1980年代、日本製品は高い技術力に支えられて「ジャパン・アズ・ナンバーワン」ともてはやされていました。ところが1990年代、世界は製造業から知識産業へと大きく動いていく中で、日本は次第に取り残されていったのです。社会のIT(情報技術)化を加速度的に進めなければ世界に取り残されてしまう──2005年までに日本を世界最先端のIT国家にすることをめざして、あらゆる分野で取り組みが進められ、それを支えるための法整備が矢継ぎ早に行われてきました。
今回ご紹介する「e−文書法」もその一環です。
文書の保存コストを大幅に削減しよう |
免許証・許可証など除きすべて電子保存OK! |
改変防止措置等義務づけ |
もちろん、記録はディスプレイで表示でき、しかも書面に出力できることが条件となります。
ところで、文書の性格・内容によって、真偽の信憑性など必要とされる度合いはさまざまです。とくに、電磁的記録は改変が容易で痕跡も残さないともいわれます。そこで、その必要な度合いに応じて、文書ごとに、たとえば、消失防止措置をとること、訂正・削除を行ったときその内容を確認できるような訂正履歴の確認ができる措置をとること等々、さまざまな基準が定められました。税務関係書類については、時刻認証とその時点で改ざんされていないことを証明するタイムスタンプを受けることも必要とされています。
そして、こうした的確な電磁的保存がなされた場合は、書面を保存したのと同等の法的効果が認められることとなりました。
署名・押印に代わって電子署名を付す |
商取引の将来はインターネットで瞬時に |
[ことば欄]
☆電子署名
コンピュータなどで作られた文書等の電子的・磁気的情報が、自分自身の作成によるものであることを示すための措置で、その内容が改変されていないかどうかを確認することができるものをいう(電子署名及び認証業務に関する法律(=電子署名法)2条1項)。
たとえば、紙の文書に「署名」や「記名・押印」がしてあれば、法的にその文書は真正に成立したものと推定される(民事訴訟法228条4項)。これと同様に、電子署名法が平成13年4月1日より施行されて、電子署名があれば、その電磁情報は法的に真正に成立したものと推定することが認められた(同法3条。ただし、適正に管理されて本人だけが行うことができる電子署名に限る)。この法的な推定規定により、電子商取引や電子政府が飛躍的に発展する礎が築かれたといえる。
また同法により、その電子署名がその人本人が行ったものであることを証明する「認証」業務についても、一定の基準を満たしている民間業者による認証を「特定認証業務」として認定する制度が設けられて、電子署名への信頼が保証されるシステムがつくられた。
さらに、平成16年1月29日からは、公的個人認証サービスも開始されている。これは、各市町村窓口で電子証明書(有効期間3年、手数料500円)を受ければ、これを利用して、行政機関等への申請などの際に、電子署名をした人の本人確認をしてもらえる制度である。いわば、住民票・印鑑証明のデジタル版といえる。電子証明書自体も紙ではなく、住民基本台帳カード(ICカード)の中に書き込まれていて、必要なときにパソコンで読み取らせて使用する。
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