日本のビジネスが変わる!
文書の電子保存が原則すべて可能に
e−文書法の制定〜H17.4.1スタート〜


 1980年代、日本製品は高い技術力に支えられて「ジャパン・アズ・ナンバーワン」ともてはやされていました。ところが1990年代、世界は製造業から知識産業へと大きく動いていく中で、日本は次第に取り残されていったのです。社会のIT(情報技術)化を加速度的に進めなければ世界に取り残されてしまう──2005年までに日本を世界最先端のIT国家にすることをめざして、あらゆる分野で取り組みが進められ、それを支えるための法整備が矢継ぎ早に行われてきました。
 今回ご紹介する「e−文書法」もその一環です。

文書の保存コストを大幅に削減しよう

 法律で作成や保存が義務づけられている文書は、実に膨大なものがあります。税務関係書類だけでも、その保存コスト(保管・運搬等の費用)は年間約3000億円に達するといわれます(経団連試算)。こうした文書の保存コストを軽減するために制定されたのが「e−文書法」です。
 この新法により、法律等で義務づけられた書面を、コンピュータなどIT技術を利用して、電磁的方法で保存することが正式に認められました。そのための共通事項を定めたのが「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」、そしてそれだけでは不十分な例外事項について規定整備を行うための「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」、この2つの法律をまとめて「e−文書法」と呼ばれます。

免許証・許可証など除きすべて電子保存OK!

 これまでも、たとえば税務関係書類を作成する際、税務署長の承認を得て、当初からコンピュータでデータを作成していたら、そのまま電磁的記録での保存は可能でした(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)。このほかにも、電子カルテや株式会社の議事録等々、同じように当初からコンピュータで作成していたものについては、そのままの保存が認められる例外的な法規定は徐々に行われてきていました。

 しかし、実際には、税務関係書類だけとっても、見積書・注文書・納品書・領収書あるいは契約書と、相手方と現実に紙でやりとりするものは非常な数にのぼり、これらはすべて紙の原本そのものを紙のまま保存することが必要だったわけです。


 そこで、e−文書法では、原則として、法令(法律・命令等)で保存が義務づけられている文書のすべてについて、電磁的記録として保存することが認められることとなりました。ただ、具体的な対象文書の範囲については、各省庁などが省令レベルで決定することとしています。対象から除外されるのは、基本的に次のような場合だけです。

紙の書面はスキャナ保存
改変防止措置等義務づけ

 保存の方法も、各省庁などが省令レベルで決定します。その方法は、大別すると次の2つとなります。

 もちろん、記録はディスプレイで表示でき、しかも書面に出力できることが条件となります。
 ところで、文書の性格・内容によって、真偽の信憑性など必要とされる度合いはさまざまです。とくに、電磁的記録は改変が容易で痕跡も残さないともいわれます。そこで、その必要な度合いに応じて、文書ごとに、たとえば、消失防止措置をとること、訂正・削除を行ったときその内容を確認できるような訂正履歴の確認ができる措置をとること等々、さまざまな基準が定められました。税務関係書類については、時刻認証とその時点で改ざんされていないことを証明するタイムスタンプを受けることも必要とされています。
 そして、こうした的確な電磁的保存がなされた場合は、書面を保存したのと同等の法的効果が認められることとなりました。

署名・押印に代わって電子署名を付す

 また、電磁的保存が認められたと同時に、それに伴う“作成(記載・記録・調製等)”、“縦覧(閲覧・謄写等)”、“交付(提出・提供等)”の各手続きにおいても、コンピュータ等による電磁的処理がそれぞれ認められました。
 とくに“作成”については、書面なら署名等を要する文書の作成にあたっては、“電子署名”を付すことで署名等に代えることができると定めました(電子署名については「ことば欄」参照)。
 また“交付”に際しては、相手方に、事前にファイル形式など電磁的記録の種類・内容を連絡して、相手方の了承を得たうえではじめて電磁的記録を交付することができます。もし相手方が承諾しないときには、書面での交付が必要です。
 本法では、いずれも、法令で“保存”が義務づけられている文書に限定して、“作成”“交付”についても電磁的処理が認められたものです。あらゆる文書の作成・交付についてコンピュータ化が認められたものではありませんのでご留意ください。

商取引の将来はインターネットで瞬時に



 さらに、本法は、国が制定した法律・命令等に基づいて保存が義務づけられる文書に限った法律で、地方自治体が条例や命令で独自に義務づけるものについては、別途、各自治体ごとに必要な措置をとっていくこととなります。
 今回の法制定により、将来は、郵送・FAXでの紙の発注書や契約書を使った取引はなくなり、電子データや電子伝票がそのままインターネット上でやりとりされるようになると予想されています。
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 私はアナログ人間だからと逃げてばかりもいられません。ITは一過性の流行ではなく、もはや後戻りできない新時代の基礎といえましょう。そして本来、デジタル技術は、地域・年齢・障害等々を超える力を発揮し、私たちの生活を便利に豊かにする技術なのです。まずは便利さを実感するため、身近なところから始めてみてはいかがでしょう。




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