ニュースの目


〜独占禁止法の差止訴訟の判決〜

不公正な取引でも…
”著しい”損害なければ泣き寝入りしかない?!




[H16年6月10日付 産経新聞より]
「即売会社独占」業者の訴え棄却
関空内の新聞販売

 関西国際空港島内で新聞販売を独占しているのは独禁法違反にあたるとして、大阪府泉佐野市の新聞・雑誌販売業「エアポートプレスサービス社」(APS社)が、産経新聞など全国紙5社の各即売会社が共同出資する同市の「関西国際空港新聞販売」(関空販社)など6社を相手取り、空港や旅客機用の新聞販売を中止するよう求めていた裁判で、大阪地裁(揖斐潔裁判長)は9日、「新聞の販売などを差し止めるための要件である「著しい損害」は認められない」などとして、APS社の訴えを棄却した。……


 「不公正な取引方法」で「許せない」と差止めを求めたのに、「著しい損害はない」として訴えを認めなかった裁判ですが、皆さまはいかがお考えですか。
 いま、朝日新聞・毎日新聞・読売新聞・産経新聞・日本経済新聞は5大全国紙として高い評価を得ています。これらの新聞は、いずれも1社ずつ、専属の新聞販売会社、つまりその新聞を小売店に卸す卸売会社を抱えています。先年、これら卸売会社5社が共同出資して、資本金1億円の新聞販売会社をつくり、関西空港島では、この新会社以外とは新聞の取引をしないことを申し合わせました。
 これでは、この新会社の設立以前から関西空港島で新聞を販売していた会社(この裁判の原告)は5大全国紙を仕入れることができず、商売ができなくなります。原告会社は、それまでのお客をつなぎ止めるために、卸売5社から新聞を買い入れている空港島の外の業者に頼むなど無理をして、何とか新聞を調達して苦労を重ねてきたものです。そして、平成12年の独占禁止法の改正により「不公正な取引方法により著しい損害を受けたときには、消費者や業者は差止めを求める訴訟ができること」となったのを機会に、この差止め訴訟に踏み切ったのです。
 ところが、裁判所は、新聞の仕入れを拒絶された状態であっても、原告会社の主張は「もうけ足りない」といっているにすぎず、原告には著しい損害がないとして、原告を敗訴としました。判決は、このように、新聞を販売する会社が正常に新聞の仕入れができない状態があるにもかかわらず、なお著しい損害がないとするのです。それでは、どんな場合に著しい損害といえるのでしょうか。著しい損害とは金額だけの問題なのでしょうか。その金額とはいくらなのでしょうか。
 新聞の小売り会社である原告にとって、全国紙5紙が正常に仕入れできない状態は、会社の根幹にかかわる大きな問題です。本来、これらの新聞は、いずれも社会の公器を自負しており、世の中のルールや秩序にも影響や責任を持つ存在です。その全国紙が直営する卸売会社が、共同で不公正な販売方法をとり市場の独占をはかり、今回の判決はそれを追認するものとなりました。この判決は、差止め訴訟の根本である「不公正」には触れず、「著しい損害」はないと判断して問題解決を回避したものです。
 この訴訟は、現在、大阪高等裁判所に控訴されています。
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 この裁判についてくわしくお知りになりたい方は、次のホームページをご覧ください。
http://www.osakajournal.co.jp/aps/index.html



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