民営化への第1歩
日本郵政公社スタート
郵政事業に参入する事業者募集中?!

日本郵政公社法・民間事業者による信書の送達に関する法律等〜平成15.4.1施行〜



 “真っ向サービス”というキャッチフレーズを掲げ、『日本郵政公社』が平成15年4月1日よりスタートしました。以来、この公社が郵政事業を運営し、民間事業者と競争することにより、より一層質の高いサービスの提供を目指します。
 明治4年に前島密によって現在の郵便制度が創設されて以来、約130年間、郵政事業は国が独占して行ってきました。しかし、平成13年の中央省庁等の大改革で行政のスリム化が実施され、郵政も将来的には民営化されることが議論されています(そよ風109号参照)。その第一歩として、これまでの郵政事業庁に代わり、国が100%出資する、「日本郵政公社法」に基づく特殊法人として、日本郵政公社がいよいよスタートしたものです。

これなら安心! 郵便局は今までどおり

 日本郵政公社は、国が行っていた郵政事業をそのまま引き継ぎ(同法19条)、郵便・郵便貯金・郵便為替・郵便振替・簡易保険の5つのサービスを全国にあまねく公平に提供します。
 全国約3200の市区町村すべてにある、約2万4700にのぼる郵便局のネットワークもそのまま活用され、郵便局が減少することはありません。逆に、全国のローソン約7700店舗にもポストが設置されることになり、平成15年1月1日から、すでに、その設置が徐々に始まっています。
 実際のサービス内容についても、基本的に変更はありません。もちろん、従来どおりの切手が使えますし、国民がとくに何か手続きをしなくても、すべての業務が自動的に公社に引き継がれることになります。たとえば、簡易保険の証書や郵便貯金の通帳の書き換えなども必要ありませんし、加入限度額や預入れ限度額も変わりません。また、保険金・貯金等の支払いについては引き続き国が全額保証します。

日本郵政公社になると何が変わるの?

 日本郵政公社は、国から独立した法人として、経営の責任は自らがとらなければなりません(独立採算制)。
 法令で規制されるのは、郵便の種類・大きさ・重さについてだけです。それ以外はすべて公社が独自の判断で決めることになります。もちろん、郵便料金、郵便貯金の利率、簡易保険の約款・保険料も公社が定めます。とはいえ、これらは国民の生活に大きく影響するものですから、料金等の決定には総務大臣の認可が必要であるとしました。これからは、国会審議に基づく予算にかわって企業会計が導入され、すべての事業で黒字を出すべく、4年の中期計画の実現に向けて努力が始まりました。
 ふみカードの販売などサービスの一部には廃止されるものもありますが、一方、時代に沿った新しいサービスが始まります。全国一律500円の新小包サービス・プリクラ切手サービス・封筒の販売など、“郵便離れ”に歯止めをかけようとアイデア商品が考えられています。
 なお、事業が適正かつ確実に実施されるよう、郵政公社の職員(約30万人)は、引き続き国家公務員とすることが決められました(50条)。

郵便事業への民間参入とサービスへの不安

 郵政公社の発足にあわせて、郵便事業への民間参入が可能となりました。
 しかし、すでに郵便事業に民間が参入している諸外国では、採算のとれる大都市部のみでサービスが行われ、過疎地域での取扱が行われないといった問題も生じています。日本でも、無制限に民間参入を許すと、ダイレクトメールや都市部の事業など、利益のあがる部門だけを民間企業が行い、郵政公社は採算のとれない部門だけを引き受けることにもなりかねません。
 郵政事業では、すべての国民に公平に、なるべく安い料金でサービスを提供するという、公的な側面が確保されなければなりません。そこで、「民間事業者による信書の送達に関する法律」が制定され、民間参入の方法が次のように定められました。

一般信書便事業と特定信書便事業

 民間事業者が参入できる事業を、「一般信書便事業」と「特定信書便事業」の2類型に分けました。
 「一般信書便事業」とは、取り扱える信書に何ら制限がなく、あらゆる信書を扱う自由な営業が可能です。ただし、前述のとおり高利益の部門だけを営業して他を切り捨てることがないように、きびしい規制が設けられています。まず、全国各地に信書差出箱(ポスト)を設置し、いつでも簡単に信書を出すことができるようにしなければなりません。また、1週間のうち6日以上配達を行うよう定められ(9条)、料金も、全国均一料金、定率・定額制で事前に総務大臣に届け出ることとし、25グラム以下の料金は80円を超えないこととされました(16条)。さらに原則として、長さ40cm・幅30cm・厚さ3cm以下、重さ250g以下の大きさの信書なら、差し出された日から3日以内に日本全国に送達できることが必須とされます(2条4項)。こんなきびしい条件ですから、今のところ、この一般信書便事業に参入しようとする動きはまったくありません。
 一方、「特定信書便事業」とは、次のいずれかに限定したサービスだけ行うことができるものです(2条7項)。

 この事業では、全国展開をする必要などもなく、総務大臣の許可を受けて、それぞれの業者が独自のアイデアで営業することができます。

公社・民間を問わず信書の秘密は守ります

 ちなみに、憲法においても、「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」と明記しています(21条)。これを受けて、「郵便法」では、郵便物の検閲の禁止と信書の秘密の確保を保障しています。
 郵便事業が公社や民間の手に委ねられることになったとはいえ、信書の秘密の保護は確実に行なわれねばなりません。
 そこで、郵政公社でも、民間の信書便事業においても、この信書の秘密を侵した場合には、たとえ未遂であっても、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられ、とくに業務に従事する者の場合には、2年以下の懲役または100万円以下の罰金とさらに重い罪となります。また信書を、正当な理由なく開封・棄損・隠匿・放棄したり、受取人でない者に交付した場合には、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。
 とくに、信書便事業では、秘密の保護の対象である信書であることを見やすく表示するよう義務づけています(20条)。
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 「民間事業者による信書の送達に関する法律」は5年後に見直され、必要な措置をとることとしています(附則3条)。
 国鉄がJRに、電々公社がNTTに、専売公社が日本たばこに完全民営化されたように、日本郵政公社も完全民営化の道をたどるのか──まだ議論は続いています。




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