司法制度改革次々と――
国民の期待に応える司法へ
裁判迅速化法制定
〜第1審は2年以内に終結へ努力〜
H15.7.16施行


国民に身近な司法をめざして


 わが国の司法制度は戦後半世紀以上にわたり大きく見直されることなく、裁判といえば時間とお金がかかるもの、とっつきにくいものとして長く放置されたまま、十分な改革が行われませんでした。そのため、国民の紛争を解決するうえで「司法」はその役割を果たしえず、国民から乖離したものとなってきました。
 そこで、21世紀の司法のあるべき姿を論議するため、平成11年7月、「司法制度改革審議会」が設置されました(そよ風101号参照)。ここでなされた論議を踏まえて、今、司法制度の抜本的改革がまさに行われようとしています。その改革の柱は、次の3つの基本方針です。

(1) 国民の期待に応える司法制度の構築
 国民が容易に利用でき、しかも迅速・適切で実効性のある司法にする。
(2) 司法制度を支える体制の充実強化
 法曹人口の拡大や法曹養成制度の改革など、迅速・適切な司法を支える人的物的体制を整える。
(3) 国民的基盤の確立
 国民も司法制度に関与することを通じて、司法への理解・信頼を高める。

 そして平成14年3月19日には、司法制度改革推進計画」が定められ、平成16年11月30日までの間に実施予定の具体的な改革計画が発表されています。
 平成16年4月には、法科大学院による新たな法曹養成がスタートすることは広く知られているところです(ロースクールことば欄参照)。このほかにも、平成16年春から相ついで司法制度が大きく変わろうとしています。
 とりわけ、裁判の迅速化についての基本的な方向を定めたのが「裁判の迅速化に関する法律」(平成15年7月16日施行)で、この法律に基づいて、具体的な制度の改正・整備が行われることとなります。

第1審は2年以内に終わらせたい!


 思い出の事件を裁く最高裁──こんな言葉が一国の首相から出るほど、裁判の長期化は大きな問題です。

 裁判所の努力により、裁判にかかる時間は年々減少しており、一審の審理期間の平均は、民事事件で8.5ヶ月、刑事事件で3.3ヶ月となっています。しかし2年を超えるケースも、民事事件では7.2%もあり、とくに医療関係事件に限ると平均30.4ヶ月を要するなど、専門的な知識を必要とする訴訟については依然として長い時間がかかっています。このため、特許訴訟などでは、企業がわざわざ外国で訴訟を提起することもあるほどです。
 こうした現状を打開するため、裁判迅速化法では、第一審の審理は、民事・刑事ともに、2年以内に終わらせることを目標にすることが明記されました(2条1項)。そのために、訴訟手続きも整備し、また法曹人口(裁判所や検察庁の人員も含めて)も充実させ、弁護士体制の整備を行うこととなります。もっとも、迅速が拙速になっては意味がありません。あくまで当事者の権利が害されることのないよう、公正で適正な手続きが確保されるべきことはもちろんです。

裁判の当事者も迅速化に向け誠実な努力を!

 国は、裁判迅速化のための各種施策を決定し、政府はそれを実施するための法的・財政的措置をとること(3・4条)、そして日本弁護士連合会も弁護士体制の整備に努めることが規定されました(5条)。

 また、一審の審理2年以内の目標を達成するため、裁判所はもちろん、原告や被告といった当事者や代理人・弁護士も、恣意的に遅延させることなく、裁判手続き上の権利を誠実に実行することが盛り込まれています(6・7条)。
 さらに重要なポイントとして、最高裁判所は、裁判期間の実情を調べて長期化の原因を調査分析するなど、裁判の迅速化実現に向けて多角的な検証を行うこととなりました。この結果は、2年ごとに国民に公表され、新たな施策に反映されることになります(8条)。
 今法は、施行後10年たった時点で実施状況を検討し、必要な措置がとられる予定です(附則3項)。
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 こうして裁判迅速化に向けての原則が作られたのを受けて、具体的な法整備が急ピッチで進められています。
 早く、しかも適切で、実効力のある解決をめざすべく、「裁判所法等の改正」「民事訴訟法の改正」「民事執行法等の改正」「人事訴訟法の制定」「仲裁法の制定」等々、平成16年春から、相ついで新たな制度がスタートします。「そよ風」でも、これらの施行にあわせて、順次解説を行う予定です。ご期待ください。




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