緊急事態──ヤミ金を許すな!!
違法な高利の要求に懲役5年・罰金1000万円!
年利109.5%を超える契約は無効!
〜貸金業法・出資法の一部改正〜
H15.9.1一部施行
H16年初めにも完全実施


ヤミ金がつくり出す悲劇−広く社会問題に


 融資は断ったのに勝手に口座にお金を振り込んできた(押し貸し)……借りてもいないのに返せと返済を迫られた(空貸し)……こんな途方もないことが現実に行われています。しかもその利息は、1週間や10日で100%など、年率にすると数千〜数万%といったもので、不法な高利貸しを意味したトイチ(10日で1割の利子)は今や甘っちょろい死語となりました。手元不如意でほんの2〜3万円借りたつもりが、あっという間に数十万、数百万円に達します。返しても返しても追いつかず、しかもその取立は、家族・職場・隣近所まで巻き込んだ、暴虐をきわめたきびしいもので、人々を自殺にまで追い込むことさえあります。さらに、業者間では名簿が売り買いされて、返せば返すほど、かえってカモにされて他の業者からも狙われるようになる──これでは、貸金とは名ばかりで、現実にはお金を悪辣に脅し取る立派な犯罪といえましょう。
 ところがこうした状態が、貸金についての法律があるにもかかわらず、現実には広く許されてきたのです。昨年(平成14年)摘発された業者はたった238件、その被害者が何と12万2000人です。「ヤミ金」として全国で刑事告訴・告発された業者が5000にのぼることを考えれば、実際の被害者は100万人以上に達することは明らかです。今やヤミ金は、不景気な時代の暴力団の資金源として活用され、その4分の1は暴力団関係者だともいわれています。
 新聞の折り込み広告を見て、軽い気持ちで電話したら……被害者はけっして特殊な人たちではありません。私たちの身近な日常に危険はひそんでいるのです。

無登録業者にも、即、対応可能に


 従来から、貸金業は登録制がとられ、登録しない者の営業は禁止されてきました。そのため、法の規定は、広告・貸付・取立といった個々具体的な規制については、登録業者だけが取り締まりの対象とされていました。このため、かえって無登録業者は、営業の全体が把握できないと警察は摘発に踏み切れないという矛盾がありました。無登録業者は、違法な個々の行為だけで迅速に取り締まることはできず、しかも「090金融(携帯電話だけで営業するヤミ金)」に代表されるように、居所すらはっきりつかめないまま現実には野放し状態となっていました。
 また、「登録」といっても名ばかりで、誰でもが安易に登録できるため、ほとんどチェック機能が働かず、現実に摘発されたヤミ金の半数近くは登録業者であり、かえって信用させるために登録して違法行為を繰り返すありさまです。
 ヤミ金による被害が急増し、深刻な社会問題となったため、このほど緊急に、「貸金業の規制等に関する法律」(貸金業法)及び「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」(出資法)等の一部が改正されました。
 すでに平成15年9月1日からは、無登録業者の広告・勧誘が禁止され、各罰則が大幅に強化されています。また来年からは、貸金業の登録制度についてもきびしい規定が導入されることになります。

109.5%を超える契約は無効です!

 平成15年9月1日よりすでに施行されているのは次のようなものです。

(1) 無登録業者の広告・勧誘の禁止(貸金業法11条2項)
 無登録業者は、広告・勧誘をしただけで、100万円以下の罰金に処せられます。
 ちなみに従来は、登録業者の、不特定多数を対象とした「広告」についてのみの規制にとどまっていましたが、多重債務者や破産者といった特定の者を狙ったDM(ダイレクトメール)が横行するようになったため、広告に加えて「勧誘」も規制対象とされました。
(2) 利息年109.5%を超える契約は無効(同42条の2)
 年109.5%(閏年は109.8%、1日当たり0.3%)を超える利息の契約は無効であると、法律に明記されました。したがって、こうした高利の契約では、利息(礼金・割引料・手数料・調査料等の名目も含む)については一切支払う必要はありません
 さらに、具体的事情によっては、民法の不法原因給付に該当し、元本の返済も不要な場合があり得ます。また、年109.5%以下の利息であっても、押し貸しなど事情によれば、民法の公序良俗違反として無効となる場合も、当然あります(「そよ風」121号参照)。

違法な高利の要求――即、懲役5年・罰金1000万円

(3) 出資法違反の高金利は支払を要求しただけで厳罰(出資法5条3項、8・9条)
 貸金を業として行う場合は、年29.2%(閏年は29.28%、1日当たり0.08%)が上限の金利として定められています。従来は、この金利を超えて受け取ったときのみ、処罰の対象でした。今改正により、この29.2%を超える契約をしたり、支払を要求するだけで、懲役5年以下または罰金1000万円以下(併科あり)となります。法人の場合は3000万円以下の罰金が科されます。貸金を業としない者でも、前述の109.5%を超えた金利を契約・要求したときには同じく処罰されます。
(4) 無登録営業には罰金1億円(貸金業法47・51条)
 無登録業者による営業は、懲役五年以下または罰金1000万円以下(併科あり)。しかも、法人については1億円以下の罰金と、処罰がさらにきびしくなりました。
(5) その他貸金業の規制を一斉に厳罰化(同法47〜51条)
 違法な取立行為には、懲役2年以下または罰金300万円以下(併科あり)。また、契約書面を不交付、あるいは白紙委任状をとれば、懲役1年以下、罰金300万円以下(併科あり)など、罰則が一斉に引き上げられています。

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 これら、平成15年9月1日からすでに施行された厳罰により、無登録業者は広告・勧誘しただけで罰金100万円、違法な高金利は要求しただけで懲役5年または罰金1000万円(法人3000万円)と、ヤミ金は経済的に割に合わないと、違法な業者が減少することが期待されています。

来年からはさらに登録制度もきびしく


 さらに、許可制とすることは見送られましたが、来年(平成16年)からは、貸金業者の登録制度なども次のとおりきびしくなります。

(a) 暴力団員等の排除(貸金業法6条、13条の2・3)
 暴力団員等(足を洗って5年以内の者を含む)はもちろん、これらに支配されている者、これらを業務の補助としてでも使用するおそれがある者は、すべて登録できません。
 もし、暴力団員等を従事させたり、取立などの補助者として使用したり、暴力団員等に債権譲渡などをした場合は、1年以下の懲役または300万円以下の罰金(併科あり)。
(b) 登録に際して本人確認(同法4条)
 登録の際には、免許証など本人を確認できる書面を付け、さらに営業所・事務所の所在地を証明する書類も付けて、虚偽登録を防止します。
(c) 一定の財産的基礎を登録要件に(同法6条)
 法人で500万円、個人で300万円の手持ち資金の保有を義務づける見込みです。
(d) 各営業所・事務所ごとに貸金業務取扱主任者を設置(同法4条・24条の7)
 この主任者は、定期的に貸金業協会等が主催する研修を受け、法令の遵守・業務の適正化のために助言・指導します。選任義務違反は100万円以下の罰金。
(e) 証明書の携帯義務(同法13条の2)
 貸金業者の使用人・従業員は、仕事中は証明書を携帯しなければなりません。違反者は100万円以下の罰金。
(f) 広告・勧誘をさらに規制(同法15・16条)
 広告・勧誘に際しては、登録の際の電話番号以外の番号は記載できなくなります。したがって、090など携帯電話の番号が掲載された広告・勧誘はすべて違法です。また、著しく事実に相違する説明などをしたときは、1年以下の懲役または300万円以下の罰金(併科あり)など。
(g) 違法な取立行為を例示(同法21条)
 法文の中に違法な取立行為を類型化して例示することで、警察の取締りを容易にします(従来の通達を法に盛り込んだもの、「そよ風」123号参照)。また、文書や電子メール等で催告する際に記入すべき事項も定められ、脅迫的文書を送りつけることは困難となります。ちなみに、違法な取立行為は2年以下の懲役または300万円以下の罰金(併科あり)。

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 現在のヤミ金の跋扈には、「高利を承知で借りたほうが悪い」のひと言では片づけられない悲惨・不法な現状があります。もし、あなたがヤミ金に巻き込まれたら、不法な行為には毅然とした態度を。そして一人で悩まず、すぐにお近くの警察や法律事務所等に出向いて相談・対処しましょう。一方、安易な無責任な貸付を繰り返し、多重債務者を多数つくり出している一般の消費者金融のあり方そのものも問題にされねばなりません。




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