地球環境を守れ!!
フロン回収破壊法制定
(平成14年10月1日スタート)
自動車リサイクル法
平成16年度中にスタートします!



 年々、暑さが増しているように感じます。きっとこの夏も、日本中でエアコンが大活躍したことでしょう。
 さて、このエアコン、どのように冷やしているのかご存知でしょうか。エアコンの中にはフロンガスが入っていて、まず、そのフロンガスが冷やされます。フロンガスは凍りにくく、氷よりも冷やすことができるため、強力な冷気を発生させるのです。その冷気を送風して、エアコンから涼しい風が出るというしくみです。
 このように、エアコンや冷蔵庫には、フロンガスが冷媒として使われています。しかし、この便利なフロンガスは、人類の存続にもかかわる深刻な欠点を抱えています。

オゾン層に大きな穴!?    犯人はフロンガス


 1980年代の前半、オゾン層に穴ができているのが南極上空で発見されました。その穴をあけた犯人というのが、フロンガスだったのです。
 オゾン層は、成層圏内に形成されており、宇宙から届く太陽光に含まれる紫外線(UV−B)を防いでくれるという大切な役割を果たしています。もしこのオゾン層がなければ、強烈な紫外線によって、皮膚ガンや白内障の発生が増加するなど、人体・生態系に大きな悪影響を及ぼします。
 フロンガスは、化学的に安定しており、ほとんど無害の物質ですが、成層圏に達すると光分解し、塩素や臭素を放出します。すると、この塩素等がオゾンの酸素と連鎖反応を起こし、オゾンを破壊するのです。
 ウィーン条約(1985年)・モントリオール議定書(1987年)を経て、国際的な規模で、オゾン層破壊物質であるフロンの生産量及び消費の削減が進められました。わが国でも、1988年(昭和63年)5月、特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(オゾン層保護法)」(「そよ風」37号参照)が制定され、オゾン層破壊物質である特定フロン(CFC及びHCFC)は徐々に削減されて、1996年(平成8年)には基本的にその生産が全廃されました。

地球温暖化の犯人!?   これもフロンガス

 ところが、この特定フロンに代わるものとして新たに開発され、大量に生産された代替フロン(HFC)が、今度は、深刻な地球温暖化の原因の一つとして名指しされたのです。
 代替フロンは、成層圏に達しても塩素等を発生せず、オゾン層を破壊することはありません。しかし、太陽からの日射を受けて気温が上昇した地球が発する赤外線を吸収するという性質があり、これによって地球を温室のように暖めること(温室効果)が判明したのです。しかも、他の代表的な温室効果ガスである二酸化炭素の実に100〜1万倍の効果がある物質であることがわかりました。
 気候変動に関する国際連合枠組条約(1992年)が採択され、1997年には京都議定書も採択されて、代替フロンを含む温室効果ガスの国際的な規制・削減への取組は、紆余曲折を経ながらも始まりました。代替フロンは、2020年までにその生産を全廃することがめざされています。
 これを受けてわが国でも、「地球温暖化対策の推進に関する法律」が平成10年10月に制定され、このなかで、温室効果ガスとして、(1)二酸化炭素、(2)メタン、(3)一酸化二窒素、(4)代替フロン(HFC)、(5)パーフルオロカーボン(PFC)、(6)ふっ化硫黄の6種類が指定されて、その削減のための具体的な計画が進められることとなりました。
 最新の科学的知見によると、21世紀中の地球全体の平均気温の上昇は、1.4〜5.8℃と予測されています。このままでは、生態系の崩壊・砂漠化の進行・海水温度の上昇など、人類と地球の存亡にかかわる深刻な事態が心配されます。

フロン類の回収・破壊のために やっと法規制

 このように、日本では、すでに特定フロンの生産は全廃され、代替フロンについてもその生産・消費が規制されるようになっています。
 しかし、こうした規制が始まるまでに生産されたフロン類の回収・破壊については、業界などの自主的な取組みに委ねられていました。せっかくフロン類の生産を全廃・削減しても、確実に回収・破壊することによって大気中への排出を防止しなければ効果は減少してしまいます。
 そこで、このたび、「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保に関する法律(フロン回収破壊法)」が制定されました。
 本法で対象とされるのは、(1)業務用冷凍・空調機器(自動販売機を含む)と、(2)カーエアコンにしぼられ、これら機器が廃棄されるときのフロン類の回収・破壊等が義務づけられています。
 ちなみに、家庭用の冷蔵庫・エアコンについては、すでに「家電リサイクル法」「そよ風」111号参照)によって、平成13年4月よりフロン類の回収が実施されています。

廃車時に「自動車フロン券」を購入

 法の対象となる業務用冷蔵庫や空調機器、カーエアコンを廃棄する際に、何人もフロン類を大気中に放出してはいけないと義務づけられ(65条)、これに違反した場合は1年以上の懲役または50万円以下の罰金に処せられます(82条8号)。また、フロン類の回収・破壊業者は、都道府県への登録制となりました。
 具体的には、カーエアコンについては、当面、自動車を廃棄するときに、自動車リサイクル促進センターが発行する「自動車フロン券」を購入し、自動車に添えて引取業者に引き渡すことになります。「自動車フロン券」は全国の郵便局・コンビニエンスストアで、2002年(平成14年)9月20日から販売しています。料金は、自動車1台につき、1枚=2580円です(小型バスなら2枚、大型バスなら4枚必要)。

平成16年度には自動車リサイクル法施行

 さらに、自動車については、平成14年7月に「使用済自動車の再資源化等に関する法律(自動車リサイクル法)」が成立し、平成16年度中の実施が予定されています。
 現在、年間約500万台の車が廃車されます(うち、200万台は海外中古車市場へ。約13万台が不法投棄車)。廃棄された車1台あたり、重量の80%近くは、すでにリサイクルされています。鉄や銅・アルミなどは素材として(50〜55%)、また部品として再使用されるものもあります(20〜30%)。そして、残り20〜25%が破砕くず(シュレッダーダスト)として埋め立てられています。この破砕くずは年間約80万トンも発生し、処分場がパンクしてしまうのも時間の問題です。
 そこで、容器包装・家電製品・食料品・建築廃材に続いて、自動車のリサイクル法が制定されたものです。

新車購入時にリサイクル料金を徴収

 自動車は、家電製品とちがい、新車を購入する際に、リサイクル料金を徴収することとなりました(73条1項)。もし廃車時にリサイクル料徴収とすれば、現状でも多発している不法投棄が、一層深刻化することが予想されるからです。
 リサイクル料金は、今のところ約2万円になると見込まれています。このなかには、現在の自動車フロン券に相当するお金も含まれることになり、同法の施行とともに、自動車フロン券は廃止されることとなります。
 そして、この法律が施行される時点ですでに購入されている車については、次の車検を受けるまでに(あるいは廃車にするならそのときまでに)このリサイクル料金を支払うことが義務づけられます(73条1項・74条)。
 廃車になると、まず、フロン類が回収され、次に解体業者が再使用できる部品とリサイクルするものに分離し、最後に破砕業者が破砕くずにします。従来は、処理にあたってどこに責任があるのか、また、現在自動車が処理のどの段階にあるのかも管理されず、処理費用を支払いたくない業者が不法投棄をすることもありました。
 そこで、自動車メーカーと輸入業者には、再資源化の実施にあたって、引取・解体等費用の支払い、フロン破壊の義務があると明確にし、処理の過程も情報管理センターが監視するというシステムがつくられます(2章・6章)。
 目標は、2015年にリサイクル率95%(重量比)を達成すること、そのために、再使用・リサイクルしやすい自動車をつくる努力も払われることになります。




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