めざせ−生涯現役?!

年齢制限の求人−その理由を述べよ!
段階的に(H18.4.1より)65歳まで雇用延長

〜高年齢者雇用安定法の改正〜

年齢にとらわれず意欲と能力に応じて働く



 戦後のベビーブームの中で生まれたいわゆる「団塊の世代」が、平成19〜21年(2007〜09年)にかけて60歳を迎えようとしています。
 60歳代前半の男性の7割以上が現役で働いている一方、同世代の完全失業率は7.5%(全体は5.3%)、有効求人倍率は実に0.17倍(全体は0.62倍)ときびしい現実があります。すでに厚生年金の定額部分(基礎年金相当額)の支給開始年齢も段階的に引き上げられており、平成25年(2013年)からはいよいよ残った報酬比例部分についても支給年齢の引上げが始まります(女性は5年遅れで実施。くわしくはそよ風115号参照)。
 少子化社会を迎えて、将来は、労働力人口の5人に1人が60歳以上の時代がくると見込まれます。年齢にかかわりなく、意欲と能力に応じて働き続けることを可能とする社会環境を整備するため、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」が改正されました。
 平成16年12月1日から施行されたのは、以下の施策です。

年齢制限のある求人  やむを得ない理由を明示

 求人に際して、「やむを得ない理由」で年齢制限(65歳以下)をするときには、その理由を書面等の文字にして求職者に示すことが義務づけられました(18条の2)。
 もともと、「雇用対策法」7条で、年齢にかかわりなく均等な機会を与えるよう努める旨の規定はこれまでもありましたが、あくまで努力規定にとどまり、年齢制限は実際に広く行われています。ハローワークの求人でも年齢不問は全体の約15%にとどまり、年齢の上限は平均45歳程度となっています。
 ここでいう「やむを得ない理由」とは、厚生労働省が示す年齢指針ですでに年齢制限が例外的に認められている10のケースが考えられます(下表)。この規定に違反しても罰則はないものの、公共職業安定所長から助言・指導、あるいは勧告がなされることとなります。

表 年齢制限が認められる例外〔年齢指針〕
(労働者の募集及び採用について年齢にかかわりなく均等な機会を与えることについて事業主が適切に対処するための指針)
1 新規学卒者等の募集
2 年齢構成上手薄な特定の年齢層の従業員を補強するため募集
3 何年か経験を積む必要のある業務で定年近くの層を除外した募集
4 年功序列賃金を就業規則で定める事業所で特定の年齢以下を募集
5 特定の年齢層向けの商品・サービスを扱う業務での募集
6 芸術・芸能分野で表現上の必要から限定した募集
7 労働災害の防止上、安全のため特定の考慮が必要な業務の募集
8 体力・視力など加齢による低下があると勤まらない業務の募集
9 中高年齢者に限定しての募集
10 労働基準法等の法律で年齢制限がある業務の募集


再就職に役立つ求職活動支援書の交付


 45〜64歳の一般雇用者(臨時雇・非常勤等は除く)が解雇・定年あるいは早期退職など(懲戒解雇や自己都合退職等は除く)でやめる場合には、その離職者が希望すれば、事業主は「求職活動支援書」を作成・交付することが義務づけられました(17条)。
 作成にあたっては、あらかじめ本人の再就職や求職活動についての希望も聞かねばなりません。記載される主な内容は、(1)職務の経歴(主な業務内容・実務経験・業績・達成事項を含む)、(2)資格・免許・受講した講習、(3)有する技能・知識その他職業能力などで、再就職の際に役立つ事項が記載されることとなります。
 これについても罰則はないものの、職安所長が必要に応じて事業主に報告させて、助言・指導・勧告に当たります。

シルバー人材センターが人材派遣業も経営


 シルバー人材センターは、原則として市町村ごとにひとつ指定され、高齢退職者に、無料の職業紹介をしたり、請負形態で臨時・短期の仕事や軽易な仕事を斡旋して、地域に根づいた活動をしています。
 このシルバー人材センターを、高齢者の総合的な就労支援を行うために一層活用することとし、平成16年12月1日からは、同センターが都道府県労働局長に届け出ることで、「労働者派遣業法」に定める一般労働者派遣事業が行えることとしました(42条2〜4項。本来は厚生労働大臣の許可制)。
 対象となるのはシルバー人材センターの構成員だけで、臨時的・短期的な就業、その他軽易な業務に派遣労働者として働くことができることとなります。

平成18年春より
   段階的に65歳雇用実現


 今改正では、さらに、65歳まで雇用を義務づける制度の導入が、平成18年4月1日から段階的に行われることも決まりました(9条)。
 現在は、定年を定める場合は60歳以上とすることが同法8条で義務づけられている一方、65歳までの雇用は努力義務にとどまっています。実際に、一律定年制を採用している企業のうち、65歳定年はわずか6.9%にすぎません。再雇用制度を設けるなどして65歳まで働く場を何らかの形で確保している企業は全体の71.8%あるものの、原則として希望者全員に65歳までの雇用を保証する企業は28.8%にとどまっています。
 平成25年(2013年)4月から、厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢が引き上げられるようになると、現状の60歳定年制のままでは、再就職もきわめて困難なため、無収入の期間が数年にわたり続くことともなりかねません。
 このため、平成18年4月1日より、65歳未満の定年制をとる事業所については、

のいずれかをとることが義務づけられることとなりました。
 といっても、一斉に義務づけられるわけではなく、種々の経過措置がとられます。

表 雇用年齢の段階的引上げ
平成18年(2006年)4月1日〜
平成19年(2007年)4月1日〜
平成22年(2010年)4月1日〜
平成25年(2013年)4月1日〜
  62歳
  63歳
  64歳
  65歳 

 まず、年齢については、左表のように段階的に引き上げることとなります。厚生年金の支給開始が61歳へと引き上げられる平成25年4月には、本来の65歳へと完全実施される予定です(附則4条)。

 さらに、(2)継続雇用制度については、希望者全員に保証する必要はなく、一定の基準(たとえば職種や社内資格など)で限定することが可能です。ただしその際は、労働者の過半数で組織する労働組合か労働者の過半数を代表する者と書面で協定を結ぶことが要件とされます。しかし、この要件についても、うまく協定がととのわない場合、とりあえず平成21年3月31日までは、就業規則などで事業主が一方的に基準を決めることができるとしました(附則5条。さらに300人以下の中小企業については、平成23年3月31日までOK)。しかもこの猶予期間は、検討の余地があるものとして延長の可能性も残されています。

*         *         *

 景気が十分回復しない現状で、高齢者の雇用環境はきびしいものがあります。若年層のいわゆるフリーターやニート問題と合わせ、さらに進む少子化・高齢化社会に適応する新たな雇用形態が模索されています。




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