便利な社会に落とし穴
急務! IT社会に対応する法整備
迷惑メールを取り締まれ!
特定電子メールの送信適正化法の制定等


迷惑メールにようやく歯止め


 あなたは迷惑メールを何通くらい受け取っていますか?NTTドコモの調査では、1日に10通以上受け取る人が利用者の15%にものぼるといいます。出会い系サイトだけでも3万サイトもあるといわれ、毎日実に8億通もの宛て先不明メールが発信されています。
 これでは、携帯電話がつながりにくいなど、一般の通信事情に大きな影響を与えるのも当然です。また、迷惑メールのために料金を支払わされる多くの受信者にとっては腹立たしい限りで、やむなくメールアドレスを変更した方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
 そこで、野放し状態の迷惑メールを規制するため、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」が新たに制定され、平成14年7月1日から施行されました。

※ひと目でわかる広告メール※拒否すれば再送禁止

 対象となるのは、広告・宣伝のために個人に送りつけられる電子メールです(法2条2項、ただし、受信者が要請したものや同意したもの、すでに取引関係にあるメールは含まれない)。
 こうした電子メールについては、一目でわかるように、いくつかの表示が義務づけられました(法3条、規則2・3条)。

 そして、受信者から、以後の送信をしないように申し出られたにもかかわらず、再度送信することは禁止されます(法4条)。
 もし、こうした表示の義務や拒否者への送信禁止が守られていないときには、受信者は、総務大臣に対して、適当な措置をとるように申し出ることができ、これに沿って調査と必要な措置がとられます(法7条)。この申出を指導・助言し、調査を行う機関として「財団法人日本データ通信協会」が指定されました(法13条)。

架空アドレスへの大量送信を禁止

 さて、迷惑メールの大半は、当てずっぽうのアドレスに手当たり次第に発送されます。
 そこで、コンピュータを使って、文字・記号・符号などをランダムに並べて架空のメールアドレスをつくって発信することが禁止されました(法5条)。通信事業者に対しても、こうした架空メールアドレスを一時に大量に送信されることで通信に支障が出るおそれがあるときには、送信を拒否することができると明記しました(法10条)。
 これら、法に違反しているため総務大臣が適当な措置をとるよう命じたにもかかわらず、それに従わない場合には、50万円以下の罰金に処せられます(法18条)。

インターネット取引に対応した法整備も進む

 この新法と同時に、「特定商取引に関する法律」(特定商取引法)も改正され、法律で指定された商品・サービスについての広告メールを送信する際にも、同様の表示を義務づけ、また受信拒否をした消費者への再送信を禁止しました(11条2項、12条の2外)。
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 ちなみに、近年、インターネットを利用した商取引が激増しています。2000年にはネット取引は23兆円近くの規模でしたが、2005年には123兆円(事業者同士では商取引全体の17.5%、事業者と消費者との取引では4.1%に相当)にも達すると予測されています。そのため、この新しい取引形態に対応する法制度の整備も進められてきました。
 平成13年4月1日には、「電子署名及び認証業務に関する法律」(電子署名法)が施行され、従来の文書による取引の際に活用されている署名・押印(実印)制度に相当する、電子署名とその認証の制度が定められました。
 インターネットでは、相手の顔が見えないため本人の確認が難しく、また情報の漏洩や情報の改ざんが容易に行われるなど、取引の成立をめぐって大きな不安があります。そこで、(1)作成したのがほんとうに当人に間違いないこと、(2)情報に改ざんがなされていないこと、の2点を証明する機能として電子署名が用いられ、この電子署名がされた情報については、署名・押印のある文書と同様の法的効力を認められます。
 さらに平成13年12月25日には、「電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律」が施行されています。
 これは、民法では、取引の際に表意者に重大な過失があるときは自分から無効は主張できないとの規定を、インターネットによる取引については例外的に緩和したものです。消費者が、インターネットの操作を誤って、申込むつもりはないのに手続きをしてしまったり、10個頼んだつもりが100個と入力していたなどといった内容のミスについても、民法でいう「錯誤」として無効となります。ただし、事業者が申込み内容の確認をとる措置をしている場合は適用されませんのでご注意ください。また、自分からメールなどで文書を書いて注文した場合は該当しませんし、消費者以外の、事業上の契約や法人・団体などがする契約も含まれません。
 さらに、通信手段が限られていた時代を反映して、民法では、遠隔地との取引は通知を発したときに効力を発するとしています(526条。それ以外は通知が到達したときに効力が発する)。これについても、インターネット・ファクシミリ・テレックス・留守番電話など、電子機器で即座に情報が到達するものについては、たとえ遠隔地であっても、その通知が相手方に到達したときから効力が生ずることに改めました。    




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