・ワニなど、人の生命や財産に害を与える危険のある生物が「特定動物」として指定され、これらの動物を飼う場合には、一律に都道府県知事の許可が必要となりました(法26条)。これまでは、都道府県ごとに条例で定めていたため、対象となる種類・規制内容に、地域によってバラツキがあったものを、今法律で統一したものです。
現在のところ、約650種(哺乳類・鳥類・爬虫類)が特定動物に指定されています(くわしくは,環境省動物愛護管理室へ)(別途、特定外来生物として規制されているものがあるので要注意。そよ風137号「外来生物被害防止法」参照)。

許可に当たっては、飼育施設の構造・規模・管理の方法などが適切かどうかがチェックされます。また、すぐに身元が確認できるように、原則として、マイクロチップの埋込みが義務づけられました(鳥類では脚環も可)。
無許可で特定動物を飼うと、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます(法45条)。
特定動物の許可についても、平成18年6月1日以前から飼っている場合に限り、平成19年5月31日まで猶予する経過措置がとられています。
ちなみに、今後、動物愛護・管理のための施策を総合的に推進するため、環境大臣は『基本指針』を作成し、各都道府県では、これに即して『動物愛護管理推進計画』を定めることとなりました(法5・6条)。
* * *
みだりに餌や水をやらず衰弱させるなどの虐待をしたり、動物を遺棄した者には、50万円以下の罰金が科されます(従来は30万円以下)。いっときの、安易な“かわいい”等の衝動だけで生き物を飼って、ヒトの都合で無責任に捨てるなど、とうてい許されるものではありません。ペットは大切な家族の一員です。あなたは家族を捨てますか?
- <ひとくちメモ>
「動物愛護管理法」は、もともと「動物の保護及び管理に関する法律」として、昭和48年(1973年)に制定され、動物愛護を通じて生命や平和の尊さを重んじる心を養う一方、動物による被害からの防止をめざした。毎年9月20日〜26日の動物愛護週間も同法で設けられた。但し当初は、法の対象は、犬・ネコを中心に哺乳類・鳥類に限られていた。
その後、ペットブームでペットの種類が大幅に広がる一方、飼えなくなったペットを安易に“捨てる”ことが社会問題となった。また、動物虐待・殺傷は、殺人など凶悪な犯罪の前兆となりうるとの指摘があり、平成12年(2000年)12月、同法は改正施行され、タイトルも保護から「動物の愛護及び管理に関する法律」と改められた。対象は爬虫類にも広げられ、罰則も、みだりに動物を殺し傷つけた者は1年以下の懲役または100万円以下の罰金と厳罰化された。動物取扱業も届出制として、ようやく規制ができるようになった。
そして近年、再びペットブームが起こり、インターネットなどを通じて、“安易な”売買が一層広がり、トラブルが増えてきたため、今回の法改正となった。


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