
★育児・介護休業法の改正★ H17.4.1スタート
有期雇用者にも対象拡大
育休最長1歳半まで延長可
子の看護休暇1年に5日

「育児・介護休業法」(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行なう労働者の福祉に関する法律)の一部が改正され、平成17年4月1日からスタートします。
日本の将来が危惧されるほど深刻な少子化・高齢化社会を迎えた今、育児や介護と仕事を両立させるための法律というきわめて重要な役割を担った本法は、どのように改正されたのでしょうか。そしてそれは少子化の歯止めの有効な手段となるのでしょうか。その改正点を見ていくことにしましょう。
女性労働者の現状は、その半数以上が、パート・契約社員・派遣社員などといった、正社員以外の不安定な雇用形態となっています。そこで、育児・介護休業法でも、従来は原則として対象外とされてきた「期間を定めて雇用される者」について、一定の条件を満たせば育児・介護休業がとれることとしました。
- 育児休業では──
- 事業主にすでに(1)1年以上継続して雇用されており、(2)子どもが1歳の誕生日を迎えても引き続き雇用されることが見込まれる場合で、しかも、(3)2歳までの間に期間満了で更新されないことが明らかではないこと、が条件となります。
- 介護休業も同様に──
- 事業主にすでに(1)1年以上継続して雇用されており、(2)介護休業開始予定日から93日後にも引き続き雇用されることが見込まれる場合で、しかも、(3)さらにその後1年間は期間満了で更新されないことが明らかではないこと、が条件です。
この判断基準については、指針(子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針)が出され、その中で次のように示されています。
「引き続き雇用されることが見込まれる」とは、たとえば、契約期間の終わりが子の1歳の誕生日以降であるとか、契約更新が明示されていて現在と同一期間更新されれば1歳を超えるとか、あるいは契約の自動更新が明示されていて上限回数がないか又はあっても上限まで更新されれば1歳を超えるといった場合です。逆に、たとえ契約更新が明示されていても、同一期間あるいは上限まで更新されても1歳に届かないケースは、従来どおり対象外となります。
さらに「更新がないことが明らか」とは、たとえば、契約更新回数の上限が明示されていてその最終日が子の2歳の誕生日までであるとか、契約更新しないことが明示されていて契約最終日が同様に2歳までといったケースです。
ちなみに、従来から、有期雇用者がすべて自動的に法の対象外だったわけではありません。形式的には有期雇用でも、何度も更新を重ねるなどして実質的に期間の定めのない雇用となっている場合には、育児・介護休業の対象とされてきました。そしてこの取扱いは、今改正によっても何ら変更されるわけではありません。
平成12年の実態調査では、有期雇用のうち契約を自動更新している事業所はパートで40%、契約社員で32%に達しています。平成17年4月からの改正で、かえってこうした労働者に雇止めや契約更新回数の引き下げが広がっては大変です。法は育児休業・介護休業等の申請・取得を理由に不利益な取扱いを禁止していますが(10条・16条・16条の4、くわしくはそよ風116号参照)、有期雇用者に対して、契約更新を拒否したり、更新回数の上限を引き下げることも、こうした不利益な取扱いに該当するとして禁止しました。
法律で定められた育児休業期間は、従来、最長でも子が1歳の誕生日を迎えるまでとされてきました(企業や公務員では、3歳まであるいはもっと長く認める独自の制度をもつところもある)。
平成17年4月1日からは、子が1歳をすぎても、どうしても復職が難しい特別の事情があるときには、最長で子が1歳6ヶ月になるまで育児休業を延長することが認められました(法5条3項)。特別の事情として認められるのは、1)保育所に申し込んでいるが入れない場合、2)子を養育する予定だった配偶者が死亡・けがや病気・離婚・次の出産などで養育できないときに限られます。
この育児休業の延長ができるのは、子の1歳の誕生日の前日まで育児休業をしているケースだけです。引き続き妻(夫)が期間を延長するか、あるいは、代わって夫(妻)が育児休業をとることも可能です(この場合に限り、すでに一度育休をとっていても、もう一度取得できる)。
法律で定める介護休業は、従来、介護対象の家族1人について、1度だけ、最長3ヶ月の休業が認められていました(くわしくはそよ風100号参照)。
平成17年4月1日からは、要介護家族1人について合計で93日間以内なら、何度に分けても取得が可能となります(法11条2項)。ただし、2度目以降の介護休業がとれるのは、要介護状態から一旦回復した家族が再び要介護状態になったケースで、要介護状態が継続している場合には対象となりません。また、合計93日の計算には、介護休業に代わって短時間勤務制や始業・終業時刻の繰上げ・繰下げなどを受けた日数も含まれますのでご注意ください。
小学校に就学前の幼児を抱える労働者には、子の看護休暇(病気やけがをした子を看護するための休暇で、病気の種類や程度などにとくに制限はない)を与えることが、事業主に義務づけられました(法16条の2)。従来は努力義務の規定に止まっていたものを、一段階あげて義務づけたものです。
就学前の子をもつ労働者は、1年間(とくに定めなければ4月1日〜翌3月31日)に合計5日まで、申出により子の看護休暇をとることができます。もちろん、年休とは別に与えられる権利です。育児休業や介護休業とは異なり、事前の申出は必要なく、突発的な病気やけがに対応できるようにと配慮されています。また、事業主は忙しさなどを理由にこの申出を拒むことはできません。
もっとも、労使協定を結べば、勤続6ヶ月未満の労働者や労働日数が週2日以内の労働者については除外することが可能です。また、ずる休みをチェックするため、事後に診断書等の提出を求めることもできます。
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政府は、少子化に歯止めをかけるための「子ども・子育て応援プラン」を発表し、10年後を展望した「目指すべき社会」として、育児休業取得率男性10%・女性80%と目標を掲げています。しかし、男性の取得率は現在1%にもはるかに届かないのが実情です……皆さん、ご存じですか?男性の育休は、たとえ妻が専業主婦であっても、産後八週間は取得が可能です。子育てを経験できる貴重なチャンスとして、まずは短期間でも、一度育休を取ってみませんか?
ちなみに、育児休業や介護休業期間中も、雇用保険から給与の40%に相当する額が給付金として支給されます(雇用保険法61条の4〜7)。


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