交通事故をなくそう!!道路交通法の改正
携帯電話運転中に見ただけでも処罰(H16.11.1施行)
違法駐車使用者にも反則金(H18.夏施行予定)
「私は運転していなかった…」の逃げ得防止



 悪質・危険な運転者に厳罰を科した平成14年の「道路交通法」改正(そよ風117号参照)以降も、交通事故をめぐる環境は死亡者数こそ減少しているものの、平成15年には事故発生件数・負傷者数ともに過去最悪を記録するなど、依然、深刻な事態が続いています。
 今回の改正の大きな柱は、これまでも規制されてきた危険な運転のうち、 (1)運転中の携帯電話の使用(2)飲酒運転対策(3)暴走族対策の3つについてさらに罰則を強化するもので、いずれも平成16年11月1日から施行されています。

携帯電話  運転中は、見ない!一切使わない!

 すでに平成11年から、運転中の携帯電話の使用は禁止されています(そよ風103号参照)。しかし、罰則(3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金)を科されるのは、実際に交通の危険を生じさせた場合、つまり交通事故を起こしたときで、しかも運転者が携帯電話の使用を認めた場合に限られていました。
 現在、携帯電話はさらに爆発的に普及しています。そこで今改正では、これまでの罰則に加えて、運転中に携帯電話等を手に持って使用することや、メールの送受信のために画像を注視する行為自体が禁止されました(71条5号の5)。この規定に違反すると、反則点数が1点、反則金は大型車で7000円、普通車及び自動二輪で6000円、原付自転車で5000円が科されます。さらにこの反則金を支払わない場合には、5万円以下の罰金という刑罰が科せられることになりました(120条1項11号)。
 ちなみに、今改正でもハンズフリー装置を使った通話は規制が見送られましたが、通話の内容に気をとられるとどうしても運転中の注意力が低下してしまいます。基本的に運転中は電源を切るよう心がけましょう。

厳罰はイヤだから拒否!?  呼気検査の拒否にも30万円以下の罰金

 飲酒運転に関しては、平成14年の法改正で罰則や行政処分が大幅に強化されました(そよ風117号参照。たとえば、酒酔い運転は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金、酒気帯び運転は1年以下の懲役又は30万円以下の罰金等)。しかし、飲酒運転の呼気検査拒否に対する罰則が5万円以下の罰金のままであったため、飲酒運転に対するより厳しい処罰を恐れて、呼気検査を拒否する者が1年間に52%も増える結果となりました。
 そこで、呼気検査拒否に対する罰則も、酒気帯び運転と同じ30万円以下の罰金に引き上げられました(67条6項・119条の2)。

たとえ被害者はなくとも集団暴走は現行犯逮捕!

 集団暴走行為や騒音運転については、110番件数が年間10万件を超えています。こうした暴走族対策への規制も強化されました。
 これまでは、「集団暴走行為」を検挙するためには、それで実際に迷惑を受けたり、危険な目に遭った人が現場にいる必要がありました。このため検挙が困難となり、暴走族の取締りに大きな支障をきたしていました。
 今改正では、取締りの現場に被害者がいなくても、集団暴走行為そのものを現行犯逮捕することができることとしました(68条、2年以下の懲役又は50万円以下の罰金)。
 また、これまで罰則のなかった「急発進」「空ぶかし」などの騒音運転に対しても、新たに5万円以下の罰金を科し、消音器(マフラー)の不備や改造に対する罰則は、5万円(従来は2万円)以下の罰金に引き上げられました(71条の2、120条1項9号)。

高速道路でのバイク2人乗り解禁

 一方、善良な運転者には便宜をはかることとして、要望の多かった、高速道路における自動二輪車(バイク)の2人乗りを、一定の条件のもとに認めることとしました(71条の4、平成17年4月1日施行)。
 対象となるのは、20歳以上で、大型自動二輪免許又は普通自動二輪免許を受けていた期間が3年以上の人に限られます。また、安全確保のため、警察官は、条件に違反して2人乗り運転をしていると思われる者を発見した場合には、それを停止させ、必要な措置をとることができることとしました。違反した場合の罰金は、10万円(現在は5万円)以下と引き上げられています(119条の4)。

駐車違反の取締り強化策  ・使用者も違反金負担
 ・取締りを民間に委託

 さらに、平成18年夏までに、違法駐車への取締りが大きく改正される予定です。
 違法駐車は交通事故や渋滞の原因となるほか、緊急車両の通行の妨げにもなる大きな問題です。しかし、違法駐車の大半は運転者が車から離れているわけで、違法駐車をした者の特定が難しい(自分は運転していなかったと言われればそれ以上の追求が困難)ことなどから、十分な取締りが行えませんでした。
 そこで、運転者がわからない場合には、車検証に記載されている使用者に放置違反金を科すこととしました(51条の4。大型車3万5000円、普通車・大型二輪2万5000円、小型車・原付1万5000円)。これを支払わない場合は、車検証の切替えを拒否したり(51条の7)、常習違反者には一定期間の当該車両の使用禁止(75条の2)など、強硬手段が可能となります。
 また加えて、増加する駐車違反の取締りを効率よく処理するため、民間の力を導入することとしました。都道府県公安委員会の登録を受けた民間法人に、駐車違反の確認とステッカーの取り付けを委託できるようにするものです(51条の8)。実際にこれら駐車違反対応業務を行う「駐車監視員」は、一定の講習を修了した者に交付される資格者証を携帯しなければなりません(51条の12第3項)。

免許区分の見直し  平成19年夏より「中型免許」登場

 現行の自動車区分は、普通自動車(車両総重量8トン未満)と大型自動車(8トン以上)の2区分です。ところが、最近の死亡事故は、車両総重量5トン以上8トン未満(大きな普通車)及び11トン以上(特に大きな大型車)の自動車が起こす割合が非常に高くなっています。これは、大型化しているこれらの自動車の運転に必要な技能や知識の不足が大きな原因と考えられます。
 そこで、平成19年夏までに、新しい自動車の種類として「中型自動車(車両総重量5トン以上11トン未満)」を設け、これを運転しようとする者は中型免許を受けなければならないこととする予定です(84条・88条)。
 また、それぞれの免許試験の受験資格についても下図のような改正がなされ、路上試験や取得時講習の受講が義務づけられます(90条の2)。なお、改正法施行前に現行の大型または普通免許を受けている人は、施行後も今までと同じ範囲の自動車を運転することができます。

表 平成19年夏から施行予定の免許の種類   ※( )内は現行の規定
第一種免許受験資格車両総重量最大積載量乗員定員
大型免許21歳(20歳)以上
運転経験3年(2年)以上
11トン以上
(8トン)
6.5トン以上
(5トン)
30人以上
(11人)
中型免許
☆新登場☆
20歳以上
運転経験2年以上
5トン以上
11トン未満
3トン以上
6.5トン未満
11人以上
30人未満
普通免許18歳以上5トン未満
(8トン)
3トン未満
(5トン)
11人未満

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 現代人にとって自動車・道路の恩恵ははかり知れないほど大きく身近なものです。しかし、毎年8000人近くもの人が交通事故によって亡くなっているという事実をご存じでしょうか。私たちの生活になくてはならない便利な自動車が一歩間違えれば凶器と化してしまうという事実を意識し、歩行者も運転者も一人一人がルールを守って気持ちよく道路交通を利用できるように心がけましょう。




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