
障害者の自立を支えるパートナー
身体障害者補助犬法の制定
公共施設・交通機関(H14.10.1〜),買物・食事・宿泊(H15.10.1〜)に同伴OK!

あなたは犬をお飼いですか。ペットブームといわれる中で、犬を飼う家庭も多くなっています。しかし、ペットとは別に、身体障害者の目となり、耳となり、手足となって、その生活を助けている犬たちがいます。こうした障害者のパートナーである補助犬について、このたび「身体障害者補助犬法」が制定されました。
この法律の対象となるのは、今のところ次の3種類に限られています(法2条)。
- (1)盲導犬
- 視覚障害者の歩行を補助。
- (2)介助犬
- 肢体不自由者のために、物を拾ったり運んだり、服の着脱や体位の変更を助けたり、車椅子を引っ張ったり、扉の開閉やスイッチ操作をしたり……緊急の際には救助の要請もする。
- (3)聴導犬
- 聴覚障害者のために、ブザーや電話など種々の音を聞き分け、必要な情報を伝えたり、ときには音源へ誘導する。
日本では、このうち、盲導犬(全国で895匹)については、何と「道路交通法(14条1項)」で法的に定められてきました。国家公安委員会が指定した公益法人・社会福祉法人(現在9法人)で、必要な訓練・認定を受けていれば、交通機関などの同伴も自由でした。
これに対して、介助犬(26匹)・聴導犬(19匹)については、従来、法的な定めがなく、一般のペットと同じ扱いがなされてきました。このため、訓練もまちまちで、交通機関などに同伴するには、その会社・機関ごとの試験を受けて許可を得ていました。
今回の法制定により、盲導犬も、介助犬も、聴導犬も、身体障害者の生活を補助する犬として同様に法的に整備されることになったものです。さらに、将来、新たな役割を果たす犬ができた場合には、法の対象を拡大することが約されています(附則5条)。
平成15年10月からは、スーパー・遊園地へも同伴可 |

補助犬となるためには、基礎訓練(他人に迷惑を及ぼさないための服従・排泄等の基本動作)のほか、盲動犬なら歩行誘導訓練、介助犬なら介助動作訓練、聴導犬なら聴導動作訓練を行い、最後に、身体障害者本人との合同訓練を行うことが義務づけられます(施行規則1〜3条)。その際、医師や獣医師その他専門家との連携も明記されたほか、必要に応じての再訓練も定められました(法3・4条)。
そして厚生労働大臣が指定した公益法人・社会福祉法人が、この補助犬の能力を認定し(法15・16条)、合格すれば、施設・設備への同伴が認められ、拒否されることはありません。
具体的には、まず、法施行日の平成14年10月1日から、全国どこの公共施設・事業所、公団・公営住宅、公共交通機関(鉄道・バス・船・飛行機・タクシーなど)のいずれについても、補助犬の同伴を拒むことはできなくなりました(法7・8条)。

そして、平成15年10月1日からは、民間の施設でも、不特定多数が利用する施設については(デパート・スーパー・商店・飲食店・遊園地等々)、いずれも補助犬の同伴を拒むことができません(法9条)。
もっとも、民間の事業所で障害者が勤務するとき、あるいは民間住宅に障害者が入居するときについては、法律は努力義務にとどめました(法10・11条)。

一方、補助犬を同伴する障害者にも義務が課されています。
まず、同伴に際しては、「盲導犬」「介助犬」「聴導犬」の各表示をすること(法12条)、補助犬が他人に迷惑をかけることがないよう十分管理すること(法13条)、これができなければ同伴の拒否もありえますし、補助犬としての認定の取消もありえます。
そして、補助犬に愛情をもって接し、犬を清潔にしてやり健康管理(予防接種や検診等)に努めることが定められました(法21・22条)。もちろん、国民も、障害者に対して必要な協力をするよう努めることは当然です(法24条)。
なお、当分の間、盲導犬については、従来どおりの扱いが続けられることになっており、国家公安委員会が指定した法人がその認定に当たります(附則2条)。
また、法律の中の補助犬の訓練についての規定は、平成15年4月1日から施行されることになります。そして、介助犬・聴導犬は、認定をうけなくても届出をすることで、平成16年9月末日までは、とりあえず「介助犬」「聴導犬」の表示をすることができることとされました(附則3条)。
国家公安委員会による「盲導犬」の指定団体
・(財)北海道盲導犬協会 電話011−582−8222
・(財)栃木盲導犬センター 電話0286−52−3883
・(財)アイメイト協会 電話03−3920−6162
・(財)日本盲導犬協会 電話03−5766−3871
・(財)中部盲導犬協会 電話052−382−6776
・(福)日本ライトハウス(盲導犬訓練所)
電話0721−72−0914
・(財)関西盲導犬協会 電話075−383−5638
・(社)兵庫県盲導犬協会 電話078−995−3481
・(財)福岡盲導犬協会 電話092−714−3169 |
なお、平成14年12月現在、
「介助犬」「聴導犬」の指定団体はまだない。 |
もっとも歴史の古い盲導犬ですら、日本ではまだ895匹しかいません(アメリカでは約1万匹)。まして介助犬や聴導犬は、資金のないNPO組織や民間団体で訓練されているのが実情です。補助犬を1匹育てるには約300万円かかるといわれます。法制定によりおよそ半分は国からの助成金が受けられることになりましたが、まだまだ多くは寄付に頼らざるをえません。さらに、補助犬が社会的に広く受け入れられるためには、何より国民の支持なくしては不可能といえましょう。
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予防法務研究会は神戸に事務所をおいています。平成7年1月の阪神大震災のとき、スイスなどからやって来た災害救助犬が活躍しているニュースを見て、どんなに勇気づけられたことでしょう。あのときの感動と感謝の気持ちを被災地に住む私たちは忘れることができません。犬は人間のもっとも古くからの友達だといいます。まして補助犬は障害者にとって、その自立と社会参加を支える大切なパートナーです。犬嫌いのあなたも、ぜひ理解とご協力をお願いします。


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