「財政難でやむを得ません」!?
母子家庭の命綱児童扶養手当の切下げ
児童扶養手当法施行令の改正
平成14年8月1日スタート





 今、離婚などにより母子家庭が急増しています。1998年には、全国の母子世帯数は約95万世帯と、この5年間で20.9%増加しました。母子世帯の平均年収は229万円───一般世帯の658万円を大きく下回っています。このような、収入の少ない母子家庭の自立した生活を支援するための大きな柱が、児童扶養手当制度です。
 しかし、母子家庭の急増にともなってこの支給額も急増したため、近年の財政難の折から、これを減額することとし、「児童扶養手当法施行令」の改正が、平成14年8月1日から実施されました。
 不景気の中、収入の少ない母子家庭にとっては、きびしい改正となっています。

手当額の見直し――所得により細かく減額

 児童扶養手当は、一定の所得額に満たない者に対し、扶養者・子供の数に応じて、支給されます。とくに、母については、その所得に応じて、手当額は2段階(全部支給が月額4万2370円、一部支給が月額2万8350円)に分かれていました。

 今回の改正で、全部支給額は変わりませんが、一部支給の手当額はもっと細かく分けられることになります。所得に応じて月額4万2360円〜1万円までの10円きざみで、段階的に細かく設定されました。具体的には下の計算式により計算されることになります。ちなみに、母と子供一人の世帯の場合に、この式を使って手当額を計算すると表2のとおりになります。
表1 母の所得制限額(平成14年度)
扶養親族
・児童数
全部支給の
所得制限額
一部支給の
所得制限額
0人
1人
2人
3人
4人
5人
19万円
57万円
95万円
133万円
171万円
209万円
192万円
230万円
268万円
306万円
344万円
382万円
表2 母と子1人の世帯の手当額の例
所得額(年額) 手当額(月額)
57万円
100万円
130万円
160万円
190万円
220万円
42,360円
34,320円
28,710円
23,090円
17,480円
11,870円

 この支給額に、第2子について月額5000円、第3子以降については1人につき月額3000円が従来どおり加算されます。また、老人控除対象配偶者、老人扶養親族または特定扶養親族がある場合も従来どおりの金額が加算されます。
 なお、改正された手当額の実際の支払いは、8月〜11月の4ヶ月分をまとめて支払われる平成14年12月からとなります。

「所得」の計算方式もさらにきびしく


 これにより、受給者の年収制限も変わりました。従来は、年収204万8000円未満までの人は全額4万2370円を受給できたのに、これからは、年収130万円未満でないと全部支給の対象とはなりません。一方、一部支給の対象となるのは、従来は年収300万円未満までの人でしたが、これについては、年収365万円未満まで対象を広げました。
 手当額を決めるための計算式に使われる「所得」は、年収から、給与所得控除などの各控除額と社会保険料などの相当額である8万円を引いたものです。今回、さらに、その「所得」を出す方法も、次のように、よりきびしいものになりました。

減額分については、とりあえず5年無利子の貸付

 厚生労働省によると、今回の改正により、現在の支給世帯の46%は減額、51%は変化なし、残り3%は増額と見込んでいます。世帯の重要な収入源が減少することで、生活に困る家庭も多くあるでしょう。
 そこで、手当額が減額した人のみを対象に、平成14年8月からの5年間、減額された額に限り、無利子で貸付を受けることができます(特例児童扶養資金、母子及び寡婦福祉法施行令附則四条)。返済は、貸付期間の満了日または扶養している児童が中学校を卒業する日のいずれか遅いほうの1年後からで、10年以内に返済しなければなりません。
 しかし、一方、従来、児童扶養手当の一部あるいは全額を受給できない母をも対象としていた、「児童扶養資金」の貸付が廃止されました。
*        *       *

 当初出されていた、“児童扶養手当の支給は5年間で打ち切る”との案は見送られましたが、今回の改正は、母子家庭の生活の「安定」と「自立」を促進するために設けられた制度としては、いかにもきびしいものとなりました。
 なお、手当額や貸付金などの具体的な内容については、市・区役所の福祉課窓口や母子相談員にご相談ください。




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